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「黄金」の2年3カ月【フィスコ・コラム】

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9月に発足したばかりの英トラス政権は発足当初から支持率が低迷し、最大野党の労働党に大きなリードを許しています。光熱費高騰の抑制に向けた減税案を受け、ポンドは歴史的安値圏に急落。次期総選挙は2024年ですが、それまで政権を維持できるでしょうか。


直近の世論調査によると、保守党の支持率は22%と、37%の労働党に大きく水を空けられています。背景にあるのは5年間で450億ポンド(約7兆円)の減税を柱とした「成長プラン」。過去半世紀では最大規模といいます。トラス氏は外相時代から減税による成長を主張し、保守党党首選では「コロナ禍の打撃を受けた国の財政を立て直すのは増税」としたスナク前財務相を制し首相に就任しました。


クワーテリング財務相は成長率を1%ずつ引き上げられれば、減税分の回収は可能とみています。また、エネルギー価格の支援措置に関しては向こう半年間で約600億ポンド(9兆円)規模の見通し。国債発行を4割も増額する計画を受け、短期債が大きく売られる事態となりました。5年債利回りが急伸(価格は急落)し、株価も下落。ポンドは9月26日の取引で1.03ドル台と歴史的な安値圏に下げました。


世論調査では、回答者の8割がポンド安を問題視しています。サマーズ元米財務長官は英長期金利の上昇は信認を失ったことを反映していると指摘。そのうえで、ドルとユーロに対し等価(パリティ)を割り込むとの見方を示しています。他の市場関係者はこうした経済政策を撤回しないと経済の大幅な悪化を招くとの見立てです。その後ポンド売りは一服したものの、なお下押し圧力が続いています。


そうした状況下で、労働党に追い風が吹き始めました。同党は2010年の総選挙で下野した後、支持基盤を弱めています。2017年の総選挙では左派的な政策は時代錯誤とみられながらも、総選挙では保守党を単独過半数割れに追い込むなど善戦。ただ、ブレグジットへのスタンスが曖昧だったことが嫌気されたのか、2019年は記録的な大敗を喫し、翌2020年に党首が元検察官のクレマー氏が党首に就任しました。


皮肉なことに、保守党はインフレや景気減速を回避したいトラス氏の左派的な政策が支持を失う要因となっているもようです。エリザベス女王の治世下ではサッチャーやブレアなど長期政権が目立ちますが、ブレグジット以降は3年ごとに首相が交代しています。トラス氏が2024年12月までに行われる総選挙に向け政権を維持できるかといった政治リスクも、今後はポンドの下押し要因になりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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