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サイバネット Research Memo(6):2022年12月期業績は減収減益となるも4Qは増収増益に転じる(1)

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■業績動向

1. 2022年12月期の業績概要
サイバネットシステム<4312>の2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比12.2%減の19,936百万円、営業利益で同37.9%減の1,757百万円、経常利益で同40.0%減の1,693百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同44.0%減の999百万円と減収減益となった。ただ、Synopsysとの販売代理店契約解消の影響が一巡した第4四半期だけで見ると、売上高は前年同期比7.4%増の5,530百万円、営業利益は同342.1%増の562百万円と増収増益に転じている。なお、2022年12月期より収益認識会計基準等を適用しており、従来の会計基準と比較した場合、売上高で198百万円、売上原価で109百万円減少し、営業利益と経常利益はそれぞれ89百万円減少している※。

※代理店事業のソフトウェアのメンテナンスサービス(新規契約のうちの一部、及び更新契約の金額)について、従来会計基準では、主として契約開始時点で売上高及び売上原価を一括計上していたが、収益認識会計基準等の適用により、契約期間内で按分計上する方法に変更した。従来会計基準ベースで計算すると、売上高は前期比11.3%減、営業利益は同34.7%減、経常利益は同36.8%減であった。

売上高の減収は、2021年10月に主要取引先の1社であったSynopsysと販売代理店契約を解消したことによるもので、同要因を除けば増収であった。主力製品であるマルチフィジックス解析ツールが堅調に推移したほか、エンジニアリングサービスやセキュリティ製品の販売が好調に推移し、会社計画に対してもおおむね計画どおりの着地となった。地域別売上高で見ると、日本が前期比12.4%減の15,242百万円、アジアが同30.8%減の2,153百万円、北米が同22.5%増の1,691百万円、欧州が同7.6%増の798百万円となった。

国内及びアジアはSynopsys製品の売上が無くなったことが減収要因となったが、アジアについては中国で新型コロナウイルス感染症拡大によるロックダウンが実施され、営業活動が制限を受けたことも減収要因となった。ただ、Ansys製品については新たに加わった光学系ソリューションも含めて増収となった。また、台湾についても自動車関連や通信(5G)向けソリューションが好調に推移した。

北米についてはSigmetrixが3次元公差解析ツール「CETOL 6σ」の機能を強化した最新バージョンをリリースしたことで、OEM先を含めて販売が好調に推移した。米国では医療機器などの販売承認を取得するための審査基準として、公差解析による妥当な検証結果が必要とされており、承認申請を行う顧客先を中心に需要が伸びている。一方、Maplesoftについては主要顧客となる教育機関の投資マインド低迷が続いたほか、エンタープライズ向けの販売が伸び悩み苦戦を強いられた。ただし、期中平均為替レートがドルに対して20%程度円安となっており、日本円ベースでみれば増収だったと見られる。欧州のNoesisについてもアジア向けが伸びたものの、欧州向けに関しては主要顧客先である自動車メーカーからの受注が低迷し、現地通貨ベースで見れば厳しかったようだ。

売上原価率は前期比1.3ポイント上昇の59.3%となった。Synopsys製品の売上が無くなったことに加えて、為替の円安進行でITソリューション事業における海外製品の仕入コストが上昇したのが影響した。同社でもコスト上昇分については価格改定を進めているものの、急激に為替が変動したため追い付かなかったようだ。販管費率は減収の影響により同2.4ポイント上昇の31.9%となったが、金額ベースでは同5.0%減となった。前期の第4四半期に計上したシステム投資費用や特別賞与の支給が無かったことによる。営業外収支が前期比で56百万円悪化したが、主に為替差損の増加21百万円、過年度売上税等の計上23百万円※による。

※米国では州ごとにソフトウェアの提供形態によって売上税が異なり、精査したところ過年度分の売上税に不足分があったため今回計上した。

(1) セグメント別業績
a) シミュレーションソリューションサービス事業
シミュレーションソリューションサービス事業の売上高は前期比15.5%減の15,784百万円、セグメント利益は同35.6%減の2,628百万円となった。売上高の内訳を見ると、代理店売上が同24.4%減の10,380百万円と大きく落ち込んだ一方で、自社開発製品売上は同8.1%増の3,512百万円、サービス売上は同11.1%増の1,891百万円と順調に増加した。

代理店売上はSynopsys関連製品が無くなったことで減収となったが、主力のマルチフィジックス解析ツールを中心に、既存製品は保守契約の更新を中心に増収となった。また、自社開発製品については海外子会社製品が円安効果もあって増収に寄与した。なお同社の開発製品である大腸内視鏡検査向けAI搭載画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN(R)-EYE」※1は、2021年12月期に多く出荷した反動で減収となった。ただ、韓国で新たに薬事承認を取得したほか、国内でも2022年5月に改正薬機法の新制度「医療機器の特性に応じた変更計画の事前確認制度(IDATEN制度)」※2の承認を取得し、今後の製品販売展開がスムーズ進むようになった。ただ、本格的に売上を拡大するには国内外で保険適用を受けることが重要になると同社では見ている。サービス収入については、設計業務の解析支援に関するエンジニアリングサービスやDX促進に関するコンサルティングサービスが好調に推移し、2ケタ増収となった。特に、AR/VRソリューションやAIシステム構築サービスなどDX事業が大きく伸長した。

※1 大腸内視鏡で撮影された画像をAIが解析し、ポリープなどを検出すると警告を発し、医師による病変の発見を補助するソフトウェア。2020年に管理医療機器(クラスII)として国内で薬事承認され、オリンパスが大腸内視鏡とセットにして同ソフトウェアを医療機関に販売している。
※2 IDATEN制度(Improvement Design within Approval for Timely Evaluation and Notice)とは、医療機器の特性に応じ将来改良(バージョンアップ)が見込まれている医療機器について、その改良計画自体を承認する制度として2020年に新設された。IDATENの承認を取得することで、従来は医療機器の改良時に都度必要であった「一部変更承認申請」が不要となり、変更届を提出するだけで改良後の製品販売が可能となった。

なお、収益認識会計基準等の適用により従来会計基準と比べて売上高で170百万円、セグメント利益で93百万円の減少となっている。従来会計基準で計算した場合、売上高は前期比14.6%減の15,955百万円、セグメント利益は同33.3%減の2,722百万円となる。

b) ITソリューションサービス事業
ITソリューションサービス事業の売上高は前期比3.5%増の4,152百万円、セグメント利益は同8.3%減の525百万円と増収減益となった。収益認識会計基準等の適用による影響は、売上高で27百万円の減少、セグメント利益で4百万円の増加となっている。従来会計基準で計算した場合、売上高で同4.2%増の4,179百万円、セグメント利益で同9.2%減の520百万円となる。

売上高の内訳を見ると、代理店売上が同2.0%増の3,548百万円、自社開発製品売上が同4.3%増の343百万円、サービス売上が同26.8%増の259百万円とそれぞれ増収となった。テレワーク等の新しい働き方の定着・浸透に伴い、ディープラーニングを用いた次世代エンドポイントセキュリティ製品「Deep Instinct」(クラウドサービスで提供)の販売及び導入支援サービスが好調に推移したほか、クラウド環境向けセキュリティソリューションも伸び率こそ鈍化したものの堅調に推移した。利益面では、急激な円安進行による仕入コスト増に価格転嫁が追い付かなかったことが減益要因となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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