fbpx

サイバネット Research Memo(10):2026年12月期に売上高300億円、EBITDA38億円目指す(2)

マネーボイス 必読の記事



■サイバネットシステム<4312>の中期経営計画

2. 成長戦略
長期の企業価値向上に向けて、「トップラインの成長」「高水準の利益率」「積極的な株主還元」の3点に取り組んでいく。「トップラインの成長」は人材投資やM&Aなどを活用しながら自社開発製品の強化、アジア事業の拡大、モノづくりのDX促進、SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用を進め、5年間で売上高30%成長を目指す。また、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら、EBITDAマージンを2022年12月期の10.1%から12.7%に引き上げていく。株主還元策については、DOEで6.0%を目安とする安定配当を重視し、株価水準によっては自己株式の取得等も積極的に検討する方針である。なお、「トップラインの成長」については以下の4点を重点戦略として掲げている。

(1) 自社開発製品の強化
同社は販売代理店ビジネスのリスクが顕在化したこともあり、自社開発製品・サービスの売上構成比を高めることで、販売代理店ビジネスの喪失リスクへの対応と収益性向上を目指す。2022年12月期売上高は計画の35億円に対して38億円となったが、為替の円安分を考慮すればおおむね計画通りの進捗だった。2023年12月期以降は、海外のソフトウェア製品開発子会社並びに国内での開発体制を強化して、製品のラインアップ拡充と機能強化による差別化を推進し、2026年12月期売上高で60億円を目指す。

海外子会社のうち、Maplesoftは教育市場向け教育支援ソフトウェアの機能拡充を進めていくほか、企業向けの需要を開拓すべくエンジニアリング向け設計計算ツール「Maple Flow」の営業活動を国内外で強化する。また、Sigmetrixは3次元公差解析ツールの機能強化、Noesisについては欧州、中国の顧客企業に対して汎用型最適設計支援ツール「Optimus」やエンジニアリングサービスを提供していくほか、新製品を開発することで売上成長を目指す。同社の自社開発製品ではIoTソリューションとなるビッグデータ可視化ツールの拡販を進めていくほか、大腸内視鏡検査向けAI搭載画像診断支援ソフトウェアの成長が期待される。同ソフトウェアについてはオリンパスの営業活動に依存する格好ではあるが、日本のほか香港、インド、タイ、ベトナム、韓国で販売可能となっており、保険適用されれば需要が一気に拡大する可能性がある。

(2) アジア事業の拡大
日本の大手製造業向けにシミュレーション技術を提供してきた経験を生かして、アジア事業の拡大を進める。アジア向け売上高はSynopsys製品の売上がなくなったため2022年12月期に21億円と前期比で30.8%減となったが、期初計画は達成した。2023年12月期以降は中国向けを中心にAnsys製品の拡大が見込まれるほか、IoTソリューションを中心としたDX事業やITソリューションサービス事業を展開することで売上拡大を図り、2026年12月期に40億円を目指す。

アジア圏では今後も製造業の発展とともに、製品の設計・開発に関わるシミュレーションツールやエンジニアリングサービスの需要も拡大することが見込まれる。同社は中国、台湾、マレーシアの販売拠点を中心にして、高度なソリューションサービスを強みにローカル企業の顧客開拓を推進する方針だ。

(3) モノづくりのDX推進など
同社のコア技術であるシミュレーションと最新の開発手法であるMBSEや、IoT、AI、AR/VRなどの先進技術を用いてモノづくりのDX促進を支援していく。同社はシミュレーションと親和性の高いAIやデジタルツイン、ビッグデータ分析等の技術を有し、これらを組み合わせた付加価値の高いソリューションを提供できることが強みとなっており、今後も関連売上高の高成長が見込まれる。

また、ITソリューションサービス事業では、サイバー攻撃の脅威に対抗する新規製品・ソリューションを拡充しながら成長を目指す。直近では、クラウド型ID管理・統合認証サービス「Okta Workforce Identity Cloud」(開発元:Okta)の販売及び技術サポートを2023年1月より開始している。同サービスは、ここ数年高成長を続け、グローバル企業を中心に世界で1.7万社の企業が利用し、ユーザーから高い評価を獲得※している。日本でも大企業で導入が進んでおり、今後の売上貢献が期待される。

※IT調査会社のGartnerによる「Voice of the Customer」レポート(2022年5月発表)でレビュアーの92%が同製品を「推薦する」と評価し、60%が最高評価の5つ星を付与した(レビュアーの30%は売上高10~100億ドルの企業に所属)。

(4) SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用
同社は脱炭素社会の実現や環境問題の解決、健康の維持などSDGsをテーマとした分野についても、同社が蓄積してきたシミュレーション技術やノウハウを活用し、事業活動を通じて貢献していく考えだ。

具体的な導入事例としては、発電所などで電力発電を行うタービンを熱流体ソリューションを使って設計することで、熱利用効率の向上を図り、CO2排出量削減に貢献している。また、電気自動車の低コスト化を実現するためにインバータやモーターの小型化・高性能化に向けた開発が進められているが、これらの開発効率を高めるため複数のパラメータを組み合わせてシミュレーションできるマルチフィジックス解析ツールが活用されている。

モノづくり以外の分野でも、ビッグデータ分析とシミュレーション技術を用いて、都市インフラの効率運営支援や金融のコンプライアンス支援などでの需要が見込まれるなど、シミュレーション技術を生かせる領域は膨大にあると考えられ、こうした需要を今後積極的に掘り起こすことで長期的な成長を実現する戦略だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
いま読まれてます

記事提供:
元記事を読む

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー