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兵機海運 Research Memo(5):2023年3月期も増収増益を達成 全事業が前期比で増収

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■業績動向

1. 2023年3月期の業績概要
兵機海運<9362>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比14.3%増の18,387百万円、営業利益で同12.3%増の548百万円、経常利益で同16.5%増の609百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同23.2%増の442百万円となり、大幅な増収増益を達成した。内航事業の売上高は下半期の荒天による停船やメーカーの出荷調整などで航海数及び取扱輸送量が伸び悩んだことを受け、同1.5%増と微増にとどまったものの、その他の外航事業、港運事業、倉庫事業の売上高はそろって2桁伸長と好調だった。特に、外航事業の売上高はスポット案件や建機類の輸送が好調だったことを受けて同59.1%増と急伸した。利益面に関しては、外航事業において在来船の運賃相場が高水準で推移したこと、円安によってドル建て海上運賃が大幅に増加したことなどが全体の利益を押し上げた。加えて、倉庫事業では、3棟目の危険品倉庫を増設した兵庫埠頭物流センターにおいて単価の高い危険品貨物の取り扱いが好調だったことも利益の伸長に寄与した。これらを受け、期初の計画に対して売上高は22.6%増、営業利益は9.6%増、経常利益は21.8%増、親会社株主に帰属する当期純利益は26.3%増となり、売上、各利益ともに期初の計画を上回って着地した。一方で、2022年11月に発表した修正計画と比較すると、売上高が5.1%増、営業利益が8.7%減、経常利益が6.3%減、親会社株主に帰属する当期純利益が1.8%減となった。売上高に関しては、外航事業においてスポット案件が好調だったこと、港運・倉庫事業が堅調に推移したことなどを受けて計画を上回った。利益面に関しては第4四半期において、老朽化した倉庫の修繕を実施したこと、人的資本投資の一貫として従業員へインフレ特別一時金を支給したこと、社内規定の改定により賞与引当金を積み増したことなどが影響した。ただ、倉庫の修繕や従業員への還元は将来への前向きな投資と言える。加えて、2023年3月期特有の一時的要因であることから、2024年3月期の利益には影響しない見込みである。

なお、2023年3月期の取扱輸送量は前期比1.1%減の3,941千トンであり、輸送品目別数量では主力の鉄鋼が同4.5%減の2,011千トンだった(構成比51.0%)。2023年3月期の連結売上高で同14.3%増の18,387百万円であり、輸送品目別売上高は主力の鉄鋼で同6.6%増の7,746百万円だった(構成比42.0%)。

倉庫事業で危険品貨物の取り扱いが好調に推移し、収益性が向上
2. セグメント別の業績概要
(1) 海運事業
2023年3月期の海運事業は、売上高で前期比14.7%増の9,859百万円、営業利益で同7.9%増の411百万円だった。

内航事業は、売上高で前期比1.5%増の6,729百万円、営業利益で同39.9%減の164百万円となった。上半期の鋼材及び原材料スクラップの鉄鋼輸送が前年同期比で28%増と好調に推移したものの、下半期は荒天による停船やメーカーの出荷調整などがあり、業績に影響した。そうした事業環境のなか、所属船団の維持と効率配船に注力したものの、航海数及び取扱輸送量が伸び悩み(前期比6.1%減の1,739千トン)、売上高は微増にとどまった。利益面に関しては、燃料油価格の高止まり、船舶維持管理コストの増加、所属船の傭船料の改定などにより減益となった。燃料油価格に関しては、2024年3月期に関してもリスク要因となるものの、適正運賃への値上げ交渉をしっかりと行い、適正な利潤の確保に注力する方針である。

外航事業は、売上高で前期比59.1%増の3,129百万円、営業利益で同127.1%増の247百万円と大幅な増収増益を達成した。2022年3月期第4四半期半ばにロシアがウクライナへ侵攻した影響により、同社の主力航路である極東ロシア向けの輸出が停止となったものの、新たに受注した建機類の輸送が好調に推移した。加えて、スポット貨物の新規受注が好調だったこと、円安によってドル建て海上運賃の収益が改善したこと、なども大幅な増収・増益に寄与した。また、台湾、韓国、中国など近海航路が堅調に推移したことも業績を押し上げた。

(2) 港運・倉庫事業
2023年3月期の港運・倉庫事業は、売上高で前期比13.9%増の8,528百万円、営業利益で同28.3%増の136百万円だった。

港運事業は、売上高で同14.8%増の6,867百万円、営業利益は同20.9%減の66百万円となった。原材料供給不足による輸出入スケジュールの遅延や2022年12月以降の中国ゼロコロナ政策見直し後の感染再拡大による中国発着貨物の取扱量減少など、不安定な事業環境だった。そうした中にあっても、コロナによる巣ごもり需要を受けて前期より好調な小売用食品輸入の取り扱いを堅持した。加えて、倉庫事業など他のセグメントと連携した営業活動を展開することによって、新規貨物の獲得に注力した。これらにより、不安定な事業環境にあっても大幅増収を達成した。

倉庫事業は、売上高で前期比10.4%増の1,660百万円、営業利益で同211.3%増の70百万円となった。危険品貨物の取り扱いが好調であり、売上の拡大に寄与した。兵庫埠頭物流センターにおいては、危険品倉庫3棟目を増設したことなどを受け、前期に続いて危険品貨物の取り扱いが順調に推移した。また、大阪物流センターでは、小規模ながら高単価の毒劇物の取り扱いが軌道に乗り始めた。利益面に関しては、前期末に倉庫用地の一部を取得したことによる原価圧縮効果があったほか、危険品貨物が好調だったことが寄与した。危険品貨物は相対的に単価が高く、収益性が良いことが理由だ。加えて、姫路地区倉庫において輸出鋼材貨物の取り扱いが堅調に推移したことも収益を底上げした。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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