先月のフランス議会選でマクロン大統領は「極右」の躍進を阻止したものの、左派勢力との連携により政治情勢の不透明感は払拭できません。一方、来年の連邦議会選を控えたドイツの州議会選が注目され、右傾化への警戒感からユーロの戻りはすでに一服しています。
6月はじめの欧州議会選で右派勢力が台頭したことを受け、マクロン氏は自国議会を突如解散し、議会選に臨みました。7月7日の決戦投票で極右と位置付けられる国民連合(RN)の躍進を左派連合と封じ込めたものの、自身が率いる中道連合は大惨敗を喫し、どの政党も過半数を下回ったため、議会は空転。内閣総辞職後の新首相の選出にはメドが立たず、パリ五輪開催中は暫定政権で乗り切る方針です。
金融市場は当初、「極右」の単独過半数を警戒し、フランス国債の売りが強まりました。10年物国債利回りはドイツとフランスで格差が2017年以来の幅まで拡大し、ユーロ・ドルは1.0910ドル台から一時1.0660ドル台まで売り込まれました。第1回投票でRNの得票が伸び悩むとユーロの買戻しが増え、決戦投票を経て7月半ばには1.0940ドル台と、議会解散前の水準を上抜けました。
ほぼ同じタイミングで欧州中銀(ECB)理事会での追加利下げ観測が後退していたことも、ユーロを押し上げたとみられます。ラガルドECB総裁は7月18日の理事会後の記者会見で次回9月の理事会での政策はまだ決まっていないと述べていますが、景気下振れリスクから追加利下げが予想されます。ユーロは再び買いづらい地合いとなり、ユーロ・ドルは1.09ドルを再び割り込みました。
フランス議会選で「極右」の勢力拡大は想定内にとどまったとはいえ、秋口からオーストリアやベルギー、チェコなど欧州連合(EU)加盟国の主に地方議会で選挙が予定され、右派勢力の動向から目が離せません。特にドイツは来年の連邦議会選に向け、2021年12月に就任したショルツ首相の支持率が30%を割り込み、不支持率は70%近くに。国内経済の低迷が不人気の要因になっています。
中道左派のドイツ社会民主党(SPD)、中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、中道左派の同盟90・緑の党(B90/Gr)で形成されるショルツ政権に対し、ポピュリスト政党の「ドイツのための選択」(AfD)が支持を広げています。同党は9月に行われるザクセン、チューリンゲン、ブランデンブルクの3州の議会選を前に勢いを増しており、フランスの二の舞が予想されるならユーロはさらに失速の見通しです。
(吉池 威)
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