■成長戦略
1. 成長戦略
日本創発グループ<7814>は中期経営計画を公表していないが、成長に向けた基本戦略として、高付加価値製品・サービスの拡充によって印刷分野の売上を維持しながら、ITメディア セールスプロモーション分野及びプロダクツ分野の製品・サービスを拡大するとともに、グループ各社の専門性を生かしたグループシナジーとワンストップサービスによって一段の収益力向上を目指している。
グループシナジーとワンストップサービスの一例として、子会社の(株)アエックスに新設されたXR制作空間「SHIBA studio」は、プロフェッショナルアーティストのプロモーションビデオ撮影や動画配信など幅広い用途で活用されている。今後もデジタル配信に関わるITメディア分野は成長が続くと見込まれており、さらなる活用が期待できる。ブランディングコンテンツ制作だけでなく、グループ全体のソリューションを活用し、リアルとデジタルを融合したサービスを提供することで、専門各社へ個別に依頼していたイベント運営、マーケティング、広告、ブランディング、プロダクツ制作をワンストップで提供することが可能となる。
重点戦略としては、製造拠点集約化による設備稼働率向上や製造効率向上、グループ経営資源を活用した内製化率向上による原価低減、営業拠点変更・集結による間接コスト低減、グループ企業が持つ専門性の高いソリューションを組み合わせることによる付加価値の向上、さらに人的資本の活性化、基幹システム刷新を含むDX投資を推進する方針だ。人的資本の活性化では、創発エンゲージメントである「ソ(育てる)」「ウ(移す)」「ハ(派遣・研修)」「ツ(つながる)」の実現に向けて、グループ企業間を含めた人事交流のほか、人的資本の可視化と活性化を目的にDX投資を強化する。なお新基幹システムについては2026年後半~2027年前半の稼働を目指している。
2024年12月期は6期連続増配予想
2. 株主還元策
株主還元については、利益配分を年4回(四半期配当)とすることを基本として、取締役会が都度決定することにしている。また、配当金は安定配当の継続を基本としつつ、業績及び財務状況、配当性向、内部留保などを総合的に勘案して決定する。この基本方針に基づき、2024年12月期の配当予想は前期比1.00円増配の年間13.00円(各四半期末3.25円)である。6期連続増配で、予想配当性向は25.1%となる。弊社では、中長期的な利益成長に伴い、さらなる株主還元の充実も期待できると見ている。
SDGsへの取り組みを強化
3. サステナビリティ経営
同社は地球規模でのカーボンニュートラルの実現に向けて、SDGsへの取り組みを強化している。「多様性の価値を創造する」「想いを込め、つくる責任を果たす」「公平で平等なダイバーシティの中で新しい価値を生む」をSDGsポリシーに掲げ、グループ全体で毎年のCO2排出量の定期計測と共有、環境負荷軽減に貢献できる商材の開発・販売などを推進している。
環境負荷軽減に向けた取り組みの一例として、事業会社である東京リスマチックでは、非塩ビ・省プラ・エコインクの環境配慮型ディスプレイ「ecopa(エコパ)」を2021年から販売している。リングストンでは、環境対策素材「ECOポリング」を開発し、廃棄されるお茶殻や卵殻を活用した製品を提供している。このほかにも、(株)プレシーズでは企業向けSDGs浸透支援ツール「SDGsゲーム」「SDGs本」を販売するなど、グループ各社が持続可能な社会の実現に向けて課題解決に取り組んでいる。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営について一例を挙げると、コーポレート・ガバナンスにおいて、取締役会を構成する12名(うち監査等委員である社外取締役8名)のうち、女性が6名を占め、女性取締役比率が高い。今後もコーポレート・ガバナンスの充実など、ESG経営を強化する方針である。
中長期的な成長ポテンシャルに注目
4. 弊社の視点
同社を取り巻く事業環境として、印刷関連市場はデジタルシフトによって新聞・雑誌・チラシなど紙の印刷が減少して厳しい事業環境という印象が強いものの、一方では広告市場においてSNS・動画配信やプロモーションメディア(屋外・交通広告、DMなど)が拡大していることに加え、顧客ニーズの多様化も進展している。このような事業環境に対して同社は、多様なソリューションを提供する「顧客のクリエイティブをサポートする企業集団」としての競合優位性を生かし、グループシナジーとワンストップサービスによって一段の収益力向上を目指す方針である。当面はM&Aや償却などの関連費用が発生するが、既存事業会社の着実な成長、M&Aによる新規連結会社の業績寄与だけでなく、グループ経営資源活用による売上総利益率上昇、グループ企業が持つ専門性の高いソリューションの組み合わせによる付加価値向上など、グループシナジーによって今後の利益成長が加速する可能性があるため、同社の中長期的な成長ポテンシャルに注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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