日本の総選挙を終え、今年最大の注目材料である米大統領選が次の焦点に。共和党候補のトランプ前大統領が激戦州で民主党のハリス副大統領をリードし、再登板の可能性が高まっています。このまま逃げ切れば、ドル・円相場は上昇、下落のどちらに振れるでしょうか。
ドル・円は緩やかな上昇基調に振れ、足元で7月以来の153円付近に一時浮上しました。先月27日の総選挙で自民・公明が勝敗ラインの過半数を割り込んだほか、日銀は早期利上げに前向きで、円買いによる下押し圧力は継続。しかし、足元の米経済指標は強さが目立ち、軟着陸期待のドル買いに振れやすい地合いです。11月5日投開票の米大統領選の結果、ドル買い基調が続くか注目されます。
直近の情勢調査によると、ミシガンなど激戦7州はトランプ氏がハリス氏を僅差ながら上回り、トランプ氏の再登板に現実味が増しています。議会選も上下両院で共和党が多数派となる場合、関税の引き上げと国内の減税により米国経済の成長が加速するとの見方が浮上。その場合には連邦準備制度理事会(FRB)の再利上げが想定されるため、ドル買い地合いが強まるでしょう。
ゴールドマン・サックス証券のアナリストによると、「トランプ政権」は輸入品に10-20%の関税を課す措置に踏み切る公算。加えて国内の減税を実施すれば、ドルが急騰する可能性を指摘しています。実際、そうした思惑から10月下旬の取引では金利高・ドル高・株安に振れる場面がありました。上院選でねじれが生じ民主党が過半数を上回るケースでも、緩やかな金利高・ドル高・株安が想定されます。
一方、民主党が大統領選と議会選で勝利した場合、インフレ抑止を継続。また、減税や関税強化は想定内とみられるため、金利安・ドル安・株高が見込まれます。ただ、ハリス氏は討論会などで格差の是正とインフラ投資を推進するほか、社会福祉の拡充も主張してきました。財政赤字が拡大すればインフレを招くため、やはり金利高・ドル高・株安との見方もあるようです。
読み切れないのは外交・防衛に関する市場の受け止めです。ハリス氏が当選すれば対中関係、ウクライナ戦争、中東情勢はいずれも膠着状態が予想されます。それに対し、トランプ氏が返り咲いた場合、対中関係は膠着ながら、ウクライナ戦争は収束、逆に中東情勢は泥沼化でしょう。中東に着目したリスク回避の円買いが強まると同時に、ドルに有事の買いが入ればドル・円は下げ渋ると予想します。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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