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世界が認める景気鈍化を、なぜ日本政府だけは認めない?海外投資家は日本株を投げ売りへ=近藤駿介

政治イベントが目白押しだが、真に注目すべきは各国が景気見通しを下方修正していることだ。世界が政策の変更を検討・実施するなか、日本だけはわが道を進んでいる。(『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』近藤駿介)

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プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。著書に、平成バブル崩壊のメカニズムを分析した『1989年12月29日、日経平均3万8915円』(河出書房新社)など。

各国が政策見直しを進めるなか、日本は変わらなくて大丈夫か?

各国が「世界経済の鈍化」を認める

英国議会でのEU離脱案の採決、最終盤を迎えた米中通商交渉。今週もその行方が注目される政治イベントが目白押しである。表の主役はこうした政治的重要イベントとなりそうだが、裏の主役を世界景気が張る可能性があることは、認識しておいた方がよさそうだ。

ここに来て、世界経済の先行きが大きな関心事となってきた。世界経済の先行きに関しては、MFやOECDなどが既に世界経済の鈍化を公表して来ており、周知の事実とはなっている。問題はそれを各国の政策当局が認め、実際に政策を見直し始めて来ていることだ。

中国は5日に開幕した全人代で2019年の経済成長見通しを、28年ぶりの低成長となった2018年の6.6%を下回る「6.0〜6.5%」へ引き下げた。中国の経済統計は日本の統計以上に信じられないものであるため、「6.0〜6.5%」という目標数字の水準自体には意味はない。2018年の経済成長率は28年ぶりの低水準となったが、目標であった「6.5%前後」に対してはニアピン賞といえるものだった。したがって、重要なことは成長率の水準ではなく、中国が公式に経済成長の鈍化を認めたことだ。

欧州でも7日のECB理事会で、「少なくとも2019年夏まで」維持するとしてきた現在0%の主要政策金利などの水準を、「少なくとも年末まで」維持する方針を明確にした。それと同時に9月に新たな資金供給制度(TLTRO 3)を開始することを表明し、昨年12月で終了した量的緩和政策を復活させることを発表した。TLTRO3に関しては技術的な要因も多分にあるが、表面的には昨年末で終了させたはずの量的緩和政策をわずか9か月で撤回し、再度量的緩和政策を復活するというのは苦渋の判断だったといえる。

ECBが「少なくとも2019年夏まで」という表現で2019年秋以降の利上げを示唆してきたのは、任期が今年の10月までのドラギ総裁が任期中に利上げの道筋をつけて後任にバトンタッチするFRBスタイルを描いていたからである。

金融政策の正常化の手本としてきたFRBスタイルを踏襲することをECBが断念せざるを得なくなったのは、経済の鈍化とそれに伴う物価の下落圧力がECBの想定を上回るものだったからに他ならない。実際にECBは2019年の域内経済成長率の見通しをこれまでの1.6%から1.1%へと大幅に下方修正している。

経済減退を見越した政策が実行され始めた

米朝首脳会談や米中通商交渉、ブレグジットといった派手な政治的イベントの陰に隠れた格好になっているが、IMFやOECDといった公的な機関ではなく、政策当局が経済見通しを下方修正して実際の政策に反映し始めたという変化を見落とさないようにしなければならない。

具体的に自国の経済見通しを引き下げたわけではないが、金融政策の見直しに動いたという点においてはFRBも同じである。昨年9月のFOMCで「金融は緩和的」という表現を削除したばかりのFRBからも、最近ではFOMCが示してきた「年内2回」という利上げ見通しや、ドットチャート公表見直しを求める発言が出て来るなど、再び「金融は緩和的」に戻ろうとする力が働き始めている。

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