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日本水産、営業益は前期比6.7%減 南米鮭鱒養殖事業の稚魚へい死などが影響

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2019年5月20日に行われた、日本水産株式会社2019年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

2019年3月期 サマリー

的埜明世氏:2019年3月期の決算概要ですが、計画をほぼ達成したと考えています。前期比では、売上高は348億円の増収となりましたが、2018年の南米の鮭鱒養殖事業における稚魚斃死の影響が大きく、営業利益では15億円の減益となりました。

当期純利益は、前期に投資有価証券の売却益43億円が含まれていたことから、18億円の減益となりました。売上高・経常利益は、過去最高を更新することができました。なお、期末配当については期初の計画どおり1株あたり4円としています。

2019年3月期 セグメント別概況

売上高合計では7,121億円で、前期比で348億円の増収となりました。事業別で見ると、水産事業・食品事業ともに日欧を中心に伸長し、水産事業は2,899億円で、前期比で61億円の増収となりました。食品事業は3,423億円で、前期比で170億円の増収となりました。

また、「その他」事業でも、エンジニアリング部門において、物流関連の受注が増加したことで366億円となり、前期比で106億円の増収となりました。

営業利益については、次のスライドでご説明いたします。

主な営業利益増減要因

日本水産、営業益は前期比6.7%減 南米鮭鱒養殖事業の稚魚へい死などが影響

営業利益の前期比の主な増減です。北米・欧州の水産事業は順調に推移しました。南米の鮭鱒養殖事業において、2018年の稚魚斃死の影響による販売数量の大幅な減少に加え、販売価格も下落したことから、前期比で26億円の大幅減益となりました。

国内は、水産・食品事業ともに苦戦しました。しかし、在庫に含まれる未実現利益の調整等がプラスに働き、全体としては約15億円の減益となりました。

連結貸借対照表(前期末比)

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連結の貸借対照表になります。総資産は、前期末比でマイナス43億円の4,779億円となりました。売上を伸ばしているなか、総資産については圧縮することができました。この結果、自己資本比率は30パーセントを超えています。

連結キャッシュ・フロー(前期比)

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連結キャッシュ・フローになります。営業キャッシュ・フローは、運転資本の増加等により多少減少しましたが、設備投資の減少もあり、おおむね前期並みのフリーキャッシュ・フローを確保できました。

連結借入金の推移

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連結借入金の推移になります。当期の借入金は1,910億円となり、前期末比で128億円減少し、順調に削減が進んでいます。

水産事業

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ここからは、各事業についてご説明します。水産事業では、売上高は前期比で61億円の増収でしたが、営業利益は7億円の減益となりました。この第2四半期の営業利益が非常に悪い数字で、かなり危機感があったのですが、第3四半期でなんとか取り戻してきました。しかし、営業利益自体は前期比で少し悪い数字になってしまいました。詳細は以降でご説明します。

水産事業 売上高・営業利益(前期比)

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水産事業の中身です。漁業では、日本でかつおやさば等の漁獲が好調で、増収増益となりました。養殖では、繰り返しになりますが、南米の鮭鱒での減益が大きく影響しました。また国内の養殖は、黒瀬ぶりは非常に好調でしたが、まぐろは販売価格の低迷、赤潮被害等の影響があり、また銀鮭も生産コストが増加し、苦戦しました。加工・商事では、北米のすけそうだらの加工事業が、販売単価の上昇やコスト削減の効果があり、増益となりました。

水産事業 ニッスイ個別(前期比)

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ニッスイ個別です。主要魚種で売上高を伸ばし、前期比で増収となりましたが、えび・鮭鱒などで苦戦し、減益となりました。なお、下期から利益率も回復し、現在まで利益率をそのまま保っています。そのため相場が回復していき、現在まで続いている印象です。

食品事業

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食品事業では、前期比で売上高は170億円の大幅な増収でしたが、営業利益は10億円の減益でした。詳細は次のページでご説明します。

食品事業  売上高・営業利益(前期比)

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加工では、北米の家庭用冷凍食品で、コスト削減効果により増益でしたが、業務用冷凍食品では生産性の悪化などにより、北米トータルではおおむね前期並みとなりました。ヨーロッパについては、生産体制の整備が進み、チルド商品を中心に増収となりましたが、原料価格の上昇などがあり、前期並みの利益となりました。

チルドでは、コンビニエンスストア再編による供給店舗の増加に加え、おにぎり・麺・弁当類の販売も伸長しましたが、群馬県伊勢崎市に新設した工場の立ち上げコストがあり、減益となりました。

食品事業  ニッスイ個別(前期比)

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ニッスイの個別については、各カテゴリーとも増収となりましたが、すりみなどの原料価格や物流費の上昇などにより、減益となりました。

ファインケミカル事業

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ファインケミカル事業は、前期比で売上高は6億円の増収でしたが、営業利益はほぼ横ばいとなっています。ニッスイ個別では、健康食品メーカーや乳児用粉ミルクメーカー向けに、EPA・DHAなどを供給する機能性原料ビジネスで、国内外の販売を伸ばしました。また、イマークをはじめとする通販事業では、2018年に大きく投じた広告宣伝費を、当期は効率的に使用して利益を確保しました。

日水製薬では、診断薬事業は好調に推移しましたが、2018年の化粧品事業の売却等の事業見直しなどの影響で、減益となりました。

物流事業

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物流事業は、平和島冷蔵庫の営業再開もあり、前期比で増収となりました。しかし、労務費や電力料などのコスト増加の影響もあり、若干の増益にとどまりました。

2020年3月期 計画

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2020年3月期計画について、ご説明します。

2020年3月期は売上高7,100億円、営業利益240億円を計画しています。養殖事業の回復や拡大を見込んでおり、各段階損益では過去最高を更新する計画です。なお、売上高については、チルド事業の取引形態の変更影響でマイナス70億円となっています。見た目は減収ですが、実質的には増収の計画です。また、配当につきましては1株あたり8.5円と、2019年3月期から50銭の増配を計画しています。

2020年3月期計画 セグメント別概況

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2020年3月期の事業別の売上高は、水産事業は2,987億円で、前期比87億円の増収、食品事業は3,449億円で、チルド事業の取引形態の変更の影響を加味すると、前期比で約100億円の増収、ファインケミカル事業は281億円で、前期比15億円の増収を計画しています。「その他」の事業については減収となりますが、全体では7,100億円を計画しています。営業利益については、次のページでご説明します。

主な営業利益の増減見通し

日本水産、営業益は前期比6.7%減 南米鮭鱒養殖事業の稚魚へい死などが影響

2020年3月期の営業利益の主な増減要因について、ウォーターフォールでご説明します。水産事業では、2018年に苦戦した南米鮭鱒養殖事業のフル生産、まぐろ養殖事業の回復、またニッスイ個別でのえびや鮭鱒の販売数量の増加により、増益を見込んでいます。食品事業では、ニッスイ個別でコスト削減と販売増による増益を見込んでおり、連結の営業利益は23億円増益の240億円を計画しています。

2020年3月期の打ち手について

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2020年3月期の具体的な施策です。中期経営計画で掲げた、「持続可能な水産資源から世界の人々を健康に」の実現に向け、水産・食品・ファインケミカル各事業を成長させてまいります。また、海洋プラスチック問題やフードロス問題など、ニッスイを取り巻く、さまざまな社会課題に取り組んでまいります。

水産事業の打ち手(養殖規模の拡大)

日本水産、営業益は前期比6.7%減 南米鮭鱒養殖事業の稚魚へい死などが影響

各事業の打ち手についてご説明いたします。水産事業では、養殖をより強化するため、規模の拡大を進めてまいります。そのポイントは「養殖魚種の充実」と、「さらなる種苗管理」による差別化と安定化です。

要するに、種苗をきちんと作れば、成魚もきちんとできるため安定化するということと、差別化は、育種の段階でいい種を作って、成魚でその回収をするということになると思います。

水産事業の打ち手(技術力による差別化)

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水産事業の収益性を高めるためには、養殖の拡大に加え、養殖の技術革新や加工技術の進化による差別化が重要と考えています。養殖事業については、異業種の力もお借りしながら、生産性の高い養殖事業への転換を図ります。

また、水産資源の本来のおいしさを引き出す新しい漬込み技術や、それを生かした商品など、当社独自の加工技術で差別化した商品の提供をしてまいります。

養殖事業の差別化 具体例(マサバ陸上養殖)

日本水産、営業益は前期比6.7%減 南米鮭鱒養殖事業の稚魚へい死などが影響

養殖事業の差別化について、具体例として、鳥取県で取り組んでいるマサバ陸上養殖事業をご紹介します。マサバ陸上養殖では、さまざまなメリットが得られることが期待されますが、なかでも、お客さまに喜んでいただけるよう、アニサキスフリーのさばを生産します。2023年から出荷できるよう、具体的に着手いたします。

本年度に工場を作りますが、養殖に半年以上かかるため、2023年の春にはみなさんが安心して刺身で食べられる、アニサキスフリーのさばを作っていきます。

食品事業の打ち手(商品展開)

食品事業では、女性の社会進出の促進に代表される、ライフスタイルの多様な変化に対応して、商品の拡大・強化を国内外ともに進めてまいります。即食・簡便調理に加え、健康を訴求した商品のラインナップを増やしていきます。

食品事業の打ち手(生産機能の強化)

また食品事業では、生産機能を強化し、需要拡大への対応と、自動化を含めた効率的な生産体制の構築を図ってまいります。

ファインケミカル事業の打ち手

ファインケミカル事業は、海外における需要の増加が見込まれるなか、cGMP体制の確立など、高純度EPAの海外展開に向けた準備を粛々と進めています。またヨーロッパでの、粉ミルクに添加するDHAの需要の増加を見据えた原料調達の強化を進めています。

CSR活動の取り組み

事業を通じて、さまざまな課題に取り組んでまいりますが、なかでも3つの取り組みについてご紹介いたします。

海洋プラスチックへの取組開始

海の恵みをいただいて事業を行っている当社としては、海洋プラスチックの問題は、取り組むべき重要な課題だと考えています。漁業・養殖事業での使用状況の把握や、従業員の意識向上など、目標を設定し、体制を整え、しっかりと進めてまいります。

フードロス削減・健康経営の推進

フードロスの削減への取り組みにつきましては、廃棄物の削減や、賞味期限の年月表示などがございます。2019年7月より、缶詰は賞味期限の表示を年月表示に変更いたします。

また冒頭に申し上げましたが、2018年は健康への取り組みをご評価いただき、「健康経営銘柄」に選定いただきました。引き続き、社員の心と体の健康管理などの取り組みを続けてまいります。

2020年3月期の主な設備投資計画

2019年度の設備投資は、ライフスタイルの変化に対応した、中食商品の需要の増加を見据え、タイにおいて加工工場を新設します。また生産性向上のため、北米冷凍食品工場のリニューアル工事など、中計の方針に沿って投資を実施していきます。

キャッシュ・フロー

2019年度のキャッシュ・フローと借入金の見込みです。先ほど申し上げたとおり、成長のための設備投資を積極的に行う予定です。若干、借入金が増える見込みでございます。

業績推移

業績推移です。国内外とも不透明な要素が多いなか、中期経営計画の達成に向けて、おおむね計画どおり推移していると考えています。これまで説明してきたとおり、成長に向けた取り組みのスピードを上げ、企業価値の向上を図ります。

Global Links

最後になりますが、中計の中間年となる2019年度は、国内は雇用環境の改善が続く一方、物流費・人件費の増加や、消費税増税の影響が懸念されます。また海外は、米中貿易摩擦、米欧貿易コンフリクトなど、通商問題や政治・地政学的リスクの影響が懸念されます。このようななか、当社は成長に向けた投資を行いながら、事業リスクに備えた筋肉質な体質を目指して、自己資本の拡充を図ってまいります。また、配当性向15パーセントから20パーセントも同時に実行してまいります。

2020年度の営業利益290億円の達成に向け、邁進してまいります。引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。

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