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10年前の米利下げを振り返る【フィスコ・コラム】

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アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が今月末に政策金利引き下げに踏み切れば、約10年ぶりとなります。前回の利下げは未曽有(みぞう)の金融危機に対し効力を発揮しましたが、今回はどのような役割が期待されるでしょうか。


FRBは7月30-31日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で、2008年12月以来の利下げを決定する公算です。引き下げ幅が25bpか50bpか市場の見方は分かれ、25bpなら7月と9月といったシナリオも浮上しています。低調な内容が目立つ経済指標を手がかりに、ぎりぎりまで思惑は交錯しそうです。もちろん、トランプ大統領が露骨なFRB批判を展開し、政治圧力を強めている点も無関係とは言い切れません。


振り返ってみると、FRBの前回の利下げサイクルは2007年8月が起点となりました。当時の失業率は4%台、消費者物価指数(CPI)は2%台後半で推移していましたが、7月にベア・スターンズ傘下のヘッジファンドが破たんしたのを受け、FRBは利下げに踏み切っています。翌2008年に入っても金融市場の環境悪化や住宅市況の収縮など不安が増幅し、利下げ方針を継続。そんななかでリーマン・ショックを迎えました。


2008年後半には国内総生産(GDP)がマイナスに転じたほか失業率はハイペースで悪化、CPIも急激に落ち込みます。ただ、利下げは同年12月で打ち止めとなり、翌2009年は政策金利を0.50%に維持したまま、金融機関の資産買取りなど量的緩和を中心に対応しました。NYダウは同年2月の7000ドル付近を大底に回復へと向かい、過去最長となる現在の強気相場につながっています。



足元でNYダウをはじめアメリカの株価は最高値更新が続き、FRBが予防的な緩和政策を検討していることに、まだピンとこない市場関係者もいるようです。直近の雇用統計をみると、非農業部門雇用者数が前月比で+20万人超、失業率は小幅に上昇したとはいえ半世紀ぶりの低水準を維持しています。GDP成長率も3%台と、回復の遅れが目立つ主要国と比べれば、確かに絶好調との見方もあります。


10年前の世界経済情勢と比べて大きく異なるのは、中国の存在感です。当時の中国のGDPは日本と同レベルの5兆ドルぐらいでしたが、欧米諸国の混乱を尻目にその後急激な成長を遂げています。GDPの規模はこの10年間だけでみると、アメリカが2倍の20兆ドルに拡大したのに対し、中国は3倍弱の13兆ドルに成長。現在も5兆ドル前後の日本を凌駕し名実ともにアメリカに匹敵する経済大国になりました。


ところが、7月15日に発表された中国の4-6月期GDPは市場予想と一致したものの、対米貿易摩擦により前期から伸びが顕著に鈍化しました。1992年以降では最低と指摘され、その影響からか今月26日発表のアメリカの4-6月期GDPも急速に減速する見通しです。今や世界の原動力である中国の腰折れは金融危機並みのインパクトがあると見積もった結果が、今回のFRBの利下げにつながるとも言えそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


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