AIを利用したサービスビジネスにおいて、国内で顧客を大きく裏切るような悪辣なものが登場して大問題になっています。それがリクルートキャリアのリクナビにおける、内定辞退率データの顧客企業への売却問題です。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2019年8月9日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
被害者はもっと多い?学生に不利な情報を勝手に売り飛ばす非道さ
ついにAI(人工知能)の不適切な活用事例が出た
多くの読者の皆様方はこの週末からいよいよお盆休みに突入されていらっしゃることと思いますが、今回の閑話休題は典型的なAIの誤用事例についてご紹介してみたいと思います。
ご存知のように投資の世界でもかなりAIの利用は進んでおり、当メルマガでもご紹介しました通りアナログチャート分析で過去の使用と酷似しているチャートを利用してこの先の相場を予測するとか、SNSで発せられている言葉から相場のセンチメントを分析して投資に活かすなど、驚くほどリアルな投資にAIが利用され始めている状況にあります。
そんな中で国内でAIを利用したサービスビジネスにおいて、顧客を大きく裏切るような悪辣なものが示現してしまい、大問題になっています。
それがリクルートキャリアのリクナビにおける内定辞退率データの顧客企業への売却問題です。
無償で新卒学生のデータ吸い上げ、勝手にAI分析して顧客企業へ売却
ネットが普及するにつれて、検索エンジンもブラウザも音声入力・会話アプリも、顧客のまったく気がつかないところでデータを勝手に分析し、それを二次利用するのはもはや当たり前の世界に入りつつあります。
しかし、今回リクルートキャリアがやらかした問題は、リクナビを無償で利用する新卒の就活生を完全に裏切る形となっており、AIを利用して分析した結果を顧客に売り飛ばすという点では相当悪辣です。
さらに、まったく信用ならないビジネススキームを平気で開発してしまった点が、許せないものとなっています。
簡単に言えば、就活生のほとんどが利用するようになっているリクナビのインプットデータをもとにして、利用者に一切承諾を得ることなくAIが勝手に分析して、内定辞退率を予測して顧客企業に売り飛ばしたというわけですから、リクルートを信用して利用した就活生を著しく裏切る行為になったことは言うまでもありません。
このサービスは昨年3月からスタートしているようですが、A社を過去に辞退した登録学生の企業閲覧履歴からAIが内定辞退率を5段階評価で表し、ご丁寧に就活生の名前を紐づけて企業に販売したという驚きのビジネスモデルなのです。
今のところ販売したのは38社のみということですが、競合関係にあったり人気企業同士の優秀な学生の取り合いというのはトップクラスの企業間で起こることですから、3万社のうちの38社しか売っていませんと言われても、「あぁそれはよかった」という話にはならないのが現実問題です。
利用する学生に「データの二次利用についての説明が不十分だった」というのがこの会社の弁明のようですが、「そうじゃないだろ?」という怒りがこみあげてくる内容になっているわけです。
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学生にとって不利な情報を勝手に企業へ売り飛ばす非道さ
そもそも就活というのは、残念ながら優秀で採用したいという学生のところに内定が集まりやすく、内定の取れない学生は長期の就活に従事するというきわめて理不尽なプロセスとなっています。
複数の内定が取れる学生もそれは結果論であって、どこから内定をもらえるかは、すべて受験してみないことにはわからないという非常にファジーな部分を伴っています。
一方、企業の方も1人の採用に賭ける費用はかなり高いものについていますから、予定人数を採用できないことは人事担当者の評価にもつながることから、とにかく内定を出しても辞退しない学生を最初から確保したいと思うのは今に始まった話ではないものがあります。
これまで各社とも同業他社で自分より大手のところを受けているかどうかなどを学生から引き出すことで辞退するかどうかを判断してきたものと思われますが、そこに目をつけたのがリクルートキャリアのAI判定サービスというわけですから、非常にかゆいところに手が届くサービスになっていると言われればその通りともいえるものがあります。
ただし、倫理的にみればとんでもない話で、まったく断りもなく学生のデータを利用して、せっかく利用する学生が不利になる情報を企業に提供しているのですから、学生が怒り、不安に思うのは当たり前の話です。
まぁこのAIサービスのダメさを笑っては真剣な就活生たちに申し訳ないですが、この会社リクナビを積極的に使わない学生さえも内定辞退しそうな学生として売り飛ばしていたそうで、典型的な就活市場荒らしの様相を呈してきています。
提携サイトの閲覧履歴も取得・利用という念の入れよう
パソコンのネット閲覧履歴やCookieはすでに広告配信などのために非常に活発に利用され、二次利用のために売り飛ばされているデータも莫大な数量になっているのが現実です。
このリクルートキャリアも案の定、提携先サイトの閲覧履歴さえも取得してその精度を上げていたという事実が判明しています。
早い話が、提携先の他社の閲覧履歴の個人情報を、自社の顧客に無断提供していたことになるわけです。
こうなるとネット上のデータビジネスの悪事の限りをつくした究極のサービスであったことがいまさらながらに理解できるわけです。
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被害者は8,000人というが本当はもっと莫大なのでは?
このサービスで情報を企業に提供されたのは8,000人あまりとされていますが、正確な数字は闇の中でよくわからないのが現状です。
AIとは機械学習やさらにそれから先んじてディープ・ラーニングの世界になるわけですが、人が様々な仕組みを教えるからこそ、結果が期待できる分析を行うことができるのはご存知の通りです。
しかしこのリクルートのケースのように最初から悪辣な結果を及ぼすであろうところにAIを使われたのでは、もはやAIと人が共存すること自体が難しくなってしまうのは時間の問題といえます。
リクルート社にはかなり優秀なデータ・サイエンティストが多数存在すると言われていますが、まず企業倫理としてビジネスがやって良いことと悪いことを自ら学習しないことには社会的な存続がはかられないことになるのではないでしょうか。
個人的には、この一件でリクナビは完全にクソナビになってしまってのではないかと思う次第です。
まずはかかるような事業企画を立案し、実施した人間をAIでよく分析されて、似たような人材を今後入社させないことから始められてはいかがでしょうか?
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2019年8月9日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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