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AOI TYO HD、今期は不採算子会社の整理を推進 来期以降は注力領域拡大と利益率増加を目指す

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2019年9月3日に行われた、AOI TYO Holdings株式会社2019年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

事業環境① -動画広告市場の拡大(インターネット上の動画)

吉田博昭氏:お集まりいただきましてありがとうございます。それでは、上半期の説明をしていきたいと思います。

まず、一般的な事業環境についてです。みなさまもご承知のように、現在はアメリカと中国の問題、香港の問題、EUの問題、そして日本国内でも少子高齢化など、問題が山積しています。

このように、(現代は)海外企業にとって頭の痛くなる大変悩ましい時代です。そのような環境のなかで、日本の広告業界の事業環境についてお話しします。

まずは動画広告市場の拡大についてです。テレビCMではなく、インターネット上の動画が主です。2018年(の動画広告市場)は1,843億円で、前年比で134パーセントの成長です。2020年には2,900億円、2024年には4,957億円に達する予測です。

最近の変化としては、広告主がより多くのお金をかけ、ブランディング効果が高く質の良い動画を作りたがる傾向が強くなってきているということがあります。

一方では、現代は「1億総カメラマン時代」と言われていて、誰もがスマホで手軽に動画を撮っている時代です。しかし、実際にYouTubeなどをご覧になると分かるように、それなりに説得されたり感動したり感心したりするような完成度の高い動画は非常に少ないです。

そのような意味では「1億総カメラマン時代」と言えども映像を作るプロの仕事は依然として存在するという状態です。

事業環境② -テレビCM制作費の推移

テレビCMについてです。(スライド4ページは)電通調べの数字です。テレビメディア広告費・テレビCM制作費は2009年以降、およそ10年の間ほとんど横ばいを続けています。

2018年のテレビメディア広告費は1兆9,123億円で、前年比では98.2パーセントです。テレビCM制作費は2,138億円で、同じく前年比では98.4パーセントの微減という状態です。

このグラフではそれほど大きく増減していませんが、反面、インターネット広告において、信頼性の問題などいろいろなトラブルがあったこともあり、かなり多くのスポンサーさまがテレビメディアの信用力、テレビメディアのリーチ力を再評価しているということも、また事実です。

テレビCMをご覧になっていただくと分かると思いますが、スポンサーの入れ替わりが起こっています。入れ替わって登場した新しい広告主さまは、どちらかというとテレビCMの信用力を評価していると判断されています。これがテレビCMについての現状です。

連結決算ハイライト

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連結決算のハイライトです。申し訳ありませんが、大変悪い数字になっています。2019年の第2四半期は、売上高は微減の状態ですが、営業利益と経常利益が大きく落ちこんでいます。

理由について申し上げますと、まず2つ大きな要素があります。1つはAOI TYOグループが統合してから今まで手つかずであった不採算事業、赤字子会社の存在で、これは現在、整理を行っています。もう1つは、システムの稼働、追加開発で費用が増加しているということです。

それ以外に、2年前からプリント業務がなくなっていく流れがありましたが、かなり大きな転機が今期にきているということもあります。さらに、前からのことですが「働き方改革」も影響しています。残業を減らすために、逆に固定費が上昇している点があります。

以上の点から、半期の売上高は306億3,600万円、営業利益は8億1,600万円、経常利益は6億3,700万円となりました。

四半期別売上高推移と受注残高

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譲原理氏:それでは、私からハイライトでご説明した業績の詳細についてご説明します。スライド7ページに四半期別の売上高の推移を載せてあります。「働き方改革」等による受注コントロールを継続しつつも大手広告会社からの受注・売上が増加した一方、プリントレスの進展やソリューション事業におけるメディア取扱高の減少等により、第1四半期、第2四半期の売上高は前年同期並みでした。

第1四半期、第2四半期ともに前年同期とほぼ同じ水準になっています。後ほどもう少し詳しく説明しますが、対電通からの売上と海外子会社で計画に達しなかった部分があり、先ほどのハイライトにもあったとおり、業績予想は計画対比で13億円強の未達という結果になっています。

それに対して、第2四半期末の受注残高は151億円です。前年の143億円から5パーセント強増えており、受注状況自体は足元も堅調に推移していると判断しています。

四半期別営業利益推移

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営業利益の推移です。吉田からも説明があったように、利益水準自体は前期に比べてかなりマイナスになっています。第1四半期と第2四半期の累計では9億円強マイナスになっています。

その要因を少し細かく説明します。プリントの売上は(今後)減っていくと申し上げてきましたが、上期で3億円弱減少していて、利益ベースでは前年比で1億円強マイナスになっています。

先ほど説明のあったシステム稼働、追加開発については、減価償却が前年比で1億5,000万円、加えて上期のみのスポット的な数字ですが、追加的な開発コストが2億円かかっています。あわせてコストが約3億5,000万円増加しています。

その他に、働き方改革にともなって業務委託費の増加等もあり、前期比でマイナスが生じています。一部赤字の子会社が存在することも利益が伸びていない要因になっています。計画対比では、全体として売上が14億円未達にはなっているので、営業利益が(計画に)3億円弱届かなかったという見方もできると考えています。

事業区分別売上高

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では、売上の内訳について、いくつかの切り口から見ていただきたいと思います。まずは事業区分別の売上高です。動画広告事業は従来から、受託によりCM等の映像制作を行っている部門で、ネットの動画も含めて受託しています。

動画広告事業については、先ほども申し上げましたとおりプリント売上が2億円強減少していますが、電通グループ・博報堂グループの合算での売上は4億円程度増加していて、前年比では約3億円の増加となっています。

広告関連事業に関してです。イベント、映画、ドラマ、販促物などは広告関連事業ですが、ここには1社、新規のM&Aでイベント関連の連結子会社が増えていて、その売上が1億5,000万円ほど寄与しています。加えて、全体的に動画以外の広告関連事業の売上が増えていて、全体としては拡大傾向にあり、4億円程度増えています。

オファリングマネジメント部門という、もともとTYO内にあるクライアントに直接営業して制作等を受けているセクションと、オンライン動画を中心に企画・制作・配信を行っているQuark tokyoの2つが主な担い手となっているソリューション事業ですが、2018年にはスポット的にテレビCMのメディア売上が9億円強入っており、今期はその売上がなかったため、売上としては減少していますが、それを除けば2億円ほど増加しています。

海外事業の売上は(前年比で)マイナスで、上期の決算では関係会社整理損で特別損失を3億円弱計上しています。業績不振だった北京の現地法人を整理したことが要因で売上は下がっています。

顧客別売上高

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今度は顧客別売上高です。薄いブルーが電通グループ、濃いブルーが博報堂グループを表しています。この2グループの合算では前期比で微増ですが、内訳を見ていただくと電通グループが4億円弱マイナスとなった一方で、博報堂グループでは7億円強増えています。

これは計画未達の要因の1つになっています。電通グループの減少については、電通の発表している決算等を見ても、電通自体の足元の発注量がやや減少していることによるものと判断しています。

それから白抜きの部分は直接取引の売上高で、徐々に割合が上がってきています。今期は前期比で少し数字を落としていますが、先ほど申し上げた前期メディアの売上がこの中に9億円程度含まれているため、それを除くと直接取引の売上高は前期対比で増加しており、この分野でも増加傾向が続いていると考えています。

媒体別売上高

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媒体別・メディア別の売上高について、テレビCMについてはほぼ横ばいです。プリントレスについては、オンライン送稿へのシフトによって減ってきております。一方でオンライン動画などデジタルコンテンツの売上が増加してきて、その割合も20パーセントを超えてきている状況です。

オンライン動画については、先ほど吉田から話があったとおり、クオリティの高いブランディングのための動画も増えてきていて、単価も徐々に上がってきています。なお、「その他」がわりと大きく減少していますが、これはメディア売上の減少にともなうものです。

連結貸借対照表サマリー

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バランスシートについてはそれほど大きな動きはありませんが、2019年12月期の上期に取引させていただいている各金融機関から運転資金として長期固定の借入を行っていて、長期借入金が増加している一方で、コミットメントラインの借入を少し減らし、その差額分だけ現預金が増えています。ちなみに、無形固定資産のマイナス2億3,900万円のうち、先ほど説明したシステム開発の償却によるものが1億5,000万円となっています。

連結業績予想の修正

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続いて通期の業績予想ですが、先ほど申し上げたとおり足元の受注状況は堅調に推移していて、売上の動きは当社の想定どおりです。そのため、今回の通期については上期の下振れ分のみを反映して、通期の業績予想を修正しています。

連結業績予想の進捗

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下期必要額を16ページに載せてありますが、下期の売上の必要額は約330億円です。上期比ではプラス23億円とかなり増えていますが、四半期別の売上の推移を考えたときに、ここ最近は第4四半期、年末に向けて売上が大きくなる傾向にあります。

そのため、例年どおりのかたちで売上が推移していけば、上期比からプラス23億円は達成できる数字だとは考えています。数字がここまで上がってくれば、それにともなって利益も上がってきます。プリントレスはもう少し進むと見ていますが、業績予想については達成可能だと判断しています。

ちなみに上期のプリントの売上高は前年の約10億円に対して今年が約7億9,000万円なので、下期は前年の約9億円に対して本年は約5億円(だと考えています)。プリントの下期売上は前年比で約4億円マイナスになると考えており、そのあたりも織り込んで数字を考えています。私からは以上です。

動画広告事業における取組み

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中江康人氏:中江です。私からは各事業の取り組み状況についてお話しさせていただこうと思います。

動画広告事業における取り組み状況としては外部支出原価の管理を継続しているのですが、とくに大きな案件が入ってくると利益率が下がる傾向がありまして、2019年12月期の前半は大口の案件が多かったことで下がっています。これは継続して下がっていくということではなく、上下をこれから続けていきながら水準が上がっていくため、このまま下がっていくことはありません。

利益率を1パーセント・2パーセントと改善することによって、利益が着実に上がってくるというシンプルな構造ですので、これからも力を入れて利益を増やしていきたいと考えています。

ソリューション事業における取組み①

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当社が新しく取り組んでいるソリューション事業についてです。1つはTYOのなかのオファリングマネジメント部門ですが、先ほど譲原から説明があったように今期はメディアの扱いが少なかったということです。メディアの売上はボンと上がるのですが、利益率はかなり低くて、利益に対する影響はそこまでありません。

メインで利益を出しているのは、直接受託して制作する制作事業です。制作事業だけ抜き出してみると、前年に18億円だったものが(今期は)20億円となり、このままいくと40億円は超えて50億円に迫る勢いで、確実に直接受託する制作事業は大きくなっていると言えます。

ソリューション事業における取組み②

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2つ目は、株式会社Quark tokyoについてです。ネットの動画を中心としたコンテンツマーケティングのソリューションを提供する会社です。こちらももちろんソリューション提供をしているのですが、制作の仕事やトータルのプロモーションの仕事がすごく増加しています。

以上2つのソリューション事業の成長は今後の当社のキードライバーであると思っているため、来期以降もかなり注力してやっていきたいと考えています。

海外事業における取組み

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海外の事業については、とくに過去、範囲を拡げたなかでうまくいかない部分が出てきていて、中国・北京を整理しました。この後も説明しますが「今期中にとにかく事業を整理しよう」という意思決定をしています。その分、数字には影響が出るのでみなさまをがっかりさせているとは思うのですが、「それでもやりきろう」という気持ちで取り組んでいます。

以上の要因により売上は落ちていますが、当社としては今後、東南アジアに注力して、東南アジアにおける事業を拡大していこうと考えています。

事例紹介①

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TYOはAnyProjects株式会社と資本業務提携いたしました。デザインインキュベーションチーム、要するにデザインシンキングと言い、デザインという発想でコンサルティングをするチームです。そのAnyProjects社と、実行力、制作力があるTYOという組み合わせです。TYOとしては、制作事業、とくにクライアント直接の商流を拡大していくという取組みの1つとして考えています。

上流から入り、制作にまでコントローラブルに関わるために取組み始めたものです。あくまでも制作事業を拡大させるために取り組んでいます。

事例紹介②

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株式会社Quark tokyoについてです。電通グループの株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)というメディアレップと合弁いたしました。この取組みは、当社がオンライン、インターネットなどの動画(広告)の中での1つの正解を導き出そうとしているものと思っています。

インターネットでは、結局「誰に」「何を」「どう届けますか」ということなのです。「誰に」というのは、届けたい人。ターゲットです。「何を」というのは、コンテンツです。「どう届けるのか」というのは、メディアなのです。メディアと言っても、今、メディアの概念が大きく変わっていて、SNSが出てきてからは個人がメディアになってしまっています。

つまり、メディアの出し先が無限大にあるのです。そのため「誰に届けたいか」をはっきりさせて「出し先」と「コンテンツ」をきちんと融合させるという取組みです。これはインターネット動画広告の正解の1つだと考えています。

来期以降の企業価値成長に向けた布石

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「それでは来期以降どうするのか」ということについてです。まず、働き方改革についての影響は一巡し、だいたい安定して稼働できるようになってきたので、働き方改革は十分取り込めてきているかなと考えています。

そして「プリントレス」「プリントレス」とずっと言ってきていますが、その影響は今期までは大きいですが、来期以降は軽微になっていくため「プリントレスの影響で」ということももう当社の言い訳にはしません。

今期には、先ほど申し上げた業績不振な子会社や部門の整理を完了しようと思っています。これは主に私が過去に社長を務めていた株式会社AOI Pro.が拡大路線を敷いていたときに増やしていった会社の中に現代では通用しなくなってしまった事業がいくつかあるということです。

私が株式会社AOI Pro.の社長を務めているときから整理は始めていたのですが、これでいよいよ最後の整理だと考えています。そうすることで、来期には当社の本当の実力が見えてきます。その実力上でどのようなビジネスをしていくのかが当社のテーマです。

インターネット広告動画は確実に市場が拡大しています。来年には「インターネット広告費がテレビ広告費をついに逆転する」とも言われていますが、動画を制作するという点においては(当社の事業と)同じ事業です。

そのため、ブランディングに寄与する動画の制作事業の比率をどうやって上げるのかに尽きます。もう1つは動画というコンテンツを使ったマーケティングです。コンテンツマーケティングというと、株式会社Quark tokyoの手掛けている事業です。ここにはかなり伸びしろがあるので、それをどう拡大していくのかも重要です。

加えて、直接取引を行う制作事業を拡大していくこと、さらに、全体的な利益率を数パーセント改善するだけで利益が大きく上がるので、どう利益率を上げていくのかという点も重要です。以上です。

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