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近くて遠いドル110円【フィスコ・コラム】

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ドル・円は1カ月以上にわたり、108円台を中心とした水準でこう着しています。米中貿易協議の先行きの方向が定まらないためです。今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)を挟み、ドルは年末に向け心理的節目の110円に到達できるでしょうか。


10月10日の米中貿易協議を前にトランプ米大統領が「何か極めて大きなことができる可能性がある」と述べたことで、1年半も続く米中貿易戦争に終止符が打たれるとの期待が高まっています。ドル・円はそれ以降、売りづらい地合いとなり、終値ベースで108円以上の水準を維持する底堅い値動きが続いています。節目の108円付近では値ごろ感による押し目買いが観測されます。


その後もドルの底堅さが増しています。米連邦準備制度理事会(FRB)は10月29-30日のFOMCで利下げに踏み切ったものの、景気拡大に向け「適切に行動する」との従来の文言を声明から削除。市場では「米中歩み寄り→アメリカ経済回復→利下げの打ち止め」の思惑が広がりました。11月7日には5月末以来5カ月超ぶりの高値圏である109円半ばに一時浮上しています。


半面、上値の重さも目立ちます。109円台での上昇ペースはかなり緩慢で、心理的節目の110円まで1円程度に迫りながら強い下押し圧力が上昇を阻止。足元の米中協議では農産物の輸出入や知的財産権の保護などで決着を目指す一方、中国側は関税撤廃を求めるなど、なお調整が続いています。摩擦解消の期待がこれまで何度も裏切られただけに、ドル買い、ドル売りのどちらにも動けないことが背景にあります。


アメリカ議会の「香港人権・民主主義法案」可決も、ドルの上昇を阻止する要因です。中国側はすでに反発を強めており、米中関係の悪化につながる恐れがあります。さらに、日本企業の根強い円高への警戒も、ドルを抑えています。主要自動車メーカーはドル・円の想定為替レートについて、2019年度上期の108-109円から下期はおおむね105-107円と円高方向に設定しています。


もっとも、ドルは安全通貨の1つで、米中協議の進展期待が高まるほど主要通貨に対して売られやすく、同じ安全通貨の円に対しては値幅が出にくくなる特徴もあります。この1カ月あまりのドル・円が狭いレンジ内でもみ合っているのは、そうした要因が寄与しているためです。アメリカが対中関税第4弾を発動する12月15日までに署名にこぎ着けるか注目され、目先も同様に動きづらい展開となりそうです。


12月はFOMC(10-11日)、イギリス総選挙(12日)、対中制裁第4弾発動(15日)と大きなイベントが予定されています。FOMCでの利下げ見送りならドル買い・円売りですが、トランプ大統領とパウエルFRB議長の11月18日の会談で利下げ観測が一部で再燃。その場合にはドル売り・円買いとなり、イギリスは保守党圧勝ならブレグジットの混迷を脱するとの見方でドル売り・円売りでしょう。


そして、期待どおり米中摩擦が解消されればドル売り・円売りと予想されます。いずれにしてもドル売りは回避できず、年末に向けやはり110円には距離感がありそうです。


※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

(吉池 威)


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