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ブランディング Research Memo(6):上場を機に、事業の土台固めとともに、新たな成長戦略の構築に取り組む

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■中長期の成長戦略

1. 中長期の持続的成長に向けた取り組み
ブランディングテクノロジー<7067>は現在、中期経営計画といったものは策定していない。2019年6月に上場を果たし、“中小企業を対象にブランディング支援を行う初の上場企業”というステータスを獲得したが、自身の体制固めの必要性を強く認識している。2021年3月期から2022年3月期までの2年間は、土台固めの時期という位置付けのもと、収益性改善を含めた体質強化に努め、それと同時に、中長期的な成長戦略方針について計数目標も含めて詳細な戦略を固めていく方針だ。

このように書くと今現在の同社には成長戦略がないように聞こえるかもしれないが、決してそうではない。今後、どのように収益成長を実現していくかという成長戦略は、明確に有している(詳細は後述)。

同社が思い悩んでいるのは、どの領域にどの程度まで手を広げていくかということだ。それによって事業のターゲットとなる潜在市場と規模が大きく異なり、ひいては同社の収益成長ポテンシャルも変わってくる。上場企業として大きなアドバンテージを獲得したことは間違いないが、それをどう生かすかを慎重に考えたいというのが、今の同社の状況だ。

同社が何をどう思い悩むか、弊社も含めた外部分析者がそのすべてを完全に理解することはできない。しかし、いくつかの例や方向性を推測することは可能だ。弊社なりの理解では以下のような点が思案のしどころと考えている。

まず、同社の事業モデルとして、コンサルティングの領域に踏み込むかどうかだ。ブランド事業は、中小企業のブランド構築の一連のプロセスの中で、言わば前工程に当たる。この領域で同社がどのような関わり方をするかだ。現在は既に出来上がった顧客のブランド要素(理念、社風など)を、Webサイトやロゴといったものにまとめ上げる形での関わり方が中心になっている。これをもう少し川上の領域、すなわち、顧客に対して、理念や社風などを顧客と一緒に作り上げるような領域まで踏み込むかどうかがポイントの1つになると弊社では考えている。これはまた、ブランド構築を事業のポジティブスパイラル構築に発展させるプロセスの事業化とも密接に関係してくると考えられる。

こうした事業展開は、同社が経営コンサルティングの領域(特に、戦略系コンサルと言われる領域)に入ることであり、人材面などで大きな投資が必要になる可能性もあり、同社自身にとって大きな先行投資を強いられることにもなる。それでも弊社がこうした点に注目する理由は、現状のままでは広告代理店業務からの差別化が難しくなると考えるためだ。同社は中小企業にフォーカスすることで、総合広告代理店や大手インターネット広告代理店との競合を躱しながら成長してきたが、同社がより大規模な顧客層へのシフトを図る過程では、そうした大手企業といずれ競合することになる。その時にブランディング支援を自社の強み・差別化要因として機能させ続けるためには、経営コンサルティングの領域に踏み込むことも方向性の1つだと弊社では考えている。これ以外の方向性も当然考えられるが、いずれにしても、事業ドメインを拡大して競争力の保持・強化をどのように図るかが注目される。

論点についてもう1つ挙げるとするならば、顧客に対する“ゴール”設定として、顧客企業の売上高の成長にまで踏み込むかということが挙げられる。同社のブランディング支援の成果を、顧客企業の売上高の成長をモノサシとして測り、増収分の一定割合を成果報酬として受け取るような事業モデルだ。こうした事業自体はEC(eコマース)の分野でECコンサルタント企業が既に行っている。弊社は、そうした市場に同社が真正面から入っていくことを期待しているわけではなく、同社の収益モデルの多様化や、収益成長の加速可能性といった見地から、何か新たなモデルへの取り組みを期待したいという意味合いで例示したに過ぎない。こうした議論が実際になされるかはわからないが、同社は成長途上の若い企業であり、事業モデルを様々な方向に発展させ得る状況にある。今後の成長戦略の深耕を待ちたいと考えている。

なお、同社が現在掲げる成長戦略は以下のようなものだ。同社がより本格的な成長戦略の策定に取り組んでいる状況に照らすと、以下に掲げた現在の成長戦略は有効期間が短い一時的なものにも思えるが、決してそうではない。現在の成長戦略は同社の本質的な部分に根差しており、今後発表される予定の、より本格的な新・成長戦略においても、そのまま残されることもあれば、新たな戦略に昇華されるようなケースもあると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)


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