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イラクは米軍撤退「お願い」するだけ、ソレイマニ司令官殺害から見る中東力学【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

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イランと中東との地理的な関係性を考えると、イラクはイランにとって中東への陸路としての入り口であるとともに、イランと同様にシーア派が多数である非常に「工作がしやすい」地域である。あらゆる国家が戦略的な距離を取りたがることを考えると、イランと中東のスンナ派地域の間に緩衝地帯、バッファーゾーンを作りたがるのは必然。このイランの特性を前提として、イランの動きを考える必要がある。

イラク内での米軍の活動はイラク側によって認められているため国際法違反でないとも言えるが、ソレイマニ司令官殺害の行動は国際法違反という批判も出ている。ソレイマニと一緒に殺されたアブ・マフディ・アル・ムハンディスは(シーア派民兵でイランとの関係が深い)カタイブ・ヒズボラの指導者であると共に、イラク国家によって承認されている民兵組織「人民動員隊」の副司令官でもあるため、ここの問題を通じてイラクは主権が侵されたという主張ができる。実際、イラクは米軍に撤退するよう求める議会決議と、撤退を「お願い」するスタンスを取っている。

しかし、過激派組織ISILがまた活動を再開していると言われている状況で、本当に米軍の撤退を実現可能なのかが疑問として残る。イラクの立ち位置が難しいのは、どうしてもイランとアメリカの思惑、そして自国内の宗派の異なる感情の板挟みになってしまうからである。いくらシーア派多数の国であっても、イランの操り人形になることに抵抗感を覚えるのは独立国して自然な感情である。イランとアメリカ両方を敵に回すことはできないが、今までの経緯からくる反米感情も考えると、政府スタンスとしては米軍に撤退して欲しいという言動をすることだけにとどめると思われる。

あまりにもイラン(シーア派)に有利な行動をした場合、今度はスンナ派がISILのようなスンナ派過激組織に身を寄せる口実を作るため、何かをやったら別の宗派か国の気分を害し、下手をするとイラクに敵対する武装勢力が沸いてくるという状況にある。

地経学アナリスト 宮城宏豪
幼少期からの主にイギリスを中心として海外滞在をした後、大学進学のため帰国。卒業論文はアフリカのローデシア(現ジンバブエ)における経済発展と軍事支出の関係とその周辺の要因についての分析。大学卒業後は国内大手信託銀行に入社。現在、実業之日本社に転職し、経営企画と編集(マンガを含む)も担当している。歴史趣味の延長で、日々国内外のオープンソース情報を読み解いている。

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