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トランプの行動、タカ派の思惑とはややズレ、ソレイマニ司令官殺害から見る中東力学【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析】

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トランプの周りにいるタカ派の思惑を推察してみると、ボルトンの発言を見る限り、イランに暴発をして欲しいと思っているのだろう。「暴発、戦争ともとられる反撃をしてみろ」と。イランが本質的な反撃ができないのならそれでよし、反撃をするのなら米国としてはもどかしいゲリラ紛争のようなものではなく、鍛えに鍛えた大火力を以て殲滅戦で、一気にその「国体」ごとに崩壊させることができる。タカ派にとっては、どっちに転んでも良い。ただし、転覆させた後のシナリオを、米国は持っていないようにも見受けられる。転覆するときの現地協力者をだれにするのかを特定していないように見られるし、政権運営をどうするのかという具体的なことを特にタカ派は言及していない。しかも、シーア派の守護であるイランが転覆させられたら、中東におけるシーア派の立場も崩れるため、これがなんらかの流血につながるのは想像に難しくない。

なお、必ずしもタカ派とは言えないペトレイアス将軍がForeign Policy誌のインタビューで、この行動(ソレイマニ司令官殺害)でアメリカの抑止力がまた復活した(要は、なめられない)と評価している。以前の政権だと許されていた、代理の民兵や現地武装組織によるあからさまな米国に対する挑発を、今後許さないという意思を示すことができたのが大きいということだろう。抑止力の復活はタカ派の考えの一つではある。アメリカは「やるときはやる」、アメリカの敵として競争するのなら容赦しないと示すことができる。この「ショック」はロシアと中国にも効くというのがタカ派の最終的な構想であると見受けられる。ただし、これが良いか悪いかはまだわからないという印象を筆者は受けた。

イランは1月8日、弾道ミサイルをイラクにあるアメリカ軍基地へ撃ち込んだ。1月9日にトランプが行った記者会見は、ミサイル攻撃のよる犠牲者がいないこともあり、とりあえず経済制裁以上のことをしないと発言した。その際のトランプの発言に一貫した戦略性が見られないのは、様々な思惑とその場の気分がそのまま反映されたと考える。この発言は、タカ派の思惑とはややずれていると見られるため、今後は米国内における政策の方向性が揺れ動くと考える。

地経学アナリスト 宮城宏豪
幼少期からの主にイギリスを中心として海外滞在をした後、大学進学のため帰国。卒業論文はアフリカのローデシア(現ジンバブエ)における経済発展と軍事支出の関係とその周辺の要因についての分析。大学卒業後は国内大手信託銀行に入社。現在、実業之日本社に転職し、経営企画と編集(マンガを含む)も担当している。歴史趣味の延長で、日々国内外のオープンソース情報を読み解いている。

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