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低空飛行のインド市場【フィスコ・コラム】

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インド市場の収縮ムードが顕著になっています。目先の成長鈍化が見込まれるほか、モディ政権への風当たりが強まっているためです。期待外れとなった新年度予算では、過去10年間で最悪といわれる景気の低迷を乗り切るのは困難とみられます。


2月8日に行われたデリー首都圏議会選挙(定数70)で、モディ首相率いる「インド人民党」(BJP)は大敗。大幅な上積みによる過半数議席の獲得を目指したにもかかわらず1ケタにとどまり、地方政党の「庶民党」に大きく水を空けられました。BJPは昨年秋以降に行われた地方の議会選でも議席減や過半数割れが相次いでおり、2期目のモディ政権に対する逆風が強まっています。


その背景には、昨年12月にモディ政権が進めた国籍法の改正があります。極端なヒンズー主義政策によりイスラム教徒に国籍を与えないなど差別的な政策として批判が起こり、全国的な抗議行動に発展しました。モディ首相は抗議活動について政権批判のための政治利用だと有権者に訴えましたが、今回の議会選でマイナス要因となったのは間違いありません。


過去10年間で最低といわれる景気の低迷にも不満が噴出しています。国際通貨基金(IMF)は昨年10月に発表した世界経済見通しのなかで、新興国の回復が腰折れの先進国を穴埋めするとのシナリオを描いていましたが、今年1月には新興国を軒並み下方修正。特に、インドに関しては修正幅が最大です。ノンバンクの経営破たんで信用問題から内需が収縮し、19年のGDPは現時点で11年ぶりの低水準となりそうです。



2月12日に発表された1月の消費者物価指数は前年同月比+7.6%と、約6年ぶりの高水準となりました。特に野菜の値上がりが目立ち、消費のマイナス要因となりそうです。インド準備銀行(中銀)はそれに先立ち、2会合連続で政策金利の据え置きを決定。物価目標の4%を上回るインフレのため利下げに踏み切れず、景気の低迷に直面しているものの、手を打てない状態が続いています。


とはいえ、モディ政権は昨年4月から5月にかけて行われた総選挙(定数543議席)で、首相の経済政策運営の手腕などが評価され地滑り的な大勝利を収めたばかり。今年1月末時点での支持率は70%近くを維持しており、政権基盤は安定していると言えそうです。今年から来年にかけての議会選では苦戦が予想されるものの、連敗による求心力の低下でモディ首相が退陣するとのシナリオは描きにくいのも事実です。


景気対策として期待された新年度予算の内容に市場は失望し、代表的な株価指数のセンセックスは大きく売られました。企業業績の悪化により株価は年明け以降に伸び悩んでいます。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で原油価格の上昇が抑えられているのは、輸入依存度の高いインドにとって不幸中の幸いです。モディ政権としては嵐が過ぎ去るのを待つ状態が続くのかもしれません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


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