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北朝鮮による今年2回目のミサイル発射について

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日本政府は、3月9日朝、「北朝鮮が複数の弾道ミサイルとみられるものを日本海に向けて発射し、いずれも日本のEEZの外側に落下したと推定される。」と発表した。

政府は、「今回の発射は、日本と地域の平和と安全を脅かすもので、国際社会全体にとっての深刻な課題だとして、アメリカなど関係国と連携して、情報の収集・分析や警戒監視に全力をあげる。」としている。北朝鮮は、昨年のハノイでの2回目の米朝首脳会談が決裂した後、5月から11月にかけて延べ13回短距離弾道ミサイルを発射し、今年は3月に入り2度目の発射を行ったことになる。国連は、3月5日北朝鮮のミサイル発射を受け安保理の緊急会合を開催、英仏独とベルギー、エストニアの5か国が非難声明を発表している。

新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、欧州やアメリカでのさらなる蔓延の兆しがある中、北朝鮮のミサイル発射の意図がどこにあるのか検討してみたい。

まず初めに、考えられるのは、「国内の経済逼迫と新型コロナウイルスの蔓延による態勢の立て直しのための発射ではなかったか」ということである。南山大学の平岩教授(NHK3月2日)によれば、「経済制裁に加え中朝国境閉鎖により、物流が滞り、国民生活の維持が困難に直面している。」 さらに、朝鮮労働新聞(1月29日付)に記事が掲載されているように「防疫体制の不備と医薬品不足により国内の情勢が混とんとした状況になっている」可能性が大きい。そのため、自身の強さや体制の堅牢さをミサイル発射により国内外に誇示しようとしたのではなかろうか。

次に考えられるのが、「金正恩重病説」である。『中央日報』(2月11日付)は「昨年10月に金正恩が白頭山を訪問した際、随行した幹部に『私の後継者は金与正同志』と話した」、「金正恩の健康状態が良くないため、1月にフランスの医療関係者が極秘で平壌を訪問して治療した。」と報じている。金正恩のメディアへの露出が減少し、金与正の露出が増加している。3月2日のミサイル発射後の朝鮮中央通信の報道で「自衛的行動だ」とコメントしたのは金与正であった。金与正への政権移行の布石なのか、金正日の重病によるものは現時点では判断は困難であるが、自分の重病を悟られないために大がかりな対外的芝居を打っている可能性も否定できない。

3番目に「4月の韓国総選挙及びアメリカ大統領選挙への揺さぶりではないか」との見方である。金正恩にとって韓国の文在寅政権は好都合な政権である。金与正の米韓演習延期の非難と裏腹に金正恩が、「韓国国民への『新型コロナウイルス対応の労をねぎらう』など剛柔織り交ぜ、ミサイル発射により北朝鮮の存在をアピールすることにより文在寅政権を応援するという見方である。

さらに、アメリカでは大統領選挙により北朝鮮への関心が低下している。アメリカへの関心を引き、首脳会談または実務者協議の再開につなげたいという意図があるのではなかろうか。

最後に、3月の「超大型ロケット砲の合同訓練」は、例年3月から4月に実施されている米韓合同軍事演習(Foal Eagle、Key Resolve)の対抗措置として計画されていたもので、米韓合同軍事演習は延期されたが、北朝鮮の訓練は計画通り実施されたという可能性である。

米韓軍は、新型コロナウイルスの感染により合同軍事演習を中止し、軟弱であるが、北朝鮮軍は精強であるというアピールをしたかったものと考えられる。

以上の見方は、正確な情報が限定されており結論を見出すのは困難であるが、いずれの理由にせよ、この時期のミサイル発射は、後ろ盾となる中国や好意的な姿勢のロシアを含め国際社会や国連から非難を浴びる愚行である。金正恩が喫緊に実施しなければならないのは、新型コロナウイルスの感染防止であり、発症者への治療体制の構築のための努力である。それを承知の上での愚行であるならば、北朝鮮の国内の状況は極めて危機的状況であり、金正恩が相当追い詰められた状況であると判断しなければならない。

また、3月9日のNHKの報道によると、二階幹事長は「ミサイルが撃たれるたびに集まって、同じような会議をして、同じような抗議文を読み上げて終わりでは無責任ではないか。もっと『日本は怒っている』との怒りの声を上げないといけない」と述べている。情報の収集・分析及び警戒監視を強化してもミサイル発射は止まらないという観点においては、日本として怒りの声ばかりでなく、金正恩にとって痛手となる報復措置の検討も選択肢になろう。

写真提供:AP/アフロ
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