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コロナ禍は人災(1)【中国問題グローバル研究所】

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【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回にわたってお届けする。

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全世界に対し責任があるのは習近平で、一党支配体制による忖度と言論弾圧に諸悪の根源がある。日本が初動に失敗し感染拡大させたのは習近平に対する安倍首相の忖度で、日本国民の命と生活に重大な危機をもたらしている。

◆コロナ禍の真犯人は習近平
日本のジャーナリストの中に、「習近平を敵視するとは何ごとか、習近平は(コロナの戦場における)戦友である」という趣旨のことを書いている人がいるのを知って驚愕を覚える。

もう何度も多くのコラムに書いてきたが、コロナ禍(新型コロナウイルス肺炎の災禍)の真犯人は習近平で、しかもこれが人災であるということは言を俟(ま)たない。

蔓延した最初の原因は湖北省の省都である武漢市政府が患者の発症を隠蔽したからだ。1月5日に上海市公共衛生臨床センターが「これまでにない新型コロナウイルスだ」と検査結果を発表したのに、武漢政府は「確かに原因不明の肺炎患者はいたが、その問題は既に解決している」として北京に良い顔をしようとした。昨年12月30日には武漢の李文亮医師等が「この肺炎は(2003年の)SARS(重症急性呼吸器症候群)の時のコロナ肺炎に似ている。人‐人感染もする」と警鐘を鳴らしたが、1月1日、武漢公安は李文亮を「デマを流し社会秩序を乱した」として摘発。李文亮自身も新型肺炎に罹り2月7日に亡くなった。

武漢政府が市民の命を重んぜずに北京の顔だけ見ているのは一党支配体制がもたらしたものであり、李文亮を摘発したのは一党支配体制を維持するために不可欠な言論弾圧があるからである。

それでもせめて医師や医療機関の警告を重要視すればいいのに、習近平は武漢市の忖度報告だけを信じて1月17日からミャンマーを訪問し、19日から21日までは春節祝いのために雲南省巡りをしている。

しかし1月18日、浙江省で同じ肺炎患者が発症したため中央行政省庁の一つである国家衛生健康委員会が動き、SARSの時の功労者であった中国免疫学の最高権威・鍾南山院士率いる「国家ハイレベル専門家グループ」を武漢視察に派遣した。一瞬で「SARS以上の危機がやってくる」と判断した鍾南山は北京にいる李克強総理に報告し、李克強が雲南にいた習近平に知らせて、1月20日、習近平の名において「重要指示」を発布させた。

この瞬間から中国はパニックに突入し、1月23日には武漢封鎖に踏み切ったが、もう遅い。それまでに500万人に及ぶ武漢市民が武漢から脱出し、中国全土に散らばっていった。

1月30日になってWHO(世界保健機関)はようやく緊急事態宣言を出したが、「貿易や渡航に関する制限は設けない」として緊急事態宣言を骨抜きにした。WHOのテドロス事務局長はエチオピア人で、エチオピアへの最大投資国は中国だからだ。

◆「たるんでいた」安倍内閣
このWHO宣言に対して、アメリカやロシア、北朝鮮、台湾、フィリピンなど数多くの国が「中国からの渡航者の入国を一律に禁止する」措置を講じたが、日本は湖北省からの渡航者を規制しただけで中国の他の地域からの受け入れは野放し。2月12日になってようやく浙江省だけを渡航規制区域に加えたが、ザルに水だ。結果、日本はWHOから「警戒国」に列挙されるほど感染を広げるに至った。

日本の外務省の発表によれば、3月7日時点で27カ国・地域が日本に対する入国制限を実施し、入国後の行動制限を設けたのは63カ国・地域に上るという。日本は「危険な国」という印象を世界に広げ始めているのである。
その原因は、これも何度も書いてきたが、4月に習近平を国賓として来日させることになっていたからだ。その習近平のご機嫌を損ねてはまずいと、習近平に忖度した。

もちろん東京オリンピック・パラリンピックや中国人観光客によるインバウンドも考慮したのだろうが、しかしマカオなどの場合は3月1日のコラム<中国人全面入国規制が決断できない安倍政権の「国家統治能力」>(※2)に書いたように、北京政府の管轄下にある中国特別行政区であるにもかかわらず、2月5日から中国大陸からの入境も中国大陸への渡航も一律禁止している。なぜならマカオ経済はカジノでお金を落としてくれる観光客によってのみ成立しているので、思い切って大陸からの入境を全面禁止した方が感染拡大を食い止め経済的打撃が少ないと判断したからだ。そのためこれまでの累計患者数を10人に食い止めることに成功している。3月7日現在で、32日間、新規感染者はゼロだ。

マカオでさえできる判断と決断が、安倍内閣にはできなかった。マカオを管轄するのは中国政府(北京)の全人代(全国人民代表大会)常務委員会で、この委員会が、マカオがこのような措置を取ることを許可したということは、安倍首相が同様の英断をしても問題はなかったことを意味する。

しかし、そのような、日本国民の経済を守るための思考もできないほど、安倍内閣はたるんでいたのではないだろうか。

その証拠に、たとえば2月16日に首相官邸で開かれた「新型コロナウイルス感染症対策本部会議」(全閣僚がメンバー)には、小泉進次郎環境相と森雅子法相および萩生田光一文部科学相が欠席している。

小泉氏は地元の後援会の新年会に出席し、萩生田氏は地元の消防団関係者の叙勲祝賀会に出席。そして森氏は福島県内の書道展で挨拶するため欠席したことが明らかになった。

これに対して2月19日、菅官房長官は記者会見で「必要な公務や用務であれば欠席はやむを得ない」との認識を示しているが、これが「新型肺炎の対応について政府一丸となった対応」を強調してきた安倍内閣の実態だ。

おまけに森氏は3月3日、アリババの馬雲(ジャック・マー)がマスクを送ったことに対して、自身のツイッター(※3)に、「友人のジャック・マーが、日本に手を差し伸べてくれました。 素敵なメッセージと共に100万枚のマスクを送ると表明してくれました。是非記事を読んでみてください。 昨年12月にも東京で語り合う時間がありました。次再開する時にしっかりと感謝を伝えたい。ありがとうジャック」と書いている。

この事実は軽視してはいけない。日本国民の命を水際で必死になって守らなければならないはずの入国管理局を管轄する法務大臣が、コロナ対策本部会議を欠席して書道展に出席していただけでなく、中国に諂(へつら)わんばかりのツイート。馬雲と会ったことがあるのが自慢なのか。

「ありがとうジャック」とは、何という「おぞましい」ばかりの表現だろう。これが、こともあろうに水際を命がけで守っていなければならない法務大臣の言葉か。

このツイートは、中国がコロナを発生させ全世界に蔓延させたことは「できるだけ見ないようにして矮小化させる」という習近平の望みを叶えてあげている安倍政権の全てを物語っている。きっと安倍政権の中では、この「中国共産党への阿(おもね)り」、「習近平への諂い」が常習化しているのだろう。だから、このようなツイートが自然に出て来る。

ただ「たるんでいる」というだけでなく、日本国民の命や安全な日常生活より、習近平への忖度が優先されている安倍政権の意識が、いかんなく発揮されているツイートなのである。これを任命者である安倍首相は咎めもしない。
この一点を見ただけでも、現在の感染拡大は、安倍内閣がもたらした人災であると断言できるのではないだろうか。
(本論はYahooニュース個人からの転載である)

「コロナ禍は人災(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く

写真:ロイター/アフロ

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://grici.or.jp/958
※3:https://twitter.com/morimasakosangi/status/1234683414357274624

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