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さまようドル円【フィスコ・コラム】

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新型コロナウイルスの影響で、金融市場は大荒れの相場が続いています。ドル・円は112円台に上昇したかと思えば、今度は101円台に急落。その後は値を戻しましたが、これから新年度に向けどのような展開が待ち受けているのでしょうか。


ドル・円のこの1カ月ぐらいの値動きを振り返ってみましょう。110円付近でもみ合った後、2月19日に上値メドとみられていた110円30銭を上抜けると、そのまま昨年4月以来の高値圏となる112円前半に急浮上します。この時は日本の国内総生産(GDP)の悪化もあり、コロナの日本経済への影響を懸念した「円売り」が主体となり、ドルを押し上げました。


その翌週になると、ドルは下げに転じます。アメリカでのコロナ感染で先行きの景気減速への警戒感が急速に広がり、株売り・債券買いの流れが加速。NYダウは単なる株安ではなく、下げ幅を次第に拡大する不気味な状況に突き進みました。連邦準備理事会(FRB)は3月3日の緊急の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利引き下げを決定しますが、株安は止まりません。


FRBの利下げを受け、米10年債利回りは過去最低水準を更新。産油国の減産協議の不調による原油安も加わり、ドルは2016年11月以来、3年4カ月ぶりの安値となる101円18銭まで値を切り下げました。主にアメリカの下振れ懸念を中心とした「ドル売り」が原動力でした。2週間あまりの値幅は11円04銭と、昨年1年間のレンジ7円78銭を上回っています。





アメリカの株価は下げ止まらないどころか、3月16日の下げ幅は過去最大の3000ドル近くに達しました。株高を自身の手柄としてきたトランプ氏には耐えきれない状況かもしれません。しかし、この時から「ドル買い」に流れが変わっていきます。恐怖指数などに変化がみられ、リーマンショックを凌駕する金融危機が意識され、流動性の高いドルの争奪戦が始まったのです。


もちろん、目先のドル・円の値動きはコロナ感染の状況次第ですが、足元の「最後の砦(とりで)」のような悪いドル買いは株安が収束しなければ続くように思えます。そこへ、再び「円売り」の可能性も加わりそうです。2月の「日本売り」の性格を持った円売りは非常に大きなインパクトを与えており、いずれ再開するとみている市場関係者は少なくありません。


そのきっかけとなるのが、やはり東京オリンピック・パラリンピック開催の行方でしょう。延期や中止なら数兆円規模の損失と試算されており、日本株安・円売りの要因になりそうです。さらに言えば、日経平均株価の13000円付近への下落が現時点で警戒されています。その水準になると日銀は上場投資信託(ETF)の評価損で債務超過に陥るためです。


日銀が債務超過に陥ると政府に支援を求めることになり、金融政策の独立性を確保できなくなって円が信認を失う、つまり円が売られると考えられています。もっとも、総裁人事をみても独立性は厳格とはいえず、債務超過となって政府に支援を仰いでも影響は軽微かもしれませんが。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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