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追い込まれたトランプ【フィスコ・コラム】

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新型コロナウイルスの蔓延は中国政府に故意の責任があれば相応の結果を招く——今年11月の米大統領選に向け、優位に戦えなくなったトランプ大統領のいら立ちが伝わってくるようなコメントです。なにせ、対立候補は高みの見物なのですから。


今年1月中旬に米中貿易協議は部分合意に達し、その時点でトランプ氏再選は決定的とみられていました。ところが、事態は一変。正体不明のウイルスが中国から東アジア、ヨーロッパ、そしてアメリカを襲います。トランプ氏は当初、「アメリカは大丈夫」と根拠のない説明を繰り返し、国民を安心させようとしますが、ニューヨークを中心に火の手が回り感染者や死者が急激に増えていきました。


一方、2月からスタートした予備選による民主党の指名候補争いは、3月のスーパー・チューズデーを経てバイデン元副大統領とサンダース上院議員の2人に絞られます。その後、ウイルス感染が拡大するなかでも複数の州で予備選は行われ、劣勢のサンダース氏は撤退を余儀なくされました。ただ、コロナがなければ、サンダース氏は諦めなかったでしょう。バイデン氏は大した選挙活動もせず、指名を手中に収めたと言えます。


2016年の民主党の候補者選びは、クリントン元国務長官とサンダース氏の2人の争いが最終段階までもつれ込み、党内に深い亀裂を残しました。サンダース支持者のなかには腹いせにトランプに投票する有権者もいたようです。しかし、今回は早い時点で候補者が一本化されたため、一部は棄権するかもしれませんが、4年前のような事態は避けられる見通しです。これもバイデン氏にとっては有利な点でしょう。
そうこうしている間、トランプ氏は10年以上にわたる強気相場の崩壊という、当人には信じがたい光景を目の当たりにします。感染被害が拡大するなか経済対策を打ち出すものの、不発に終わります。その後、市場のパニック的な動きをいったん収束させたのは、財源も不確かな2兆ドル規模の経済政策です。連邦準備制度理事会(FRB)の資金供給などの緊急措置も合わせてどうにか混乱を抑えています。


しかし、非常事態宣言や外出制限などのコロナの影響は、これから発表される経済指標に表れます。新規失業保険申請件数は5週間で2600万人超にのぼり、5月8日発表の雇用統計で失業率は2ケタ台とも予想されています。トランプ氏は経済の正常化に向けた指針を公表し、ネガティブな材料を封じるのに躍起です。こうして、コロナ禍におけるトランプ氏の対応の是非が大統領選の主要な争点になりました。


今後予想されるシナリオとして、経済再開後に感染者や死者が増加したら、メディアは「正常化の判断ミス」と騒ぎ立てるに違いありません。バイデン氏は野党の立場を利用し、トランプ氏の政策を批判するだけ、そして相手が自滅するのを待つだけです。本来なら有利であるはずの現職候補が追いつめられる大統領選は珍しいのではないでしょうか。コロナ禍が大統領選の行方を大きく変えたのは間違いありません。
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)
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