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米中どちらに軍配?WHO総会で習近平スピーチ、トランプ警告書簡(2)【中国問題グローバル研究所】

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【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、遠藤 誉所長の考察「米中どちらに軍配?WHO総会で習近平スピーチ、トランプ警告書簡(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

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コロナとの闘いにおいて「ウイルスに国境はない」として、コロナ発生前から掲げてきたこの「人類運命共同体」という理念がどれだけ素晴らしいかを、習近平は全会で宣伝してきた。コロナで苦しむ発展途上国に医療支援物資を送ったり医療チームを派遣したりして「習近平の偉大さ」と「人類運命共同体の正当性」を宣伝しまくってきたのである。

全人代開催に当たっても、実は中国内における習近平の立場は弱い。

1月24日付コラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>(※2)や2月10日のコラム<新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?>(※3)あるいは3月18日付けコラム<中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?>(※4)、特に5月2日付けコラム<全人代開幕日決定から何が見えるか?>(※5)で書いたように、習近平の中国国内における立場は非常に「分が悪い」のである。

だから中国政府に批判的な民主活動家の言論を封殺すべく、中国はつぎつぎに活動家を拘束している。人民の意見が怖いのだ。

そのため、WHOで習近平が際立った形でスピーチをしたことを、実は中国人民にも見せたい。「ほらね、私が言ってきた『人類運命共同体』という外交戦略は正しかったでしょ?私は偉大でしょ?」と人民に見せつけたいのである。

そして、もちろんのこと、5月14日付けコラム<感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか_モスクワ便り>(※6)に書いたように日本円で「1京(けい)円」を超えるコロナに関する損害賠償を世界8か国の関連団体から請求されているので、何としても国際世論を中国側に有利なように惹きつけておきたいのだ。

◆30日以内に改善しないと拠出金を停止しWHOを脱退すると示唆したトランプの書簡
トランプはWHO総会開催に際し、テドロス宛に書簡を出している。その骨子は

あなた(テドロス)とWHOによる度重なる失敗が、世界に極めて大きな代償を支払わせたことは明らかだ。
前進できる唯一の方法は、中国から独立した姿を示すことだ。
WHOとして今後30日以内に、実質的な改善に取り組まなければ、アメリカは資金拠出を恒久的に停止し、加盟を再検討する。
最後の「加盟を再検討する」は「脱退する」と言ったに等しい。

これはアメリカに有利に働くだろうか?

WHO参加国の多くを占める発展途上国は、「発展途上国を支援してくれる国」を応援するだろう。残念ながら、それは「人類運命共同体」を主張し、発展途上国を支援するために20億ドルを支出すると宣言した「中国」だということになる。

その意味で、トランプのこの「金による脅し作戦」は今後の世界覇権という意味で、賢明ではない。もっと戦略的でなければアメリカが損をする。

トランプが中国とWHOの責任を追及する主張は実に正しい。

1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>(※7)に書いたように悪いのは習近平の保身であり、エチオピア人であるテドロスの習近平への忖度だ(エチオピアへの最大投資国は中国)。

いま全人類は習近平とWHOが防ぎきれなかったコロナの災禍で苦しんでいる。

どれだけ罪深いことをしていることか。

死を以て償っても償いきれない重罪を二人は犯したのである。

トランプはここにだけに主張の焦点を当てれば、全人類はトランプに賛同し、トランプに拍手喝采を送るだろう。

しかし彼はそうしなかった。

WHOを習近平が掌握できる方向に動いてしまったのである。そのことが残念でならない。

4月19日付のコラム<トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」——アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>(※8)で書いたように、習近平の狙いは「国連およびその関連機関の乗っ取り」だ。

その習近平を喜ばせる行動に出るべきではなかっただろう。

◆WHOが組織する調査団に習近平は賛同
WHO総会は最終日の19日、コロナ感染症対応について、独立した検証作業の実施などをWHOに求める決議案を採択した。日本やEUなどが提出した。中国も共同提案に加わったが、アメリカは名を連ねていない。

習近平はあれだけオーストラリアが提案したコロナに関する独立調査団派遣には反対したのに、WHOが組織する調査団派遣には賛同した。

前述の5月15日付コラム<習近平、トランプにひれ伏したか?徴収した報復関税の返還命令>(※9)に書いたように、オーストラリアの提案はトランプと相談の上で成されたものであり、中国に対するコロナ損害賠償請求の線上にある。だから中国は報復としてオーストラリアからの牛肉の輸入を停止した。

しかしWHOが組織する調査団の特徴には二つある。

調査の目的は「再発のリスクを減らすため」である。
調査の目的は(中国が警戒する)責任追及は行わない。
この二つが決議案に盛り込まれていることに注目しなければならない。だから中国は賛成したのであり、アメリカは賛成しなかったのだ。

この肝心の部分を見落として、EUやロシアまでが賛成に回ったので、対中包囲網が形成されたと喜ぶのは適切ではない。

しかも調査は「感染収束後」となっている。せっかく冒頭スピーチで中国人民に良いところを見せた習近平としては、すぐに調査に入られるのでは「功績」が台無しになるし、また、感染の第二波が来るのを非常に警戒している中国としては、現在まだ感染が広がっている諸国から「ウイルスを持っている人」が入国するかもしれないのを防ぎたい思惑もあるだろう。

以上、長くなりすぎたので、台湾のWHO総会オブザーバー参加を許さなかったことに関しては、本日アメリカが発表した対中戦略方針と共に、別途考察したい。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

写真:picture alliance/アフロ

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