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覇権国が衰退する時(4):アメリカ(2)【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

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1971年8月15日、米ドルと金の交換が停止された。当時の大統領の名を取って「ニクソン・ショック」と呼ばれる、歴史的に著名な方針転換だ。これで米ドルは、金という実物資産からの拘束から解き放たれた「不換紙幣」となり、FRBが事実上無制限に米ドルを刷れるようになった。アメリカとしては、事実上の世界の基軸通貨である米ドルの発行量を、よりコントロールしやすくなったといえる。アメリカは、基軸通貨を世界で唯一供給できる担い手として、欧州や日本、OPEC加盟国の中央銀行に対し、米ドルをもってコントロールしたのである。

しかし、いくら世界をコントロールする「道具」として便利だからとはいえ、あまりにも米ドルを刷りすぎると、インフレが起きて価値が下がってしまう。そこで、アメリカ政府は大胆な戦略転換を図る。いわば「米国債本位制度」への移行である。具体的には、欧州や日本、石油輸出国機構加盟国の中央銀行に対して、「世界の金融システムの流動性を維持するため」だと説得し、アメリカ国債を積極的に購入するよう迫ったのである。すなわち、世界に溢れた米ドルの信用を買い支えさせたのである。これでアメリカは衰退しつつあった覇権を、再び回復することに成功した。こういったアメリカの戦略については、マイケル・ハドソンの「超帝国主義国家」に詳しい。

アメリカ産の穀物輸入に食料自給率を依存している国々、あるいは米ドル建ての債務を抱える国々を衛星国とし、各国の資本を手中に収めていった。こうして、ニクソン・ショック以後、米ドルこそが世界の基軸通貨であるとの存在感を増していった。「債務が大きすぎて、破綻させられない国」という国際社会の共通認識を背景に、アメリカは再びのし上がっていき、戦略的に「世界的な債務国」となった。

アメリカ連邦政府の公的債務残高は22兆ドルを突破し、世界各国が米国債の回収を半ば諦めている。アメリカが破綻するときは、世界が破綻するときと同視するしかないからだ。もはやなりふり構わぬ「捨て身」の戦略が功を奏して、アメリカはひとり勝ちの「現代的帝国主義」を確立し、国際社会で君臨している。

もし、衛星国の中央銀行が、米財務省に再融資することをやめたなら、その国に対して有形無形の制裁的措置を執行して、アメリカの想定する「帝国的秩序」を維持しようと試みる。特に防衛において、アメリカの軍事力に依存せざるをえない日本に対しては、貿易面などで様々な圧力をかけてきた。つまり、経済大国である日本に対して「外圧」をかけることのできる世界唯一の国として、アメリカはその影響力を大いに行使したのである。他国には積極的には干渉するが、アメリカ自身は他国に口出しさせない、ダブルスタンダード(自国に都合のいい言動)を平然と実行する力を持っているのである。

さらには、国際収支を赤字にすることも厭わず、諸外国から資源からサービスまでさまざまなものを購入するアメリカは、ドル債権国に対して「理論と統計」でドル保有の正当性を説いた。ドル債務国には、自らに従順なエリートを通じてドル建て債務を強要する。そうして各国の中央銀行から資金を吸い上げ、衛星国が購入する米国債を介して、さらなる国富を拡大させていく。そうした「帝国主義サイクル」を何度も回すことで、覇権を握り続けてきた。このように、過去、覇権国が衰退した構図を克服し、覇権を掌握し続けているのが今のアメリカである。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

※本原稿は、「覇権国が衰退する時(3):アメリカ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」の続きとなる。

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