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窪田製薬HD Research Memo(1):VAP-1阻害剤の共同研究開始、ウェアラブル近視デバイスの開発加速を発表

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■要約

窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米クボタビジョン・インクを子会社に持つ持株会社である。現在は、加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者向けの遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」と、スターガルト病※及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の開発を主に進めている。また、2019年3月にNASA(米航空宇宙局)と、宇宙飛行士向けの超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT※(以下、SS-OCT)」に関する開発受託契約を締結し、2020年2月にフェーズ1の開発が終了している。

※スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。


※OCT(Optical Coherence Tomography)は赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のことで、緑内障や加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者の診断用として使用される。


1. 開発パイプラインの進捗状況
主要開発パイプラインのうち、スターガルト病治療薬候補の「エミクススタト塩酸塩」については、第3相臨床試験の被験者登録が完了したことを2020年5月1日付で発表している。スターガルト病とは遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行を抑える治療薬はまだなく、欧米ではオーファンドラッグ指定を受けている。今後2年間の観察期間を経て有効性が確認されれば、販売承認申請を行うとともに販売パートナー契約の締結に向けた交渉を開始する予定にしている。市場規模は2027年に1,600億円規模になるという予測もあり、2年後の臨床試験結果の発表が注目される。また、「PBOS」については、製薬企業またはデバイスメーカーと販売パートナー交渉を進めており、相手先が確定次第、量産型試作機を仕上げて510(k)申請※を目指す方針だ。NASA向けの「SS-OCT」開発プロジェクトについても、フェーズ1の評価が良好であったことから、NASAの予算が付き次第、第2フェーズに進むものと予想される。

※510(k)申請:市販前届出制度。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることを確認できるデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。


2. 新たな開発分野
直近では新たな開発分野として2件の取り組みを発表している。1つ目は、皮膚科領域で世界大手の製薬企業であるLEO Pharma A/S(デンマーク)とVAP-1阻害剤に関する共同研究契約を締結したことだ。VAP-1阻害剤は、アトピー性皮膚炎や変形性関節症など自己免疫疾患の治療薬として多くの製薬企業が開発を進めているが、まだ上市した製品はない。同社は副作用が少なく少量でVAP-1を阻害する効果の高い低分子化合物を基礎研究の過程で数十種類発見しており、今回、LEO Pharmaの研究プラットフォームを用いて更なるスクリーニングを実施し、化合物の絞り込みと開発の可能性を探っていくことになる。また、皮膚科領域以外での開発パートナーの探索も並行して進めていく予定だ。2つ目は、近視の進行を抑制または改善する効果が期待されるウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」の開発を加速していくというもので、2020年後半に実証試験を終え、2020年内のプロトタイプ完成を目標としている。近視の進行を抑制または改善するデバイスの開発に成功すれば画期的であり、今後の動向が注目される。

3. 業績動向
2020年12月期第1四半期の連結業績は、事業収益の計上がなく、営業損失で741百万円(前年同期は750百万円の損失)とほぼ会社計画通りに進捗したが、通期見通しに関しては研究開発費の増額により、営業損失を期初計画の2,500百万円から3,000百万円(前期は3,322百万円の損失)に修正した。早期研究段階の医薬品、医療機器プロジェクトへの研究開発費を増額したほか、スターガルト病を対象とする臨床試験において新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当初予定よりも多くの被験者登録を実施したことが要因となっている。なお、2020年3月末の手元キャッシュは約76億円となっており、当面の事業活動資金は確保している。

■Key Points
・スターガルト病を対象とした第3相臨床試験は被験者登録が完了、2年後に試験結果の発表を予定
・革新的な遠隔診断ソリューションとなる「PBOS」は販売パートナーの選定に向けた交渉を継続中
・2020年12月期は研究開発費を当初計画より増額し、営業損失で30億円と前期並みの損失を見込む

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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