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コロナ後のオフィス需要【フィスコ・コラム】

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新型コロナウイルスによるテレワークへの切り替えは最大の「働き方改革」。日本人の暮らし方を変える大きなきっかけになるかもしれません。一方で、今後の都心部のオフィス需要が減退すれば、不動産市場にも重大な変化をもたらす可能性が指摘されます。


日本生産性本部が5月11-13日に1000人あまりを対象に実施したアンケート調査によると、6割強がコロナ終息後もテレワークを継続したいと答えたことがわかりました。仕事の効率が上がったと答えた人は全体の3割程度にとどまったものの、テレワーク自体にはおおむね満足が得られているもようです。こうした実体験は、今後の本格導入に大きく寄与するとみられます。


というのも、日本人の平均的な通勤時間は男性の場合、平日で1時間26分(片道43分)、女性は1時間7分(片道33.5分)。外出の準備を含めプラス30-60分と考えれば、1日24時間のうち2時間半から3時間は通勤に費やされます。やはり通勤の負担が軽減されるのとそうでないのとでは、生き方に違いが出てくると思われます。


もちろん、メリット、デメリットの両面があり、また現時点で実現できる業態、できない業態があるのも事実です。ただ、従業員だけでなく、企業側にとって固定費であるオフィス賃料の削減は大きなメリットでしょう。実際、今回のコロナ禍を受け賃貸契約を打ち切った企業も出始めています。そうした動きが続けば、オフィス需要にも変化が生じてきます。


東京のオフィス需要は、2018年にピークを迎えた後、緩やかに減退する傾向にありました。ある調査によると、23区内の18年末の空室率は1.9%と、2000年以来18年ぶりに1%台に低下しています。しかし、19年は2.0%に小幅上昇し、2020年は1月時点で2.3%と予想されていました。コロナ禍によるテレワーク導入で、需要減の加速は避けられないでしょう。


日本総研は、仮に全就業者の1割がテレワークを続けたとすると、オフィスの空室率は15%近くに上昇すると試算しています。そして、それによりオフィス賃料は2割程度下落し、リーマンショック後の水準まで落ち込むと予想します。借り手が減少に向かい空室率が上昇すれば、オフィスビル間で競争の激化も見込まれるため、さらに賃料を下げなければなりません。


別の調査では、東京都内で特に影響を受けそうなのは千代田、中央、港、新宿、渋谷の5区とみられています。この5区はコロナ禍でテレワークを実施した企業が集中しているためです。賃貸料も高いエリアであり、需給の変化で賃料が値崩れすれば、他の地域への影響も避けられないでしょう。不動産業界にとっては厳しい状況になるかもしれません。


とはいえ、企業は固定費の節減でその分を雇用に回せるかもしれません。それにより消費の増大につながる可能性もあり、日本経済にとっても悪い影響ばかりではないでしょう。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)

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