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日経平均は7日ぶり反落、海外勢の「買い戻し余地」と「次の一手」を考察

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 日経平均は7日ぶり反落。147.33円安の23030.77円(出来高概算8億1000万株)で前場の取引を終えている。

 週明け8日の米株式市場でNYダウは6日続伸し、461ドル高となった。前週末に発表された5月雇用統計が予想外に改善したうえ、全米経済への貢献度が高く、新型コロナウイルスの感染被害の大きかったニューヨーク市が8日から第1段階の活動を再開したため、景気回復への期待が高まった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も続伸し、過去最高値を更新。S&P500指数は年初来でプラスとなった。ただ、米長期金利の低下とともに為替相場が1ドル=108円台と円高方向に振れ、本日の日経平均は42円安からスタート。前日に節目の23000円台を回復したことで、高値警戒感から朝方には22933.14円(244.96円安)まで下落する場面もあったが、売りが一巡すると下げ渋る展開となった。

 個別では、三菱UFJ<8306>などのメガバンク株やトヨタ自<7203>などの自動車株、東エレク<8035>などの半導体関連株が軟調。トヨタ自は高級車ブランド「レクサス」の新型車発表を延期すると報じられている。アドバンテス<6857>や日産自<7201>は5%超の下落となった。ソニー<6758>は小安い。また、朝日放送HD<9405>などが東証1部下落率上位に顔を出した。一方、日経平均への寄与が大きいソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>が揃って堅調。任天堂<7974>やキーエンス<6861>は小高い。LIXILビバ<3564>の買収報道が伝わったアークランド<9842>や5月の仲介契約件数が急回復したオープンハウス<3288>は大きく上昇し、ワイヤレスG<9419>はストップ高水準で前場を折り返した。

 セクターでは、鉄鋼、海運業、非鉄金属などが下落率上位。半面、情報・通信業、電気・ガス業、食料品などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は30%となっている。

 日経平均は前日、およそ3カ月半ぶりに節目の23000円を回復した。本日は為替相場の円安一服などをきっかけに利益確定売り優勢で、朝方には23000円を割り込む場面も見られた。ただ、日足チャートで22900円手前に位置する5日移動平均線を割り込むことはなく、前引けでは23000円台をキープ。前日までの6営業日でおよそ1300円上昇した後の反動としては、むしろ底堅い展開と言えるだろう。売買代金上位や業種別騰落率を見ると、経済再開期待や金利上昇を手掛かりに戻りを試していたシクリカルバリュー株(景気敏感系の割安株)を中心に反落。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりで、前日ほどには膨らんでいない。

 新興市場ではマザーズ指数が3日続伸。前週3日の取引時間中に付けた高値(1022.39pt)には届いていないが、前週来の金利上昇局面でも押し目らしい押し目はなく、個人投資家の新興株物色意欲は根強いようだ。マザーズ指数は日柄調整しつつ、循環的な物色が続くとみられる。

 前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.44%の下落で、後場に日銀による上場投資信託(ETF)買い入れが実施されるかは見通せない。しかし、アジア株式市場では香港ハンセン指数などが堅調で、時間外取引のNYダウ先物も足元でプラス転換しているもよう。後場の日経平均は改めて下値を試すような動きとはならないだろう。

 さて、前週末の当欄で一段の買い戻しの広がりと日経平均の23000円台回復について予測したが、米雇用の急回復を背景に週明け早々に達成した格好だ。23000円手前で日経平均の下落を見込んだ個人投資家による日経レバETF<1570>や日経ダブルイン<1357>の取引が見られたが、早くも修正を迫られたとみられる。

 23000円といえばコロナショック前の2月下旬以前の水準であり、「ここまでくれば海外投資家の買い戻し余地はさすがに乏しくなる」との見方が投資家や各種メディアにあり、上げ一服の論拠となっているように見受けられる。しかし、重ねて指摘しているとおり海外投資家の買い戻し余地はなお残るとみておいた方がいいだろう。

 週次の投資主体別売買動向で、日経平均の急落が始まった2月24日週から直近データが開示されている5月25日週までの外国人投資家の売買動向を見てみたい。TOPIX先物は合計で1兆2000億円程度の売り越し、日経平均先物は1兆7000億円超の売り越しとなっている。

 さらに、(1)2月24日週から日経平均が安値を付けた3月16日週、(2)その後の戻り局面である3月23日週から5月11日週、(3)買い戻しが強まった5月18日週と5月25日週、の3期間に分けて見てみる。TOPIX先物については、1兆3000億円強の売り越し→4000億円強の売り越し→6000億円強の買い越しで推移。日経平均先物は1兆4000億円強の売り越し→4000億円強の売り越し→1000億円強の買い越しだ。「そろそろ買い戻し一服」論は(2)の期間に買い戻しが進んだとの認識が背景にあるように見受けられるが、実際に海外勢が本格的な買い戻しに動きだしたのはごく最近であることが分かる。なお、現物株は目立った買い越し局面なく、3期間合計で3兆5000億円以上の売り越しだ。

 また、「二番底シナリオ」に賭けて敗れた機関投資家が次にどう動くのかも考えてみたい。買い戻すだけなら負けて終了だ。足元で「バブルでも乗らざるを得ない」との声が増えてきたことが証券各社のレポートや報道でも分かる。いたずらに「バブル」をあおりたくはないが、慎重派の投資家は思わぬ「一段の株高リスク」も念頭に置いておく必要があることを指摘しておきたい。
(小林大純)
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