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日経平均は反落、機関投資家らの思惑と物色の向かう先は?

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 日経平均は反落。167.71円安の22414.50円(出来高概算5億7000万株)で前場の取引を終えている。

 16日の米株式市場でNYダウは大幅に3日続伸し、526ドル高となった。5月小売売上高が過去最大の伸びを記録したうえ、トランプ政権が1兆ドル規模のインフラ支出を検討していると報じられ、好感した買いが入った。各州で新型コロナウイルス感染者が増加していることが伝わると上げ幅を縮める場面もあったが、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言でゼロ金利政策を当面維持する方針を繰り返し、引けにかけて再び上昇が加速した。一方、日経平均は前日に米株高を見越して1000円超上昇していたため、本日は利益確定売り優勢で65円安からスタート。朝方に一時22318.07円(264.14円安)まで下落し、その後マイナス圏でもみ合う展開となった。

 個別では、トヨタ自<7203>や武田薬<4502>が軟調で、ファーストリテ<9983>は小安い。JAL<9201>などはやや下げが目立つ。米炭素繊維事業の生産能力削減が報じられた東レ<3402>も、航空機向け需要の低迷が嫌気されて売られた。また、CACHD<4725>などが東証1部下落率上位に顔を出した。一方、ソフトバンクG<9984>が売買代金トップで4%近い上昇。保有する米TモバイルUS株の一部を来週初に売却すると報じられている。その他売買代金上位では任天堂<7974>、レーザーテック<6920>、ソニー<6758>などが堅調で、ZHD<4689>は5%超の上昇。中小型株では電子契約サービスに期待のかかるGMOクラ<3788>が賑い、テモナ<3985>は連日でストップ高を付けた。

 セクターでは、空運業、繊維製品、鉄鋼などが下落率上位。半面、情報・通信業、精密機器、その他製品などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の59%、対して値上がり銘柄は37%となっている。

 本日の日経平均は利益確定売りが先行し、3ケタの下落で前場を折り返した。しかし、前日に1000円超上昇した後の反動としてはむしろ底堅いと言えるだろう。日足チャート上では、22200円台後半に位置する5日移動平均線を終始上回って推移している。前日に時間外取引でのNYダウ先物の動向から想定されていたとはいえ、結果的に米国株が大きく上昇して返ってきたため、投資家心理の目立った悪化は見られない。

 売買代金上位を見ると、前日上げの目立ったシクリカルバリュー株(景気敏感系の割安株)が利益確定売りに押される一方、コロナ禍でも堅調な業績が期待されるハイテク株が買われている。株式相場全体の調整局面に見られる動きだ。業種別騰落率もおおむね同様で、ほかに内需・ディフェンシブセクターに前日のリバーサル(株価の反転上昇)的な動きがある。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりと前日並みだが、1日を通じてだとやや低調となりそうか。新興市場ではマザーズ指数が続伸し、2%超の上昇で前場を折り返している。ハイテク株高に沿った動きだろう。

 前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.498%の下落となっており、おそらく日銀による上場投資信託(ETF)買い入れは実施されないだろう。アジア株式市場では中国・上海総合指数や香港ハンセン指数が小安い。日経平均は前場終盤にかけてややこう着感を強めているが、米国の新型コロナ感染者数推移や経済・金融政策に市場の注目が集まっているため、次なる材料待ちといったところか。米国発のニュースを睨みながらの相場展開が続きそうだ。

 さて、当欄では前日も日経平均の調整は21000円台までにとどまるとの予想を示したが、結果的に急反発を見せたことで一段安への懸念は和らいだことだろう。前日の先物手口を見ると、メリルリンチ日本証券が日経平均先物を大きく売り越す一方、モルガン・スタンレーMUFG証券やゴールドマン・サックス証券といったその他の主要外資系証券が軒並みTOPIX先物を買い越し、株式相場全体を押し上げたとみられる。日経レバETF<1570>や日経ダブルイン<1357>は一段と下げ方向に傾く余地は乏しいと指摘したが、やはり野村證券も日経平均先物の買い越しに転じてきた。

 メリル(バンク・オブ・アメリカ)が実施した6月のグローバルファンドマネジャー調査の結果が伝わっており、投資家の景気見通しは急速に改善したものの、「株は買われすぎ」と答えた投資家は調査を始めた1998年以降で最高だったという。上述した先物手口からメリル筋はややベア(弱気)に傾いている可能性もあるが、おそらく多くの機関投資家が同様の考えだろう。現在の株価水準は足元の経済情勢から説明可能な水準ではない。とはいえ、FRBなど主要中央銀行による大規模な金融緩和や各国政府の積極的な景気刺激策を背景に、大半の機関投資家が先の上昇相場で売り負けた。その負けを取り戻すべく戦略転換した機関投資家は多い。

 実体経済の先行きに今ひとつ自信が持てないなかで買いの手掛かりを見出そうとしており、それがコロナ後のニューノーマル(新常態)におけるハイテク株の伸長を見込む向きだったり、ディープバリュー(超割安)株の水準訂正に期待する向きだったりするのだろう。前週末の当欄で、株式相場全体の調整局面に年初来高値を取ってきた任天堂を「過剰流動性×ニューノーマル(新常態)」下での中核銘柄候補として挙げたが、やはりその後も連日の高値更新となっている。マザースではオンライン教材のすららネット<3998>などが同様の動きを見せており、個人投資家の間でもニューノーマルへの意識の強さが窺える。
(小林大純)
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