注目の米大統領選、現状の各世論調査では「バイデン候補がリード」との数字が出ています。しかし、この時点での支持率は参考程度にしかなりません。この5か月でトランプ陣営が繰り出してくる巻き返し戦略について解説します。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年7月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
トランプ敗色濃厚とは「言えない」?
当メルマガでは前回、アメリカ大統領選挙の基本的な仕組みをご説明しました。まとめると以下のとおりです。
・アメリカ大統領選挙は州ごとの選挙人の獲得数(総選挙人数は538人で、270人獲得で過半数)を争う選挙であること。また州ごとの選挙人は、ウイナーテイクオール(総取り方式)である
・選挙をする前から共和党が絶対に勝つ州(レッドステート)と民主党が絶対に勝つ州(ブルーステート)が決まっており、現状でのそれぞれの見積もりではレッドステート約150人、ブルーステート約220人である
・スイングステートという共和党が勝つか民主党が勝つかわからない州がある。またラスト・ベルトと呼ばれる五大湖周辺の重工業や製造業が集まっている地域がある。この2つの地域での勝敗が大統領選挙の勝敗を決める
現状の各マスコミの調査では総合支持率、スイングステートやラスト・ベルトでの支持率、いずれもバイデン候補がリードしているという数字が出ている
このままだとトランプ大統領敗色濃厚という気がしますが、前回のメルマガでも記載したとおり、この時点での支持率は参考程度にしかなりません。
事実、2016年の大統領選挙では終始ヒラリーが支持率でリードしていましたが、結局トランプが勝利しました(選挙人獲得数でヒラリー227人に対して、トランプ304人でした。逆に個人の得票数ではヒラリーが300万票程度上回っていました)。
またトランプ陣営も、巻き返しの戦略を持っています。今回は、トランプ陣営がどんな巻き返し策をとってくるのかをご説明します。
反中感情の高まりを利用する?
コロナの件で、アメリカ国民の反中感情が高まっています。
5月時点の調査ですが、PEW RESEARCH CENTERと調査機関が行った調査では66%のアメリカ人が中国に対して悪い感情(negative view)を持っているという結果が出ています。
2005年から2012年まで「negative view」の割合はおおむね30%台だったのですが、2013年からは50%台となり、2019〜20年には60%を超えたという推移になっています。
なお、2019年12月調査で日本人の「中国に親しみを感じない」という割合は74.9%で、最悪だった2016年の83.2%よりは改善したものの、かなり高い水準にあります。
日本に比べるとアメリカは低いじゃないかと思われるかもしれませんが、日中は地理的に近いので、実際の圧力を感じる差ではないかと思います(アメリカと中国の距離は遠く、日本のように国境線で揉めるということはないので、一部のアメリカ人は無関心という人はいます)。
日本に比べれば低いですが、アメリカでもかなり反中感情が高まっているわけです。
もちろんコロナの件が大きな原因ですが、中国シフトがアメリカ人の雇用を奪っているという積み重なった悪感情もあります。
そんな中で、バイデンはかなり中国に近い人物と見られています。