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それでも崩れない株式市場を捉え直す

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[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;22476.74;-52.55
TOPIX;1547.37;-9.87

[後場の投資戦略]

 本日の日経平均は小安い水準でもみ合う場面が多くなっている。前日の米株式市場の動向では、ハイテク株高こそ追い風となるものの、やはり新型コロナ再拡大への懸念は根強い。国内でも9日、東京都の新規感染者数が224人と過去最多になった。また、8日に続き上場投資信託(ETF)の分配金捻出に絡んだ売りが出るとみられていることも株式相場の重しとなっているだろう。日経平均の日足チャートを見ると、22500円前後に5日移動平均線と25日移動平均線が収れんし、こう着感を一段と強めてきた印象。

 売買代金上位では、米ハイテク株高の流れを引き継いで半導体関連を中心とした値がさのグロース(成長)株が堅調。6月工作機械受注の回復を受けてファナック<6954>なども買われている。反面、自動車株や金融株といった大型のバリュー(割安)株は軟調。NYダウの下落とともに米長期金利が低下し、グロース株優位、バリュー株劣位の構図を支えているとみられる。

 新興市場ではマザーズ指数が反発。相対的に堅調な値動きを見せており、前引け時点では1015pt近辺に位置する25日移動平均線をやや上回っている。引き続き新興グロース株への追い風を受け、この水準での戻り待ちの売りを押し返せるか注視したい。なお、本日ジャスダックへ新規上場したSpeee<4499>は公開価格を8割弱上回る初値を付けた。

 アジア株式市場では中国・上海総合指数や香港ハンセン指数が軟調。また、本日同様にETFによる売り観測があった8日は日経平均が後場から軟化した。前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.63%の下落となっており、日銀によるETF買いが実施される公算は大きいものの、後場の日経平均は売りに押される場面が出てくることも想定しておきたい。

 さて、前日の先物手口を見るとモルガン・スタンレーMUFG証券によるTOPIX先物の売り越しが目立った。他の外資系証券の動向を見ても、海外勢が足元買い戻しに動いている感はない。日経ダブルイン<1357>の純資産総額も高水準を維持しているが、それでも株式相場は崩れない。当欄で従前から描いてきた「ETFによる売りをこなした後、買い戻し主導での意外高」というシナリオが現実味を帯びてきたように思える。

 米長期金利は経済指標が急回復しても伸び悩む。もちろんコロナ禍への懸念もあるだろうが、政府債務が記録的な水準に膨らむなかで金利を低水準に抑え込む「強烈な金融緩和」の効果が大きいことを再確認すべきではないだろうか。債券市場に比べれば株式市場などは規模が小さい。あふれ出したマネーは「買える資産」に向かい、安全資産あるいはインフレヘッジ資産に位置付けられる金相場は高値更新が続いている。コロナ禍でも堅調な業績が期待でき、低金利の恩恵を受けるハイテク株も同様の文脈で捉えられるだろう。

 このところ当欄の内容に対し、「確かに思ったより相場が崩れない」との声が増えてきた。危機下での金融フレームワーク(枠組み)が市場にどのような影響をもたらしているのか、改めて捉え直す必要があるだろう。
(小林大純)
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