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コロナ選挙の格下げリスク【フィスコ・コラム】

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次期総選挙では、消費税論議が大きな争点になるかもしれません。新型コロナウイルスの打撃で成長が大幅に鈍化するなか、税率引き下げを主張する動きが与野党で活発化。ただ、歳入減による国債の格付けへの影響も懸念されます。


次期衆院選は2021年10月までに実施される予定で、安倍晋三首相が今年秋ごろに任期を1年残して衆院解散に踏み切る可能性も浮上。新型コロナ対応の拙さや前法相夫妻の大規模買収事件、それに関連した検察官の定年延長問題などを受け、内閣支持率は過去最低水準に落ち込んでいます。だからといって、安倍首相は来年9月の自民党総裁としての任期切れを座して待つことはないでしょう。


7月5日に実施された東京都知事選は、政策論戦を経ないまま、現職候補の強みを最大限に生かした小池百合子知事が前回から得票数を大幅に伸ばして再選を決めました。同時に野党は予想どおり足並みが乱れ、小池氏圧勝をアシストした格好です。与党サイドからみれば、野党の結束が困難なこのタイミングなら現在よりも議席数を減らすにせよ、過半数は維持できる、とみるはずです。


野党結束の最大の障害が消費税論議です。5%への引き下げを主張する国民民主党の玉木雄一郎代表は7月7日のテレビ番組で、野党は消費税減税で共同歩調を取るべきと述べています。それなら消費税撤廃を持論とするれいわ新選組もその輪に加わっても不自然ではありません。問題は立憲民主党の頑なな姿勢です。現在の増税路線に舵を切った旧民主党政権時代にこだわり、「ブレた」と批判されるのが怖いのでしょうか。


そうこうしている間に安倍政権が消費税率引き下げを打ち出したら、その時点で野党は存在意義を失い万事休す、となります。安倍首相は昨年10月の増税前、「リーマン級の危機が発生しない限り実施する」と繰り返し強調していました。それから半年も経たずにリーマンをはるかに超える非常事態となったのですから、現在なら方針転換も正当化されます。与党には有利ではありませんが、決して不利でもありません。


ところで、米格付け大手のS&Pは6月9日、今年度2次補正予算の成立を受け、日本国債の格付け見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げています。新型コロナに対応した経済対策で赤字国債の発行が増え、財政健全化が後退するというのがその理由です。回復の遅れでデフレはむしろ進む方向で、財政状況がより悪化した場合は格下げもありうるとしています。


総選挙を経て消費税が引き下げられれば財政の立て直しはさらに遠のくため、格下げは非現実的とも言い切れません。しかし、このコロナ危機下で財政悪化はどこの国も同じです。格下げを免れなかったとしても、増税路線を一度断ち切り成長につなげるのも一案かもしれません。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)
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