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明豊ファシリ Research Memo(7):2021年3月期業績は、経済活動の低迷を前提とした保守的な計画

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■今後の見通し

1. 2021年3月期の業績見通し
明豊ファシリティワークス<1717>の2021年3月期の業績は、売上高が前期比9.4%減の3,945百万円、営業利益が同31.8%減の616百万円、経常利益が同32.0%減の616百万円、当期純利益が同35.1%減の415百万円と減収減益を見込んでいる。ウィズ・コロナの環境の中で、現時点で進行中のプロジェクトについてはほぼ平常どおり稼働しており、また、前期終盤の受注状況が比較的順調であったことから、平時であれば増収増益となる計画であったが、新型コロナウイルス収束の長期化と年度内に予想される感染拡大の第2波に伴う経済活動の低迷を想定し、今後の新規受注案件の減少、プロジェクトの中断、中止リスクを踏まえた保守的な計画となっている。

こうした市場環境下において、同社はポストコロナを見据えた投資を予定している。具体的には、2020年夏に本社近隣に開設していたオフィスを本社に移転統合する予定となっているほか、システム開発費用並びに人員増に伴う採用費や人件費の増加を見込んでいる。ただ、これら費用については業務効率の改善効果やその他経費の削減などによって吸収できる見通しとなっており、今後の受注状況次第で会社計画を上回ることも十分考えられる。


ポストコロナを見据えた成長基盤の構築に取り組む

2. 今後の事業方針について
同社は2021年3月期に取り組むべき事業方針として、以下の3点を挙げている。

(1) 事業継続
コロナ対応の長期化と年度内の感染拡大第2波に備え、事業を継続していくための体制強化を進めていく。従来からの基本方針でもあった、無借金、自己資金力重視の経営を継続していくほか、完全テレワーク並びにペーパーレスを維持継続し、更なる進化に取り組んでいく。

また、営業活動においては、高い専門性を持った技術者による付加価値の高いサービスを発注者に提供し、同社の強みが発揮できる得意分野(公共、学校、鉄道、大規模開発プロジェクト等)に注力していくほか、世界的なサプライチェーンの見直しで製造業の国内回帰の動きが出始めるなか、工場新設案件の取込みも進めていく。2020年5月時点で進行中のプロジェクトのうち、約52%は公共・学校・医療・鉄道分野で占められている。これら分野については、景気変動の影響は受けにくく、今後も安定した収益基盤として同社の業績に寄与するものと予想される。公共分野の案件については、2021年3月期第1四半期で前年同期と同じく4件を受注している。

なお、2020年4月~5月の緊急事態宣言発令中のプロジェクト実践体制としては、プロジェクトの会議をリモート(テレワーク)で運営し、また、顧客側にそうした環境が整備されていなければ、必要に応じてIT機器やシステムを貸与し、リモート環境を構築してきた。さらに大規模プロジェクトの場合は、原則1プロジェクト2チーム体制とし、感染者が出た場合でもプロジェクトを継続できる体制を構築するなどで対応している。こうした取り組みにより、現在進行中のプロジェクトについてはほぼ予定どおりに進捗、社員の稼働率も前期とほぼ同様、高水準の状況が続いている。同社では自社開発により、個々の社員のアクティビティを勤務場所に依存せず、時間当たりで管理するシステム(マンアワーシステム)を既に構築していたことが、テレワーク体制下でも問題なく業務を継続できている要因となっており、強みともなっている。

(2) ポストコロナに向けた成長力の蓄積
ポストコロナで更なる成長を目指すため、同社は発注者への更なる価値の提供に注力していく。具体的には、コスト、スピード、品質などの面で顧客の要求を上回る価値の提供を図ること、また、発注者側に立つ高いPM力やシナリオ構築、リスク分析などでの価値提供に取り組み、更なる顧客の信頼を獲得していくほか、ホームページからの発信力を高めることで、新たな受注機会の獲得にも取り組んでいく。

また、新たな取り組みとして2020年4月より組織体制を一新した。具体的には、経営トップと各プロジェクトのチームリーダーが直接、コミュニケーションを取れるようにした。従来までは、チームリーダーをさらに束ねるブロック長と経営トップがプロジェクトの進捗状況などについて報告していたが、今後は比較的規模の大きいプロジェクトについてはチームリーダーと直接コミュニケーションを取ることで、スピード経営を実現していくほか、プロ集団におけるリーダーを早期育成することによって、組織力の更なる強化につなげていくことが狙いとなっている。

(3) ポストコロナに適応したCMの提供
ポストコロナでは、長期的なCM(発注者支援事業)の価値向上に取り組む好機と同社では捉えており、いかなる変化にも対応し、「透明性を維持するCMだからこそ提供できる価値」の一層の向上に取り組んでいく。具体的には、建築プロジェクトに関するすべての情報をデータベース化し、AI活用も含めて実践から継続的に学習するシステムを社内で開発し、データ活用とCMの融合を図ることで、サービス品質の更なる向上と競合他社との差別化を図っていく。

同社が開発したシステムとしては前述したマンアワーシステムのほか、必要な情報をデータベース化して独自の分析によって可視化するツール、CREM事業で活用する多拠点施設新築・改修プロジェクトの一元管理と維持・保全システム、AIを活用したリスク判定や提案書解析、建設コスト概算モデル構築システム、RPAによる定型業務の自動化ツールなど様々なシステムがあり、こうしたシステムを活用して高品質なサービスを高い生産性によって実現可能としている。更にBIMの活用にも積極的に取り組んでいる。これらのシステムの活用によって、建築データを発注者側で活用できるようにし、発注者主導の建設プロジェクトを同社が支援している。経営のデジタル化がここ1~2年注目されているが、同社はデジタル経営という点においても、業界の中で先駆的な企業と位置付けられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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