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グローセル Research Memo(8):「STREAL」は今後の収益源の1つとすることを目指す(1)

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■中長期成長戦略

4. 新商材「STREAL」事業の展開
(1) 「STREAL」の特長
「STREAL」はグローセル<9995>が日立製作所から製造・販売権を取得した半導体ひずみセンサーの商品ブランドだ。「STREAL」は1)超小型、2)高精度、3)常時計測、という3つの特長を有している。

サイズは2.5mm角で、この中にセンサー素子、制御回路、アンプ回路、A/Dコンバーターが集積されている。現状、これと同様の精度を持つものは大型辞書や百科事典並みのサイズがあり、既存製品との差は歴然としている。性能的には、例えば1kmのレールが1mm伸縮するひずみ量を計測できる超高精度を実現しており、物理変化に応じたモジュール形状を使うことで、加重、圧力、トルク、張力、せん断力、低周波振動など幅広い物理的変化の計測が可能となっている。常時計測という特長は低消費電力という特性によって実現されている。常時計測はセンサーに期待される役割を考えれば極めて重要な要素だが、現実的には電源供給がネックとなるケースも多い。「STREAL」はその課題を克服している。

こうした高機能が評価され、日本政府が主宰する第7回「ものづくり日本大賞」(2018年1月15日発表)において内閣総理大臣賞を受賞した。また、(株)産業タイムズ社主催の「半導体・オブ・ザ・イヤー2019」では半導体デバイス部門で優秀賞を受賞している。さらに国内で最も歴史のある学会の1つである日本機械学会の最高位賞である「日本機械学会賞(2019年度)」にも選ばれている。この賞には同社を含めて5社(機関)が選ばれたが、同社以外は、クボタ<6326>(自動運転アシスト機能付きコンバインの開発)、日産自動車(アクティブトルクロッドの開発)、トヨタ自動車<7203>(超高塗着エアレス塗装技術)、名古屋大学及び(株)ベテル(3次元熱拡散率測定に基づく非接触・非破壊繊維配向評価システムの開発)となっており、日本のそうそうたるメーカーや大学に伍して同社が選ばれたことは注目に値する。

(2) 「STREAL」の事業化の進捗状況
「STREAL」の事業化に当たって同社は、これまでと少し異なる戦略を採用している。ポイントは2つで、1つは同社がファブレスメーカーとして、メーカー機能を果たすということ。もう1つは販売方法(あるいは製品形態)において、センサーを半導体チップとして販売するのではなく、モジュール化、コンポーネント化して付加価値を高めて販売する点だ。最終的にはソリューション提案(一例としては、半導体センサーというモノを売るのではなく、それを利用した監視サービスの提供などが想定できる)を目指している。

同社は「STREAL」を2018年2月に発表し、同年4月にセンサーモジュールとして初出荷を果たした。最初の用途は廃棄物処理装置向けで、“材料投入⇒醗酵検知⇒たい肥排出⇒材料投入”のサイクルを自動化することに貢献している。この用途は同社自身による開発ではなく、ユーザーからの打診から生まれたものだが、「STREAL」のポテンシャルの高さを暗示する好例と言えるだろう。

現在までに実用化されているのは、畜産用タンクでの応用と高級自転車のペダル部分だけだが、今後利用される可能性が高い例としては以下のようなものがある。

a) トンネル、橋梁、鉄道車両の台車などでの劣化検査:同モジュールを埋め込むことで、目視や打音ではなく外部から電気信号として検査が可能になる。

b) 各種ロボットのアーム部分に組み込むことで、物をつかんだ時の反応を即座に信号として取り出せるので、よりスムーズな動きが可能になる。

上記の実例として、FAロボット向け1軸トルクセンサーの開発を発表した。これは、ロボットアームの関節部に加わるトルクを高精度で検出し、高度なロボット制御や自動化に貢献するものだ。他軸感度を0.5%以下まで低減し、計測対象以外のトルクや軸力の影響を受けにくいことが特徴。さらにトルクの計測範囲が広く(定格±400Nm、トルク分解能0.4Nm)、薄型化(20mm)も実現している。弊社では、今後は各種ロボット向けに大きな需要が期待できるだけでなく、工作機械などの産業分野への横展開も可能になると見ている。2019年11月にパシフィコ横浜で開催されたエンベデッドテクノロジー展で初披露され大きな注目を集めることとなった。このロボットアーム向けトルクセンサーは2021年中には発売予定であり、将来はロボットアーム市場でのシェア15%を目指している。

前述のように、同社は「STREAL」の加工度を高めた(すなわち、同社の付加価値分を高めた)状態での販売を計画している。2019年3月期は半導体チップと基盤実装用のコネクタを一体化したセンサーモジュールとして販売したが、2021年3月期以降はさらに加工度を上げ、無線通信デバイスと組み合わせてネットワーク対応を可能にするなどしたコンポーネントとしての販売などに注力している。同時に構造解析や設計技術等についても開発・蓄積を進め、利用範囲を広げ、市場性を高める方針だ。同社によれば、現在60社超の企業や団体から引き合いがきており、それぞれに応用分野を研究・模索しているとのことで、今後の展開は大いに注目する必要がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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