fbpx

神戸物産 Research Memo(8):業務スーパー事業は既存店の売上拡大と店舗数増で中期的に成長続く見通し

マネーボイス 必読の記事



■今後の見通し

2. 中期経営計画
神戸物産<3038>は2022年10月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を期初に発表している。経営数値目標としては、2022年10月期に連結売上高3,467億円、営業利益230億円とし、年平均成長率で5%前後の成長を目指していく。また、ROEについては財務体質を改善しつつ毎期20%以上を目標として設定した。

前述のとおり、2020年10月期については新型コロナウイルス感染症の影響もあり第2四半期まで計画を上回るペースで伸長しており、下期も同様のペースで伸びるようであれば業績目標値は2年前倒しで達成できることになる。現段階では業務スーパーの伸びが下期にやや鈍化する可能性が高いこと、外食事業が厳しい市場環境にあることなどから、これらの目標を2020年10月期で達成できるかどうかは微妙だが、2021年10月期で達成する可能性は極めて高いと弊社では見ている。

店舗数の出店余地について地域別の人口構成比率との比較した場合、関西以外の地域においては出店余地があり、特に九州エリア(鹿児島県除く)については拡大余地が大きいと見ている。関西エリアについては人口83千人当たりに1店舗を出店している状況となっているが、仮に他のエリアでも同様の比率で店舗展開できたとするならば、1,500店舗までは出店できる計算となる。商圏の違いや出店条件に適う不動産物件の有無などによって、実際の上限値は変わってくるが、関西エリアでもまだ店舗数が増加し続けていることから考えると、出店拡大による成長は当面の間続くものと予想される。

また、出店拡大にあたっては既存店の収益力向上も重要となる。既存店の収益拡大によって、FCオーナーの投資意欲も活発化するためだ。同社では、自社グループで魅力的なPB商品を継続的に開発製造し、業務スーパーで販売していくことで、ブランド力並びに集客力の向上を図り、販売効率の高い売り場の構築やキャッシュレス決済の導入を進めていくことで、既存店向け出荷額の着実な成長を目指していく方針となっている。

なお、中期経営計画における基本方針として同社は以下の5点を掲げている。
(1) PB商品を強化し、基幹事業である業務スーパー事業の拡大を目指す。
(2) 少子高齢化や女性の社会進出等に対応すべく、中食事業の拡大を目指す。
(3) 「食の製販一体体制」を強化し、食のニーズに対応した外食事業の拡大を目指す。
(4) 「食」を通じた社会貢献活動及び環境問題に配慮した事業を推進する。
(5) 優秀な人財の確保と人財育成に注力するとともに、従業員の満足度向上により企業の生産性を向上する。

また、重点課題と施策について、以下の10点に取り組むことで計画の達成を目指していく方針だ。
(1) 業務スーパーの店舗数を早期に900店舗達成を目指す。(年間25店舗ベースで出店)
(2) 業務スーパーの既存店向け商品出荷額について、毎期2%増以上の成長を目指す。
(3) 「食の製販一体体制」を強化するため、積極的なM&Aを推進する。
(4) 食品製造において、自動化による生産効率向上と、より魅力的なPB商品の開発を推進する。
(5) 品質管理体制をより充実させ、食の安全安心の取り組みを強化する。
(6) 「食の製販一体体制」を活かした商品力や、オペレーションの更なる効率化により、他社と差別化された中食・外食事業を拡大する。
(7) オリンピックなどによる訪日外国人の食の問題を解決すべく、ハラール商品等の充実を図る。
(8) 「世界の本物を直輸入」にこだわった輸入商品の商品開発を強化する。
(9) 人財採用において、積極的な情報開示により、同社の経営理念に共感する人財の確保に努める。
(10) 従業員教育を強化し、企業と従業員がともに成長できる体制を整備する。

重点課題のなかで、品質管理体制については特に重要だと弊社では考えている。2019年は9件の商品回収が発表されており、2020年も6月までで4件の商品回収が発生している。理由は、製造ラインでの異物混入や、基準値を超える農薬の使用が確認されるなどといったケースが多い。輸入商品を多く扱っていることが背景にあると考えられる。現段階では大事には至っていないが、「食の安心・安全」という大前提が崩れれば消費者が離れ、成長にブレーキがかかることにもつながりかねないだけに、より一層の品質管理の体制強化が望まれる。

3. CSRの取り組みについて
同社はCSR(Corporate social responsibility:企業の社会的責任)の取り組みについても継続的に実施している。地域社会への貢献として、2018年より賞味期限内にも拘わらず一般市場に流通できない食品について、フードバンク※1への寄贈を開始し、フードバンク関西を通じて、子ども食堂や母子生活支援施設、児童養護施設などへ食品を届けている。また、子ども元気ネットワーク※2を通じて、兵庫県下の母子世帯に毎月、正規食品を無償で寄贈する活動も2018年より開始している。また、新たな取り組みとして、前述した消毒用アルコールの学校等への寄贈を実施したほか、2020年5月には「NPO法人全国子ども食堂支援センター・むすびえ」がサポートする全国の子ども食堂向けに、食品や子ども用マスクの寄贈を実施している。さらに、2020年7月から環境保護活動の一環として、レジ袋の有料化に合わせて業務スーパーでエコバッグを100円前後のリーズナブルな価格で販売開始している。

※1 フードバンクとは、賞味期限内であるにもかかわらず、過剰在庫や印字不良などが原因で一般市場に流通できない食品などを、支援を必要とする人たちを支える福祉施設や団体に、無償で分配を行う社会貢献活動のこと。
※2 フードバンク関西など民間の3つのNPO法人が連携して、貧困に苦しむ母子世帯を応援しようと、2015年に立ち上げた事業で要支援対象世帯に月1回、食品や生活物資、必要な情報を提供している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



いま読まれてます

記事提供:
元記事を読む

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー