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アウトソシング Research Memo(6):業種分散効果や海外でのロックダウン解除等によりリスクは限定的(1)

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■決算概要

1. 2020年12月期上期決算の概要
アウトソーシング<2427>の2020年12月期上期の業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比2.8%減の172,628百万円、営業利益が同40.3%減の3,305百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同51.7%減の664百万円とコロナ禍の影響により減収減益となった。ただ、2020年5月14日付の修正予想に対しては上回る水準(特に利益面)を確保している。

売上収益は、需要が安定している「国内技術系」及び「国内サービス系」が伸長した一方、コロナ禍の影響を受けた「国内製造系」や海外事業全般が落ち込んだ。一方、売上収益が修正予想を上回ったのは、コロナ禍の影響を受けていない米軍施設向け事業(国内サービス系)が順調に伸びたことと、海外事業においてロックダウン(都市封鎖)解除が想定よりも早まったことなどが理由である。

利益面でも、減収による収益の下押しに加え、コロナ禍に伴う休業待機費用の増加等より営業減益となった。ただ、大規模なロックダウンのもと、コロナ禍の影響を保守的に見積もった修正予想に対しては、大幅に上回る利益水準を確保することができた。売上収益が若干上振れたことや、グループ各社で販管費抑制に努めたことが奏功したと言える。

財政状態については、「現金及び現金同等物」の減少等により、資産合計が前期末比2.3%減の234,445百万円に減少。一方、「親会社の所有者に帰属する持分(自己資本に相当)」は期末配当金の支払い及び為替の影響等を反映して同7.3%減の56,228百万円に減少したことから、「親会社所有者帰属待分比率(自己資本比率に相当)」は24.0%(前期末は25.3%)に若干低下した。ただ、流動比率は、引き続き100%を超えており、財務の安全性に懸念はない。

2. 事業別の業績と主な活動実績
(1) 国内技術系アウトソーシング
売上収益は前年同期比17.7%増の50,404百万円、セグメント利益は同14.3%増の2,714百万円とコロナ禍においても増収増益を確保した。緊急事態宣言に伴う一部顧客の稼働停止により技術者の休業待機が増加したことや、新卒者の配属の遅れ、残業時間の減少等がマイナス要因となったものの、IT系や建設系等の堅調なエンジニアニーズに支えられ、コロナ禍の影響は限定的であった。特に、KENスクールスキームの活用等により、2020年6月末の外勤社員数は17,827人(前年同期末比1,939人増)に拡大。また、上期採用実績は4,080人(そのうち、新卒採用は約2,000人)と業界で突出した採用を実現している。利益面でも、増収による収益の押し上げのほか、リモート化の推進による大幅なコストダウンや行政による雇用調整助成金の支給、顧客から一部休業補償が得られたことなどから増益を確保することができた。一方、前期から注力している外国人技術者の活用は、顧客ニーズを獲得しつつあったが、コロナ禍に伴う各国の入出国規制に伴い一旦停止中としている。

(2) 国内製造系アウトソーシング
売上収益は前年同期比14.4%減の30,408百万円、セグメント利益は同14.9%減の2,558百万円と減収減益となった。製造派遣・請負等は、コロナ禍の下、各メーカーが生産停止や稼働抑制を実施した影響を受け、約1,000人弱の解約が発生するなど低調に推移。2020年6月末の外勤社員数は12,426人(前年同期末比1,031人減)に減少した。ただ、コロナ禍の影響を受けなかった半導体関連メーカーや、生産立ち上げに備え、解約されなかった自動車メーカー等との取引は順調に拡大しているようだ。一方、管理業務受託については、顧客メーカーの外国人技能実習生に対する活用ニーズは引き続き堅調であるものの、入出国規制の影響により来日ができない状況が続いている。もっとも、同社の適切な管理体制や突出した管理実績は高く評価されており、既存実習生の延長や特定技能への転換等により、2020年6月末の委託管理人数は20,102人(同1,432人増)と2万人を突破した。

(3) 国内サービス系アウトソーシング
売上収益は前年同期比16.7%増の11,854百万円、セグメント利益は同21.5%増の1,266百万円と順調に拡大した。米軍施設向け事業は、コロナ禍の影響を受けておらず、入札に必要なボンド(履行保証保険)枠の拡大に伴って大口案件の入札参加が増加しており、受注が順調に拡大している。利益面でも、米軍施設向け事業における建築物や設備の改修・保全業務の案件大口化に伴って、採算性が大幅に改善し、利益率の向上につながった。一方、空港・ホテル・飲食店等、観光関連における各種サービス系事業は、インバウンドの崩壊により先行きが見通せない状況が続いており、警備やビルメンテナンス等に注力している。

(4) 海外技術系
売上収益は前年同期比16.7%減の18,270百万円、セグメント利益は同85.9%減の158百万円と減収減益となった。英国の政府系事業のうち、債権回収の受託業務は、政府や各自治体から回収停止の要請が入るとともに、ロックダウンによる外出規制で自宅への回収訪問が困難となる等の影響を受けた。ただ、2020年6月には想定よりも早くロックダウンが解除され、同年9月には本格再開している。また、債権回収以外の公共系事業については、新規受注に遅れが生じているものの、迅速なリモート対応による業務の継続等によってコロナ禍の影響を受けておらず、順調に進捗している。一方、豪州を中心とした金融システム系エンジニア派遣についてもリモート対応の体制が整うとともに、景気の影響を受けにくい生活インフラ等に注力したことで、コロナ禍の影響は限定的である。また、豪州におけるITエンジニア研修事業については、コロナ感染防止の観点から集合研修キャンセルが相次いだものの、オンライン研修への切り替えを進めている。

(5) 海外製造系及びサービス系
売上収益は前年同期比7.8%減の61,636百万円、セグメント損失は257百万円(前年同期は1,309百万円の利益)と減収減益となり、セグメント損失を計上した。ドイツが中心の製造系は、コロナ禍に伴うロックダウンで多数のメーカーが生産抑制等を実施するなかで、生産回復に向けた雇用維持するための休業補償や有給休暇の費用発生等が重荷となった。一方、サービス系は、オランダの流通系eコマース関連が、グローバルなネット対応の進展やコロナ禍に伴う需要拡大により伸長したものの、豪州・チリの空港系事業はロックダウンにより大きな影響を受けた。したがって、コロナ禍によりネガティブ、ポジティブ両面の影響を受けていると言えるが、オランダでのeコマース関連の強化など、ポジティブな需要を取り込んでいく方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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