中国脅威論はどこまで本当か? 哀れマスメディアの機能不全

 

同じことを産経やAPは?

この同じ出来事を、産経はどう伝えただろうか。

米第7艦隊指揮艦が上海寄港 報道陣に公開 「過度な海洋主張に異議」

これはもうハッキリしていて、見出しも中身も、米中の矛盾の面だけを取りだして、「南シナ海の軍事拠点化を進める中国への警戒感をにじませた」などと、司令官自身が用いてもいない勝手な解釈表現を挟み込んで、反中国感情を煽っている。産経が「アジビラ」と言われる所以である。

次に念のためAP通信を見ると、産経の真反対である。

US Navy Commander: Canceled Hong Kong Visit a Minor Hurdle

見出しは「米海軍司令官香港寄港拒否はささいな障害と」と、産経が無視し、NHKが補足的に付け加えたところを見出しに持ってきて、記事全体の構成が逆さまになっている。第2パラグラフでは「旗艦ブルーリッジの上海訪問は中米両国の軍と軍の関係のdurabilityの証だ」という司令官の言葉を引用している。デュラビリティとは耐久性、堅牢性、永続性など「少々のことがあっても決して壊れることがない」というニュアンスを含む強い表現で、私が当番デスクだったらこの言葉を見出しに取るだろう。

そして記事の終わり近くでは「(香港寄港拒否のような)懸念もまだ残るけれども、両国の海軍は次第に接触を拡大し、また海上での偶発的な衝突を避けるための手順についても合意を重ねてきた」ことを紹介し、今月には米中とASEAN10カ国とによる共同演習が行われること、6月のリムパックに中国が参加予定であることにも触れている。

それはちょっとしたニュアンスの違いという程度のことのように思われるかもしれないが、そうではない。要は、米中軍事関係は対立激化の方向に向かっているのか、交流強化・信頼醸成の方向に向かっているのかという、トレンド認識の基本に関わることであって、その視点からして、私は、APの取り上げ方が正常なバランス感覚が働いたまともなジャーナリズムの実例であり、産経は何でも反中国デマゴギーに持ち込んでしまうイデオロギーむき出しのアジビラで落第、NHKは平凡で中途半端だったと思う。

※ 参考(写真:赤色が米中対立的な部分、青色が米中協調的な部分)

それに加えて困ったことに、産経がネット・ニュースへの記事提供に熱心であるため、ヤフー・ニュースをはじめ借り物を寄せ集めただけのニュース・サイトでは、産経の記事ばかりが検索で引っかかってしまうことである。

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