堀江貴文の実体験に中島聡も納得。ビットコインが持つ最大の弱点

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メルマガ『堀江貴文のブログでは言えない話』も大好評な、出版やビジネスにと精力的に活動を続けるホリエモンこと堀江貴文さん。そんな堀江さんの人気YouTubeコンテンツ『居酒屋ホリエモンチャンネル』に、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんがゲストとして登場しました。いま何かと話題の仮想通貨から、ついに死亡事故も発生してしまった自動運転車まで、そう遠くはない未来についての話が次々と飛び出します。第1回目の今回は、賛否両論を巻き起こしている仮想通貨の是非について、堀江貴文さんが軽妙なトークで中島さんの本音を引き出します。

すでに江戸時代から「デイトレーダー」は存在していた?

堀江堀江貴文です。こんにちは。

寺田:司会の寺田有希です。本日の居酒屋ホリエモンチャンネルのゲストは、世界的プログラマーの中島聡さんです。よろしくお願いいたします。

堀江すっかり投機対象となってる最近の仮想通貨に対して、中島さんは結構否定的な目で見ていますよね。確かにギャンブルそのものは、別に社会に対して何もいいことはないと、僕も思うんですよ。まぁ、憂さ晴らしじゃないですけど「just for fun」で遊んいでる分には全然いいんです。だけど、仮想通貨の流動性を上げるという意味では、最近の投機の動きは、ものすごく必要じゃないですか?

中島:理由は何であれ、投機でも、入ってくる人が多いと、流通量が増えるということ?

堀江僕は、今デイトレーディングの話をすごくしたくて。というのも、今ちょうど江戸時代の経済歴史漫画を作っているんですね。それで、すごいと思ったのは、大岡越前守の話なんです。江戸幕府で吉宗が将軍時代のお白州の人ですが、今で言うところの最高裁の長官みたいな人ですよね。でも彼は、実は経済顧問になってたんですよ。

中島:それはあまり知られてない話ですね。

堀江そうなんです。で、経済顧問として堂島に公設の米相場を作ろうと提言したんです。なぜかというと、当時は貨幣経済が世界的にも勃興してきていて、銭を使った取引のシェアが大きくなってきた。でも、当時の日本の武士は、米本位制じゃないですか。米で給料をもらってるんで、不作の時は米の値段が上がる。その時は、生活必需品を買うのに有利になるんだけど、逆に豊作の時は米の値段が下がるじゃないですか。

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中島:それで武士が食うに困ると。

堀江そう。食うに困る。それでも、自制が効く武士は倹約をしてやり過ごすんだろうけど、そうじゃない武士もたくさんいたわけです。で、そいつらが何をしたかというと、金貸しから金を借りるんですよ。そうすると、金貸しが借金の取り立てに行くじゃないですか。でも、武士は、刀とか差していて怖いじゃないですか。誰を取り立てに行かせたと思います?

中島:誰ですか?

堀江借金で首が回らなくなった武士に「お前の借金を帳消しにしてやるから、あいつの借金を取り立てて来い」って、武士を使って武士を取り立てさせていたわけですよ。でも、そうすると、ある程度の割合で、「返せ」「返せない」の言い合いから、斬り合いになるわけです。それがお白州にみんな行くわけですね。だから当時は、そういう金銭トラブルに関する裁判件数がうなぎ登りになったんですよ。それで大岡越前守は、「あ、これはヤバい。米価を安定させるために、公設の米の取引相場を作らなければ」ということで、大坂の堂島に世界初の公設の先物取引市場ができたわけです。

中島:ほう、なるほどね。

堀江あと、そこでまたすごいのは、当時大岡越前守が米相場で推奨していた「日計り取引」というのがあって、それは今でいうところのデイトレードのことなんです。その頃からデイトレーダーはいたんです。金儲けをしたい一心で、ギラギラしながら米相場に毎日張り付いていた人がウヨウヨいたんです。

当時は、江戸が政治の中心で、人口も一番多くて、大坂は商売の中心で、マーケットは大坂にあるわけです。でも、全国で米の取引は行われているので、そのさや抜きをみんな狙うわけですよ。そうすると、大坂の米相場の値段をいかに早く江戸に伝えるかが、すごく大事になってくる。そこで商人たちは、光通信を発明するわけですよ。

中島:煙で伝達したの?

堀江まぁ最初は狼煙をやっていたんですけど、その後は手旗信号になったんです。狼煙は気象条件に作用されるから。で、手旗信号になったんです。

中島:人が連結して、大坂から江戸まで情報を行かせるの?

堀江いや、大坂・江戸だけじゃなくて、方々に張り巡らされていたんです。今も、旗振り山っていう山が、全国にあるんですよ。「旗振山」で検索すると、出てきます。

中島:どのくらいの時間で届くんでしょうね?

堀江光通信なんで、何分かの世界だと思いますよ。それこそ光の速度で届きますよ。かかるのは、人間が旗を振る時間くらい。

中島:向こうの人がやったのを見て、真似する時間は、人間の動く時間ということか。

堀江それでも多分、数分でしょうね。

中島:すごい、確かに光通信だ。

堀江いっぽうの幕府のほうは、どうやって米の値段を伝えていたかというと、米飛脚というのが走って届けてたんですよ……なんで幕府が光通信をマネしなかったのかが、僕は不思議なんですけど。それで、ほどなく幕府はその光通信を禁止したんです。旗振山に武士を派遣して、手旗信号を止めさせたりして規制した。今と同じですよ。

中島:面白いね。

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堀江で、規制されて次はどうなったかというと、今度は伝書鳩を飛ばし始めたんです。それに対して幕府は鷹や隼を放って、その鳩を殺しにかかったわけ。隼が、どうやって鳩を捕まえるかというと、すごい上空から急降下して、鳩が気づかないうちに近付いて、バクっていっちゃうんですよ。でも、そうしたら今度は商人側が鳩を選別しだしたんです。いい鳩は、隼が来る直前でバタバタやっていた羽をギュッと閉じて、急に高度を下げるんですよ。そうすると、隼のほうはタイミングが狂って、鳩をキャッチできなくなる。当時はそんなことをずーっと繰り返していたんですが、今の仮想通貨を巡る国の規制と業者とのいたちごっこと同じだなって思うんですよ。

大岡越前守は、日計り取引に対して、まぁ褒められた行動ではないんだけれども、当時の経済にとっては必要だと考えてたと思うんです。彼らが毎日デイトレーディングをしてくれるから、売りと買いが必ずマッチングされるわけで、それって流動性を作り出してるんじゃないかと。だから大岡越前守は「日計りっていうのは役に立つし、そんなに規制をしてもしょうがないんじゃね?」と言って、他の幕府の官僚から猛攻撃を受けるという……。

中島:すごい。よく勉強してますね。

堀江でも、これ面白いでしょ? それを今、漫画にしてるんですよ。

投資家目線でみると、やっぱり「ICO」は不利

中島:面白いですね。でも、今の、ビットコインなどの仮想通貨市場では、ホエールと呼ばれる大量に持ってる人たちがいるじゃないですか。その人たちから、もう少し吐き出してもらわないと、安定しないですよね。

堀江でも、ホエールの人たちはIPO長者と一緒で、もう当分マネーには興味がないと思うんですよ。彼らは別に金儲けをしたいと思ってビットコインを持っていたわけじゃなく、たとえばディーセントラライズ(非中央集権型)された社会を夢見て、ビットコインっていうテクノロジーに張ってたわけじゃないですか。それで何百億・何千億という資産になったんだけど、当の本人は多分「別にいいよ」という感じじゃないですか。「イーサリアムみたいなICO案件は買うけど、ベンツは別にいらないなぁ」って人が、結構多いんじゃないかって僕は思うんですよ。

だから、テレグラムのICOとかは、多分、金が集まると思うんですよ。テレグラムはいわゆる「アンチFacebook」みたいな存在で、アメリカで資金調達をしようとしてるんで、プレICOみたいなフェーズは、普通にSECにファイリングしてるじゃないですか。普通の証券の未公開株と同じような扱いでやってるんで、最終的にテレグラムのICOがホントのICOになるかは別ですけど、もしICOをしたとするならば、大量にそのホエールの人たちが買うんじゃないかと思います。おそらく、史上最大の資金調達をやるんじゃないですか。下手すると、1兆円とか調達しちゃう可能性がありますよね。

中島:とんでもないですよね。

堀江とんでもないですけど、テレグラムがそれだけ調達したら、買収するのが難しくなって、Facebookも危ういですよね。ICOって僕が思うに、GoogleのA株やB株とかってあるじゃないですか。

中島:あぁ、あれに近いですよね。

堀江そうですよね。A株・B株・C株とあって、A株とC株が上場されているんですっけ。でも、A株は議決権が十分の一なんですよね。C株は議決権もない。B株は創業者が持っていて、その人たちはGoogleのこと全部決められるんですよね。……確かGoogleって、配当がないんじゃなかったかな?

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中島:あそこは配当ないですよ。そもそも上場するときに、偉そうなことが言える立場だったんですよ、Googleは当時から人気がすごくあったから。だから「株が欲しいならあげてもいいけど、その代わり議決権はあげないよ。それでもいいという人だけ買って」という条件でも、キレイに売り切ったんですよ。そういう意味で言うと、ICOはさらに極端なのかもしれない。「議決権がないどころか、会社の持ち主でもない。それでも欲しいなら売ってあげるよ」みたいな感じでしょ。だから投資家目線でみると、ICOってやっぱり不利だなって僕は思うんですよ。

堀江そりゃ不利ですよ。

中島:やっぱり株を持ちたいじゃないですか。でも、それだけの人気があれば、お金が集まるのならば、資金調達方法としては、創業者側からすればすごくお得ですよね。

堀江ただ、詐欺的な資金調達も多いですよね。

中島:やっぱりベンチャー企業は、ほとんどが失敗するんですよ。詐欺じゃなくて真面目に一生懸命やってるところでも、失敗を繰り返してるとこはいっぱいあるので。だから、そのリスクもありますよということで考えると、実際ICOで儲けられる確率は、かなり低いわけですよ。それこそ宝くじじゃないですけど……。でも、今はそういうICOによる資金調達に注目が集まってるから、大手の有名企業がICOすると、もう最初から値段が高い。

堀江そう考えると、イーサリアムはすごかったですね。

中島:そうですね。まぁタイミングもありましたけど。

「秘密鍵なんだっけ」で、トンデモない量の仮想通貨が消えている?

堀江イーサリアムの時は15億ぐらい資金を調達したんですよね。今から考えるとかわいいもんですけど、3年前の話だから当時は「15億も集まるの?」って、結構びっくりしましたし、同時にイーサリアムのビジョンはすげーって思いました。ビットコインは、お金を送るだけの手段。これは小切手と一緒で、振出人がサインしたら、お金が送れる。受け取る側は別にサインは要らないんですよ。だけど、それが双方向でサインすると、これはコントラクト(契約)になる。それをプログラミングで自由自在にいろんなコントラクトが作れるようにしたのが、このイーサリアムなんだけど、それを開発したのが当時19歳のヴィタリック・ブテリンだったんですよ。

ヴィタリックは、大物投資家のピーター・ティール氏が始めた「ティール・フェローシップ」という、起業を志す20歳未満の優秀な若者に、大学を辞めるなどの条件を満たせば10万ドルの資金を与えるというプロジェクトに参加していたんだけど、その彼が2013年に作ったのがイーサリアム。当時、僕もそのコンセプトを見て「すげー」って思って、1万円分のビットコイン買ったんですよ。そしたら、ものすごいことになっちゃって……。

中島:大変だ(笑)

堀江1万円分買ったのが、もう2000万とか3000万ぐらいになってて。だけど、イーサが発行されたのが、確かICOから一年半ぐらい経ってたんですよ。だから僕も買ったことを完全に忘れてて、同時に秘密鍵も忘れて(笑)。

中島:え? 結局わかんなかったんですか、秘密鍵。

堀江たまーに思い出したように「これなんじゃないか」って入力してみるんだけど、「invalid password」って毎回出ますね(笑)

中島:だけど、ホント仮想通貨の秘密鍵って、結構無くなってるんでしょ。うっかり無くしちゃう人もいるし……。

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堀江この前のコインチェックの件もあって、「取引所に預けておくのは危ない」とかって、みんな言うじゃないですか。でも、ぶっちゃけ、ほとんどの人たちは、取引所に預けておいたほうが、ぜんぜん安全だと思うんですけどね。「ハードウェアウォレットに入れといたほうがいいんじゃないか」と言っている人もいるけど、そのウォレットのファームウェアがバージョンアップした時に、なんかよくわからなくなって、全然入力が効かなくなって、さようならという可能性もすごくあるだろうなって。

中島:だから、けっこうな額の仮想通貨が消えてると思いますよ。

堀江僕だって消えてますから。で、僕の友達でモリタマさんという人がいて、彼は20万円分買ってたんですよ、僕の話を信じて。でも、彼も秘密鍵を忘れちゃって、4億円が……。

中島:消えちゃった? もったいないなぁ。

堀江(笑)。消えちゃいました。

中島:技術的な話だけれど、秘密鍵って単なる乱数なんですよね。例えば、口座を作ろうというと、プログラムが乱数を発生してくれるだけじゃないですか。ただ、あまりにも数が多いから、偶然には一致しないだろうだけど、もしかすると一致するかもしれないんですよ。それって面白いことで、ひょっとしたら……。

堀江まぁ、宇宙にある素粒子の数ぐらいの確率ですけどね。

中島:でも、ひょっとしたら、たまたま当たっちゃうかもしれないわけですよ。そしたら大変なことになる。それって、今まで一度も起こっていないのかな?

堀江それは「無視しよう」ってことになってるんじゃないですか?

中島:たとえば10人の人間がいて、たまたま誕生日が同じ人がいる確率が10%くらいあるというじゃないですか。そういうのと同じで、一対一でみた時はものすごく少ないんだろうけど、たくさんの口座があれば偶然に一致する可能性も増えてくるわけで。

堀江そうでしょうね。でも、それは無視していいことになってるんでしょうね。

中島:まぁね、そういうの結構ありますよね。コンピューターって意外と、完璧そうに見えて、そういうのってあるんですよね。

堀江ありますよね。

寺田:でも、そういう問題ってどっかで出てきそうですね。

堀江いや、それよりも秘密鍵を忘れたトラブルの方がはるかに多いんじゃないかな。だから「ハードウェアウォレットのほうがいいんじゃないか説」って、全然ダメだと思う。僕が思うに、本当は「短歌」がいいと思うんですよ、日本人は。

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中島:短歌で覚えるっていうこと?

堀江はい。短歌ぐらいだと、一応意味のあるフレーズになるらしいんですよ。あいうえおに置き換えるアプリとか作ったら、秘密鍵はホント意味のない乱数の羅列になるんだけど、それを短歌に置き換えるメーカーみたいなのも作れるんですよ。

寺田:でも、短歌って結構長くないですか。31音でしたっけ?

中島:これから仮想通貨がらみで、いろいろと面白いことが出てくると思うんですよ。秘密鍵を刺青にしちゃうとか。どこかに死体が上がって、その人の足の裏にはQRコードがあって、読んでみたらそれは秘密鍵で、そこに眠っているお金が何ビリオンだった、みたいな……。そんな小説とかが書けたら面白いですよね。僕があらすじだけ言えば、それを書いてくれる人がいたら、いいんですけどね。(第2回につづく)

撮影:上岡伸輔


……と話の尽きないお二人ですが、対談はこのあと第2回の記事に続きます。堀江さんがブログでは書けないとっておきの情報を毎週月曜日にお届けしているメルマガ『堀江貴文のブログでは言えない話』のご登録はコチラから。また、IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られる中島さんのメルマガ『週刊 Life is beautiful』のご登録はコチラ。どちらのメルマガも初月無料ですので、この機会にぜひご登録してみてはいかがでしょうか。まだまだ続くお二人の熱いトーク、4月中にお二人のメルマガにご登録いただくと今回のトークのフルバージョンを全文お読みいただけます。それでは第2回をお楽しみに!

※第2回、第3回、ともに公開されました。

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【第3回】堀江貴文の構想に中島聡も興味津々。配送ベンチャーは世界を変える

 

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堀江 貴文(SNS株式会社ファウンダー)
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中島 聡(ブロガー、起業家、ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学))
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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