明治ひとり勝ちのヨーグルト市場に異変。いま何が起きているのか

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ヨーグルトといえば「ブルガリア」というイメージが真っ先に浮かぶほど、日本人に定着した感のある「明治ブルガリアヨーグルト」ですが、そんな「明治一強」だったヨーグルト市場にも変化が起きているようです。フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんは今回、日本のヨーグルト商品史から機能性ヨーグルトブーム、そして新たなブームを呼び起こしそうな「ギリシャヨーグルト」などを取材し、ヨーグルト市場の最新動向について詳しく紹介しています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

“機能性からギリシャへ”。ヨーグルト市場の最新動向を追う

そろそろスギやヒノキ、シラカバの花粉が飛ぶ季節。スーパー、コンビニ、ドラッグストアの食品売場では、3~4月のピークに向けて、花粉症の緩和に効果があると言われるヨーグルトの売場を拡大する動きが始まっている。

昨年あたりからヨーグルト業界では売れ筋に変化が起こり、近年市場を牽引してきた機能性をうたう商品に一服感が出ており、プレーンなタイプに回帰している。その中でも、急速に売上を伸ばしつつあるのは、「ギリシャヨーグルト」と呼ばれる、水切りを施してレアチーズケーキのような濃厚な食感が楽しめる商品群である。

また、プレーンなタイプでありながらも乳酸菌入りなどの機能を付与した、機能性ヨーグルトとの中間的な商品も増えており、機能の重要性が薄れたのではないようだ。

飲むタイプの機能性ヨーグルトに関しては、年間商品化してきた甘酒など、他ジャンルの発酵飲料に顧客が流れたとする説もある。

“機能性からギリシャへ”と主役が交代しつつある、ヨーグルト市場の動きを追った。

30年間で3.5倍。右肩上がりで成長するヨーグルト市場

マーケティングリサーチの富士経済がまとめた「2018年食品マーケティング便覧 総市場分析編」によれば、ヨーグルトの市場は1988年には800億円ほどだったのが、2016年には2,900億円ほどにまで膨らんでいる。過去30年で3.5倍以上になった。

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機能性商品はひと段落し、「プレーン回帰」が起こっている

ヨーグルトは消費者の健康指向の高まりにより、長期トレンドでは右肩上がりで普及が進んでおり、今後も成長が見込めそうな有望な食品の1つと言えるだろう。

富士経済では、96~97年に主要商品の幾つかが特定保健用食品の表示を開始したのが、成長の契機と考えており、テレビ番組や雑誌で繰り返し健康を改善する効果が取り上げられたので、今日の隆盛に結びついたとしている。12年には機能性への関心がより一層高まり、以降各社がプロバイオティクスに基づいた商品を強化した。

98年に英国のフラー博士によって提唱された、人体に良い作用をもたらす微生物、または微生物を含む食品がプロバイオティクス。共生を意味する“プロバイオシス”が語源となっている。腸内の細菌バランス、腸内フローラを整えることで、免疫力向上、便秘や下痢の症状改善、痩せやすい体質づくりなどに効果があるとのこと。菌活という言葉もほぼ同じ意味でよく使われる。

ビフィズス菌、乳酸菌などが典型的なプロバイオティクスの微生物だ。ヨーグルトが花粉症に効果があるというのも、プロバイオティクスの文脈で語られてきたことである。

一般社団法人Jミルクによる「平成30年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと今後の課題について」によれば、生乳供給量は09年度780万5,000トンから18年度は720万6,000トンへと、8%減っており、牛乳が飲まれなくなってきている傾向から乳製品全般が伸びているわけではない。牛乳からヨーグルト、あるいは過去30年で2倍以上の消費量となったチーズといった発酵食品へとシフトが進んでいる。

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