永野芽郁インタビュー「夜の屋上でロマンチックなことを言われたい」

昨年のNHK朝ドラ「半分、青い。」のヒロインとして脚光を浴び、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」でも大きな話題を振りまいた永野芽郁。そんな彼女の主演映画『君は月夜に光り輝く』が3月15日より公開。累計発行部数50万部を突破した佐野徹夜の同名小説を、『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督が実写映画化した本作は、“死生観”をテーマにした青春純愛映画。いまやドラマにCMに映画に、各界で奪い合いが起きているという最旬女優をMAG2 NEWSが直撃取材してきました。

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「朝ドラヒロイン」という肩書を手に入れた女優は、その後、国民的女優として羽ばたくことが多い。

とにかく明るく前向きなヒロインは、その後の出演作でも、まるで自分の娘を応援するようなファン心理が働くからだ。それだけに「その後」の作品には大きな注目が集まり、どんな役に挑戦するか、時には本人のプレッシャーになることもあるそう。

『半分、青い。』のヒロインをつとめた永野芽郁の、「その後」初の映画として公開されるのが、余命少ない高校生役を演じた『君は月夜に光り輝く』。すでに反響をよんでいるドラマ「3年A組」と同じ高校生役に扮した彼女が、いわゆる“余命ゼロ”のヒロインをどのように演じたのか。朝ドラ以降「時間があっという間に過ぎる」と言う19歳が、今何をどう感じているのか、飾らない永野芽郁のホンネに迫ります。

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死期が近づくにつれて肌が光るという原因不明の不治の病“発光病”を患うまみず(永野芽郁)と、まみずの叶えられない願いを「代行体験」という形で叶えていく同級生・岡田卓也(北村匠海)の純愛が描かれる。

女性から見ても「守りたくなるような女の子」

──「半分、青い。」後、初の主演映画ですが、オファーを受けた際の心境はどうでした?

「朝ドラの出演を経て、私にとって1年以上ぶりの映画の現場で大丈夫かなと不安がありました。でも、以前、CMの現場で月川さんとご一緒したときに、お芝居の現場でもまた月川さんと一緒に仕事をしたいと思っていました。なので今回監督が月川さんと聞いてぜひやりたいと思いました。また、まみずという余命がないところから始まる女の子が一生懸命生きている生き様を演じたいと思いました」

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──ヒロイン・まみずの第一印象は?

「まみずは、自分の思っていることを素直に口に出しているように見せかけて、実は全然出していないんですよね。つかみどころのない子だけど、そこが魅力的だと思いました。卓也と似てないんだけど、どこか似ているところもあって、そういうところが誰かの共感になったらいいなと思って演じました。女性目線で見たときも、守りたくなるような女の子がいいなと思って、そこは意識して大事にしました」

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──不治の病だけど、まみずは一生懸命生きようとしています。演技のさじ加減は難しかったですか?

「そこは難しくなかったです。不治の病だから悲しいとか可哀想って思うほうが人間は切ないだろうなって私は考えていたので、不治の病というところに関しては重要視してはいなくて。でも、どこか自分には限られたものがあって、それがいつくるかわからないので、抑えられたものあるけど、そこを出してもいいよって言ってくれる卓也に出会えて変わっていきます」

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北村匠海さんは、声が素敵だなってずっと思っていた

──現場では、卓也を演じるW主演の北村匠海さん、月川監督とどんなやりとりをされましたか?

「北村さんとはお芝居について会話することはなく、カメラの前に立って演じてみるという感じで、現場でナチュラルに作り上げたものが一番大きかったです。そこに監督が乗っかって、それでいいよ、やってみようと言ってくれて、一から自分たちで思ったまま感情を表現することができて、本当のお芝居ができたなあ、と感じました」

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──北村さんとのシーンがほとんどでしたね。北村さんの印象を教えてください。

声が素敵だなってずっと思っていたんですけど、張っているわけでも、大きな声でもないのに、すごく響くんです。顔が見えてなくても、声が聴こえただけでもゾクっとするというか(笑)。卓也くんというのを声だけで伝えるなんてすごいなと改めて思いました。そこにまた表情が入ってくると変わるし、一緒にやっていてすごいやりやすいなと思いました」

──月が美しい屋上での2シーンがとても印象的です。

「監督やみなさんが一発本番でいこうとすごく気を使ってくださって、一回目の感情を大事にしようとやっていたんですけど、月を見上げて会話しているシーンは会話が噛み合っていないんですよね。まみずが先行していて、卓也がなんとなくついていっていて、2人の関係性がわかりやすく出ているシーンだったんですけど、会話が成立していないけど、成立しているように見せるのが、難しかったです(笑)」

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──ビルの屋上で「ロマンチックなことを言って」とまみずが言いますよね。永野さんはそんなことあります?

「普段ですか?(笑)言ったことないです(笑)。でももし色んな条件が揃って私にもそんな機会があれば、言ってほしいなあ、って思います(笑)」

──まみずはずっと入院しているから、ドラマチックな展開に憧れていたんでしょうね。

「病室でやることがなくて本を読んでいることが多いので、本に影響されているんでしょうね。女子のちょっとした妄想が現実でも起こったの?という夢見る感じはわかるなって思いました」

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──まみずは自分がやりたくてもできないことを卓也に代行体験として頼みますが、それについてはどう思いますか?

「どういうこと?って最初に思いました(笑)。でも、切ないですよね。結局は自分の首をしめているようなところもあるし。でも、そうしてこの世に自分の未練を残さないようにする、できることなら自分じゃない誰かにやってもらうまみずは、ある意味誰よりも強いと思いました。私にはできないなって思います」

──どの代行体験が印象的でしたか?

「バンジージャンプの卓也くんがすごく面白かったです(笑)。実はあのシーン、声だけ病室で録っていて、私は廊下にいたんですけど、何をやっているんだって思いました(笑)。完成した作品を見て笑いました」

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今日ぐらいはどうでもいいって思う日もあるけど

──限られた時間の中で生きるまみずから“生の輝き”が伝わってきました。その部分で永野さんは何か感じましたか?

「普段の日常生活でも、時間が限られているものとか、期限が決められているものは、その一瞬がものすごく楽しかったり、濃厚に頭の中に残りますよね。それが人間の命という、ものすごい核となる一番大事なこととして決められていると、こんなにきれいなんだなって。当たり前のように生きているけど、生きるってこんなにすごいことなんだ、生きている人みんなすごいんだって改めて思いました。何十年っていう日が自分の人生になると、今日ぐらいはってどうでもいいっていう日が出てきてしまうかもしれないけど、限られている人はこんなにも美しいんだなと感じました。撮影中、自分の思いを巡らせながら帰っていました」

──そういう感覚を得て、何か変わったことは?

「朝起きて、部屋に光が入っていたりすると気持ちいいなあって思うようになりました。憂鬱な日もあるし、朝眠いなあっていう日もあって、それも愛おしい時間なんですけど、パッて光を見て、今日も一日頑張ろうって思えるだけでその日いい日だなって思えるようになって、変わったなあって思います。映画のタイトルが光り輝くだからか、光ってすごいなって思うようになりました。光の反対の影も好きだけど、光っているものはきれいだし、触れたら逆に壊れてしまいそうな儚さもあって、まみずって光っている子だなあって」

──永野さんも光ってます!

「(笑)ふふっ。ありがとうございます!」

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──光っている女の子、まみずのここがすごいというところは?

「自分のことをわかっているところですね。生き様も誰かに対しての感情も、自分の中でわかっているし。卓也くんに対する感情は、最初はわかっていなかったけど、好きだって気付いてからは手放そうとするし、自分よりも周りの人の幸せを選ぶ人だから、自分のことも周りのことも理解しているんですよね」

──永野さんはいかがですか?

「私は自分のことはあまりわかっていないから、自分の性格を分析できたら、しんどいときもあるだろうけど、楽だろうなって思いました。自分がわかっていると、自分はこうするだろうってわかるから、嫌なことを回避しますよね。好きになったら、周りが悲しむから、好きになりすぎる前に手放そうって。自分のことがわかっていなかったら、どんどんどんどん好きになってしまって、いろんな人を傷つけて、自分も傷つくという。自分のことを理解している人のほうが頭の回転も早いし、みんなが平和にいくと思います。まみずは一人の時間が多いから、自分と向き合っていたんでしょうね。それは演じながら感じました」

──役者さんも役と向き合いますよね。

「自分だったらどうかな?って一回考えますね。そのとき、自分は情けないなって思うこともあるし、なぜ私はこういう思考回路になるんだろうっていうときもあるんですけど、最終的にはしんどいながらも役と向き合うしかないと思っています」

──今回はどうでしたか?

「あまり考えなかったですね。自分が思ったものでそのままで大丈夫だって思いました。監督がとにかく受け入れてくださる方だったのでそう思えました」

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気になる男子に渡したメモ「グミが食べたい。」の真相

──「私が私で良かった」。劇中のまみずのその言葉が胸に迫ります。永野さん自身、自分をそう思える瞬間はありますか?

「全然あります。日常生活の中でもあります。自分に自信がないときや人と比べてしまうときもあって、自分が劣っているところばかり見てしまうこともあるけど、自分は自分で変えられないし、こんな自分でも好きって言ってくれる人がいて、大事にしてくれる人がいるなら、私は私でいいじゃんって思うほうが、生きる上で絶対的に楽だなって気付いた瞬間があって、それからは嫌なことがあっても、私は私で良かったって思うようにしています」

──卓也が最初にお見舞いに行った際、次も来てほしいと思ったまみずが彼に渡すメモがかわいかったです。「グミが食べたい」って書いてありましたが、永野さんはどう書きますか?

「まみずってグミは別に食べたくはなかったんですよね。でも、グミが食べたいってでてくるのがまみず、かわいいなあって。私なら出てこないです(笑)」

──意外です。何が出てきます?

「食べたいでしょう…会うきっかけですよね。私だったら、グミはないな。私はまた来てって言っちゃいそうだけど、卓也はこの紙からいろいろ想像するんですよね。グミ食べたい? え? なんで俺?って。今度やってみようかな(笑)。とっさに出てくるのは、おつまみですね(笑)」

──それもかわいいです。

「ギャップですか?」

──おつまみってなんだろう?って。おつまみといえば、永野さんは今年ハタチになりますね。

「そうなんです! いろんな方とご飯行きたいです。打ち上げでも先輩たちが乾杯するのを見て羨ましいなと思っていたので、法律的に許されるので、お酒に挑戦したいです」

──最初に何飲みますかね?

「梅酒とかかな? 若い人が飲みやすいっていうイメージです。楽しみですね」

──2019年、お仕事面での目標は?

「朝ドラ以降、どの現場でもあっという間に時間が過ぎていきます。朝ドラの現場が期間的にも時間的にも長く、家族よりもスタッフさんキャストさんといたんですよね。この「君月」も1ヶ月半撮影がありましたが、本当にあっという間に撮影が終わってしまったので、限られた時間を大切に、1本1本集中してやっていきたいと思っています。「3年A組-今から皆さんは、人質です-」もあっという間に終わりなんだなって。気付いたら来年になっていそうなので(笑)、毎日を大切に過ごします!」

インタビュー・文/杉嶋未来
撮影/能美潤一郎

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永野芽郁(NAGANO MEI)
1999年9月24日生まれ、東京都出身。2009年映画デビュー。2015年10月に公開された映画『俺物語!!』でヒロイン・大和凜子を演じ注目を集める。2016年7月期ドラマ『こえ恋』(テレ東系)で連ドラ初主演を果たす。2017年は『ひるなかの流星』『PARKS パークス』『帝一の國』『ピーチガール』など話題の映画に次々と出演。2018年は朝の連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロイン・鈴愛を演じ、ブレイク。1月の「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ)も話題になった。

 

Information

君は月夜に光り輝く
3月15日より全国東宝系公開

監督・脚本:月川翔
出演:永野芽郁 北村匠海
甲斐翔真 松本穂香 今田美桜 / 優香 生田智子 長谷川京子 及川光博
配給:東宝
(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会
ヘアメイク:吉田美幸(B★side)
スタイリスト:岡部美穂

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