平成の世を「紛争の時代」にしたブッシュ父子という勘違い大統領

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これまで3回に渡り平成の30年間を独自の視点で振り返ってきた、ジャーナリストの高野孟さん。今回は先日都内で開催された「東アジア友愛フォーラム」にて、「ポスト冷戦・2つの安保原理の戦い」と題した興味深い高野さんの講演内容を、メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』誌上に特別掲載してくださっています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年4月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

ポスト冷戦:2つの安保原理の戦い

平成の30年が間もなく終わろうとしています。今上天皇は2月の在位30年記念式典の挨拶で、平成が「近現代において初めて戦争を経験しない時代」だったと誇らしげに述べました。しかし世界に目を転じると、平成の30年は、冷戦が終結してからの30年とぴったり重なっていて、本当ならば世界もまた戦争を経験することなく過ごせるはずであったのですが、実際には逆で、1989年の米国のパナマ侵攻に始まって、91年湾岸戦争、98年コソボ空爆、01年アフガニスタン戦争、03年イラク戦争、11年リビア空爆、シリア内戦介入など、ほとんど絶え間なく戦争が続いた30年間でした。

ブッシュ父子の戦争マニア

冷戦が終わって熱戦の時代に戻ってしまったかのようですが、そうなった最大の原因はブッシュ父大統領の時代認識の過ちにあります。彼が89年12月にマルタ島でゴルバチョフと会談して冷戦終結を宣言したのは偉大な功績ですが、しかし彼は自分のしたことの意味がよく分かっておらず、「冷戦という名の第3次世界大戦で米国は勝利したのだ。ソ連という邪魔者がいなくなって、これからは米国が唯一超大国としてやりたい放題だ」と思い込んだのです。そのテストケースとして早速発動したのが同じく12月中のパナマ侵攻であり、91年の湾岸戦争でした。

熱戦というのは、国家と国家がお互いに重武装して国境を挟んでせめぎ合い、イザとなれば総力を挙げて、一般市民をも巻き込むことも辞さずに、生死を賭けて戦うのが当たり前という、17世紀ヨーロッパで確立した野蛮極まりない文化です。ところが、第2次世界大戦後に至ると、

  • 一方では、核兵器をはじめとする大量殺戮兵器とその遠隔運搬手段の発達による殺傷能力の極大化がその使用をためらわせるほどになったこと
  • 他方では、米ソを盟主とする東西2極の体制間対立の構図が出来て、2国間の戦争はそれだけで済まずに直ちに世界のほとんどの国を巻き込む地球破滅的な戦争になりかねない恐れが生じたこと

──によって、軍事力を全面発動することを避けて、しかしそれをお互いにちらつかせて相手を威嚇しながら、国家間ないし体制間の利益を争うという、何とも陰険な国際関係が生まれました。それが冷戦です。

従って、冷戦が終わったということは、熱戦に戻るのではなくて、冷戦にせよ熱戦にせよ、国家やその束としての東西両陣営が、軍事力を振るって争うのは当たり前という「国家的暴力の時代が終わったということでなければならなかった。ところがブッシュ父は愚かなことに、米国だけが国家的暴力をほしいままにしていいかの唯一超大国幻想に陥り、それがブッシュ子の「単独行動主義」によるアフガン、イラク両戦争の発動につながり、ひいては(少し意味も発動形態も違うが)トランプの米国第一主義にまで通じているのです。

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