軍事アナリスト提案。イランへも要請、タンカー護衛の日本モデル

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ホルムズ海峡とバブエルマンデブ海峡でのタンカー護衛を目的とする有志連合への参加をアメリカが呼びかけ、日本は19日にワシントン国務省での説明会合に参加しました。25日には2回目の会合が予定されており、難しい決断を迫られることになります。この件に関し私案を披露したのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さん。有志連合参加時の法的な根拠とともに、イランとの外交関係を最大に意識した日本が取るべき道を大胆に提案しています。

タンカー護衛の日本モデル

ホルムズ海峡でタンカー攻撃が相次ぎ、イエメン沖のバブエルマンデブ海峡でも、シーア派武装勢力によるタンカー攻撃が起きています。これについて、米政府はイランと同国が支援する武装勢力が背後にあるとみなし、2つの海峡でのタンカー護衛について有志連合の結成を提唱、ダンフォード統合参謀本部議長は9日、有志連合に加わる同盟国を2週間程度で決定したいとの考えを示しました。

これを受けて、日本では、護衛艦の派遣は海上警備行動を適用するのか、海賊対処法に準拠するのかと、またまた押っ取り刀の議論がわき起こっています。そこで今回は、少し「頭の体操」をしてみたいと思います。

1958年の「公海に関する条約」によれば、海賊行為とは国家機関としてではない私的な目的で行われる、公海における他の船舶の交通の安全を脅かす性質の暴力行為、とされています。海賊行為に参加したり扇動したりする行為については海賊行為とみなされ、その主体が国家であっても同様との解釈も成り立ちます。

そうした海賊行為に対しては、軍用機、軍艦、権限を与えられた公船は拿捕、臨検などを行うことができます。一方、軍用機、軍艦が同様の行動をとっても、反乱勢力の支配下にある場合を除いては海賊行為とはみなされません

この「公海に関する条約」を前提とした場合、次のモデルのもと、日本は海賊対処法の援用によって有志連合に参加可能と考えることができます。

1)日本は、国家ではない勢力による海賊行為からタンカーなどを守るために、海賊対処法の援用として有志連合に参加、護衛艦、航空機などを派遣するものとする。

2)日本は、海賊対処において第151合同任務部隊(CTF151)の一角に位置しているのと同様に、海賊対処法の枠組みの中での情報共有や強制力を行使する。使用する武器については、ソマリア海賊より強力な武器を保有する海賊行為を前提に、海上自衛隊の護衛艦、航空機などが装備するものを適宜使用できるものとする。

3)海賊行為のレベルを超えて「公船、軍艦、政府航空機による同様の行為」が行われる事態は国際不法行為であり、米国など他の有志連合参加国が武力行使を行うこと、すなわち戦争になることから、イランが国家としての武力行使に出ることはないと思われる。

4)日本は、海賊行為の根絶を目的とする国際的枠組みの構築を提唱し、有志連合を発展的に解消する中でイランにも参加を提案する。

5)このような日本のスタンスは、イランとの国家間の外交関係を維持することを念頭に置いたものであり、イランに海賊行為以上の国際不法行為をためらわせるうえでも抑止効果があり、日本が事態の平和的解決を図るための外交的余地を残すものでもある。

いかがでしょうか。まだまだ整理しなければならない点は沢山あるかもしれませんが、世界の平和が日本の安全と繁栄の前提であり、日本国憲法の性格を規定している前文の基本原理のうちの平和主義世界の平和を実現するために行動するとの趣旨を誓っている)を具現するものとして、タンカー護衛に関する日本モデルを描き、国際社会に提案してみてはどうかと思います。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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