いまさら人に聞けないイラン情勢。アメリカの目論見が外れた理由

shutterstock_1309909201
 

アメリカが呼びかけた有志連合への参加を表明した国は、8月初旬時点ではないようです。対イラン政策に関するアメリカの外交姿勢は国際社会から承認されていない状況が続いているように見えます。そもそも、アメリカは、トランプ政権は、なぜイランに対し強硬姿勢を続けるのでしょうか?このいまさら人に聞きにくい疑問を、メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の著者で、国際交渉人の島田久仁彦さんがわかりやすく解説してくれました。紛争調停官として、日本外交への期待も表明しています。

外れたアメリカの目論見と中東における緊張の激化

トランプ政権になってからのアメリカは、過度なまでにイランを敵対視し、ついにはオバマ政権と欧州の同盟国が苦難の末に作りあげ、イランの合意を引き出したイラン核合意を一方的に離脱することで、イランとの緊張関係を振り出しに戻してしまいました。

その後、北朝鮮問題の“進展”というサプライズを演出できたこともあり、しばらくはイランがトランプ大統領のレーダーに上ることは少なくなっていましたが、北朝鮮の非核化をめぐるdeal makingが停滞すると、再度、イランに対する圧力と口撃が始まりました。

ただ、『戦争は準備が出来ているが、実行したくない』との本音と、仮に交戦状態に陥った際にどのような被害が出得るかを知らされたのでしょうか。今のところ直接的かつ大規模な武力衝突には踏み込まないギリギリの線で止まっています。

とはいえ、安倍総理がテヘラン訪問中に2隻のタンカーが襲撃され、まだその“真犯人”が特定できない中、米イラン互いに無人偵察機を撃ち落としたり、イギリスとイランの間で互いのタンカーの拿捕事件があったりして、緊張の度合いと幅が広がってきていることは確かです。

同盟国のタンカーが襲撃される事件が相次いだことと、トランプ政権の方針の一つである米軍の同盟国防衛体制の見直しと絡み、先月初めにホルムズ海峡を航行するタンカーなどの商用船に対する警備と防衛の負担を分担すべく『Coalition of the willing(有志連合)』の結成を呼びかけました。有志連合への参加を呼びかけられた国として、輸入される原油の大部分がホルムズ海峡を通過する日本も例外ではありません。

当初、英国が賛同する意を示していましたが、自国のタンカーの拿捕事件に加え、首相および内閣が替わったこと、そして『有志連合』という形態に対するイラクの呪縛を受けて、今では有志連合の結成には積極的とは思えない状態です。

そのような空気を察するように、フランスやドイツも、アメリカの呼びかけには真正面から応えることはせず、イラン核合意を通じてできたイランとの特別な関係の維持という目的も叶えるべく、欧州独自のパトロール活動を行うべきとの立場を表明するに至っています。

日本に至っては憲法解釈と法律的な解釈の問題もあり(そして参議院議員選挙直後というタイミングもあり)参加は難しい状況ですし、同じくホルムズ海峡を通るタンカーへの依存率が高い中国も、現時点ではイランを刺激するような動きは取れないことと、米中の貿易問題の影響もあり、参加はしませんので、アメリカの目論見はどうも外れたように思えます。

print
いま読まれてます

  • いまさら人に聞けないイラン情勢。アメリカの目論見が外れた理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け