国際交渉人が憂慮。大戦の火種が燻る北アフリカ・中東地域の混乱

shutterstock_1370051243
 

現在の混沌とした世界情勢に不安を感じてか、数々の国際舞台で活躍する国際交渉人の島田久仁彦さんに対して、「次の世界大戦が起こるとしたら、どこが発火点?」という問いかけが頻繁にあるようです。そこで島田さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で、最も危険を孕む地域と考える北アフリカ・中東地域の最新の情勢を詳しく解説しています。

北アフリカ・中東地域で続く暗く長い苦難の戦い

「次の世界大戦が起こるとしたら、どこが発火点だと思いますか」今年に入ってから、この質問をよく尋ねられるようになりました。仕事柄、「世界大戦はもう起こりませんよ」とお答えしたいのが本音なのですが、昨今の国際情勢の不安定化を見ていると、大きな不安に駆られます。

可能性があるとすれば、朝鮮半島情勢を含む“広範のアジア地域”(南シナ海での偶発的な衝突、カシミール地方の領有権をめぐるインド・パキスタン・中国の三つ巴の争いなど)が一つ考えられます。米中の新2大国が直接的に対峙し、成長著しい東南アジア諸国があり、世界最大の人口を抱える地域です。

または、北アフリカ・中東地域が考えられます。ホルムズ海峡問題や米イランの衝突、シーア派とスンニ派諸国との争いになっているイランとサウジアラビアを核とした刮目、イランとイスラエルの間に常に存在する緊張、シリア問題に代表される内戦と増え続ける難民の波、独裁から解き放たれた北アフリカ諸国の勢力地図の塗り替え、そしてそれらの紛争の背後でとぐろを巻く欧米とロシア、中国という大国の果てしなき欲望など、こちらもアジアに負けず、いろいろな火種が燻っています。

どちらの地域が発火点になってもおかしくないと恐れつつ、より可能性が高いとすれば、恐らく北アフリカ・中東地域であろうと思っています。それはなぜか。最大の理由は、アメリカ・トランプ大統領によって開けられてしまった「中東地域のパンドラの箱」です。

それは、イランとイスラエルの間に存在する永遠のライバル関係です。第2次世界大戦後、1980年までは、イランは親米国家として存在し、それに比例するかのように、イスラエルとの対決は想定されていませんでした。それが1980年の米・イラン国交断絶以降、共にアメリカに支援され、軍事力を着々と増強させてきたイランとイスラエルが対立する構図が作られました。

イランは独自路線を歩みつつ、反米の証としてソビエト連邦に支援を求め、1980年以降は、アメリカの軍備というベースに加えて、ロシアの軍事力と知見が加わりました。イスラエルについては、アメリカからの継続的な軍事的・経済的、そして外交的なサポートを受けることで、元々、ユダヤ民族に流れるイノベーションの精神がより伸ばされ、今ではアメリカも及ばないほどの超ハイテク軍備を誇る国になっています。

どちらも公にはなっていませんが、確実に核技術を有し、ミサイル技術も非常に高いレベルを誇るため、仮に直接的に全面戦争になった場合、地域はもちろん、もしかしたら世界を破壊するだけの結果をもたらしかねません。それを両国とも自覚しており、相手の実力も把握しているからこそ、微妙な緊張状態で均衡を保ってきました。

print
いま読まれてます

  • 国際交渉人が憂慮。大戦の火種が燻る北アフリカ・中東地域の混乱
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け