依然、関係修復の糸口すら見えない日韓関係。こと韓国における反日運動は激しさを増すばかりですが、今回の無料メルマガ『キムチパワー』では、そんな韓国でとある日本人女性があたたかな拍手で讃えられたというシーンが紹介されています。
天野トシ子さん
8月13日、93歳の日本人女性(おばあさん)が100メートルを力泳した。韓国南西部・光州で開かれている「世界マスターズ水泳選手権」の競泳女子100メートル自由形で、今大会最高齢の天野トシ子さんがゴールにタッチし100メートルを泳ぎきった。天野さんは1926年生まれで日本国籍だが、メキシコクラブ所属で出場したもの。トシ子さんは、9歳のときに水泳をはじめた。そして1986年に第1回目がはじまったこの「世界マスターズ水泳選手権」には、毎年出場しているもよう。
韓国の光州(クァンジュ)というところは、1910年から1945年までの日本の植民地時代にも、反日活動のメッカのような地。ちょうどその日本の植民地時代(韓国ではこれを日本帝国の略語として日帝時代という)に生まれた天野トシ子さんの懸命に力泳する姿に、会場からは割れるような拍手が届けられる。会場はもちろんほとんど韓国の人。トシ子さんが日本人であることは百も承知。それでもあたたかい拍手が会場全体にこだまする。スポーツのすばらしさ、偉大さを見た。
プールからやっとのことで上がったトシ子さんは、すぐに車椅子に。これもちょっと驚き。水泳は、スタートの飛び込みから他の選手と同じように所定の位置からどぶんと飛び込んだ。中間の泳ぎももちろんゆったり泳法だけれど、きれいな泳ぎで気持ちよく水をきっていく。そしてゴール。水の中では完全にピンピンしているのだが、地上では歩くこともままならないくらいに足腰がきつそう。水泳のすごさをトシ子さんを見ていて感じさせられた。水のやさしさというか、人間を包み込んでくれるそのやわらかさに今更ながら驚く。マイクの前でトシ子さんはいう。
「知らない人々から応援をいただいてほんと、うれしいです。ありがとうございます。わたし、100歳まで泳ぎたいです」
日韓関係が最悪のこのときにも、スポーツの世界は日本も韓国もない。トシ子さんの力泳にも感動したけれど、日帝時代生まれのトシ子さんに惜しみなき拍手をおくってくれた韓国の方々にも深く感銘をうけた。この内容は8月13日のKBSの夜9時のニュースに出ていたもの。多くの韓国人が見たはずだ。
8月15日は、日本は終戦記念日であるが、韓国は「光復節」であった。クァンボクチョル。光が帰ってきた日、お目出度い日なのである。今年は第74周年目の光復節にあたる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の慶祝辞(キョンチュクサ)には、かなり強い態度で日本批判が盛り込まれるんじゃないかと思っていたけれど、ふたを開けてみると、現在の日韓葛藤のホットポテトである日本軍慰安婦や強制動員などのテーマには直接言及することはなかった。日本に対しては「今からでも日本が対話と協力の道へ出てくれば私たちは喜んで手を握る」と述べるにとどまった。
一般の人々の反安倍、日本製品ボイコットという動きはますます激しくなってきているような様相だけれど、国の長がこういうかなり水位のさがった態度をしめしたことで、もつれにもつれた日韓の関係は、多少は解決の方向に動き出すのかもしれない。水泳のトシ子さんに対するあの拍手も、それを象徴しているのではないだろうか。
いや、まだまだもつれの時代は続くだろうと思う。けれど、その中に解決の気が萌芽し始めていることも確かだと思う。真冬の寒さのなかに、あるときふと春の和水(なごみ)が感じられるように。両国民の健全な精神を望むのみだ。
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