「集く」と書いてなんて読む?後世に伝えてゆきたい美しい日本語

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よく言葉は「生き物」だといわれます。万葉の昔から続いている言葉がある反面、日常で使われる言葉は時代ごとに変化を続けてきました。意味が変わったものも、次第に使われなくなってきた言葉も少なくはありません。今回の無料メルマガ『1日1粒!『幸せのタネ』』では著者の須田將昭さんが、「すだく」という言葉を解説しながら、日々変化を続ける言葉を受け継いでゆく難しさを記しています。

言葉を受け継いでいくこと

昼間の蝉時雨の勢いも弱まり、夜には草むらにすだく虫の声が聞かれるようになりました。と書くと「すだく」ってなんだろう?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「すだく」は

虫などが多く集まって鳴く(『大辞林』第三版)

という意味の言葉です。今ではほとんど聞かれなくなった言葉かもしれません。

「すだく」という語を使わなくても

虫がたくさん集まって鳴いている

とそのまま表現できるからです。でも、私はなんとなくこの語の響きが好きで、「すだく虫の声という表現に秋を感じます。これは全く個人的な感想、感性の問題なので、「みんな同じように思ってほしい」ということではありません。

ただ、古くから長く使われてきた語には、それ相応に役割があって伝えることができる情感もそれぞれ違う細やかなものがあるように思います。ちなみに「すだく」は漢字で書くと

集く

と書きます。難読漢字ですね。「集」という漢字自体は小学3年生配当の教育漢字です。さほど難しい漢字ではありません。『常用漢字表』では

音読み:シュウ

訓読み:あつ(める)、あつ(まる)、つど(う)

までが載っています。いわゆる「表外読み」とされるものが

集く(すだく)、集る(たかる)

です。「集る(たかる)」の方は、

虫が集っている

黒山の人集り(ひとだかり)

など、今も普通に使われる言い方ですし,「集まったようす」がイメージもしやすいでしょう。一方「集く(すだく)」はなかなかイメージしにくいかもしれません。もともとの漢字の成り立ちを考えてみましょう。「集」の上の部分は「隹(ふるとり)」という漢字の部首を思い浮かべていただくといいでしょう。そう、元は「鳥」です。鳥の形から来ています。それが「木」の上にいる。それも「たくさん」。

たくさんの鳥が木の上にいる

そこから「集まる」ということを表し、また、たくさんの鳥が鳴いている様子も表しました。そう、昔は「集く」は虫以外にも使われていました。『万葉集』にも

葦鴨の すだく 旧江に

という一節があります(歌番号4011)。もとは鳥がたくさん集まって鳴いている様子を「すだく」と言ったのでしょう。それが虫の声にも使われるようになり、今はそれも使われなくなりつつある…。言葉を受け継ぐことの難しさも感じる言葉です。

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