【書評】炎上や「いいね」欲しさに言葉を選ぶのが辛い人に贈る本

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SNSで発信する言葉によって炎上したり、逆に多くの高評価を得たりできるこのご時世、一昔前までは考えつかなかったほど言葉の選び方に敏感になっている人が増えているようです。そんな向きには「教科書」として使える一冊を、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんがレビューしています。

偏屈BOOK案内:齋藤孝『100年後まで残したい 日本人のすごい名言』

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100年後まで残したい 日本人のすごい名言
齋藤孝 著/アスコム

はっきり言って、イージーな企画である。編集チームが「名言」集めをして、それを著者に渡す。そういう分野は楽勝の人だから「100年後まで残したい日本人の名言」というコンセプトで30個選んでサクサク解説、というコース、だと思う。そんな平凡な企画が通るのは、誰でもネットで言葉を発する機会が増えそれが常に評価にさらされている時代への傾向と対策」なのだろうか。

「いいね!」の数、リツイートの数、相手からの好評価の数、みんな欲しいから、とにかく評価を前提に発信するため言葉を選ぶようになる。「こう言ったほうが、いいね!を押してもらえる」「逆に、炎上して注目してもらえる」なんて考える人も多いらしい。わたしなんぞ、無警戒に危ない発言(じゃないな、発信か)をして、痛い目にあったような記憶があるが、おそらく気のせいであろう。

でもたぶん、ネットで高評価を狙って発言するには、あるいは用心深く言葉を選んで発言するには、かなりエネルギーを消耗するだろう。そんなとき名言を利用すれば楽チンである。名言を日常生活の中で使っていく。引用したり、価値基準としながら行動すれば、自然に身について、心を支えるものになる。というわけで、著者は「100年後まで残したい日本人の名言」を30個提示する。

日本人ならこの30個は暗唱できるようになってほしい、後世に語り継いでほしいという言葉たちである。「名言は心の砦になります。雪崩のように心が崩壊するのを食い止め、漏電のように常にエネルギーが消耗されていくのを防ぎます」っていうくらい凄いパワーらしい。暗唱せよ後世に語り継げ、という。

本文中の重要なところはゴシック、というこのごろ実用書定番の安易な手法は正直うっとうしい。本文組版として美しくないし、ゴシック拾い読みでも大まかな内容が分かってしまうのは、読書といえるのだろうか。言葉のプロ中のプロが、叙述に軽重をつけるため書体を区別するなんて、情けないではないか。

心が折れそうなとき、背中を押してほしいとき、成長したいと願ったとき、人付き合いに悩んだとき、道に迷ったとき、と5分類しほぼ等分に名言を配する。各名言に「名言年齢」を記す。古い言葉、新しい言葉、それぞれの良さを味わってほしいからだという。その言葉の普遍性や実用性の証として、どれくらいの年月、歴史を超えて受け継がれてきたのか一目でわかる。好配慮だと思う。

いいと思った言葉に出会ったら、「声に出して読む」。その次は「暗唱する」。そこまではその通りだが、その場の文脈に合わせて取りだし、雑談の中でどんどん使えば「教養のある人になれる」という。そうかなあ。このご時世、かなりリスキーな行動だろう。残念ながら。そんなストレートなやり方は嫌われる

先生の選んだ30の名言。わたしも共感したのをいくつか。赤塚不二夫『天才バカボン』のパパの決めゼリフ「これでいいのだ」。金子みすゞ「みんなちがって、みんないい」。藤子・F・不二雄「いじわるされるたびにしんせつにしてやったらどうだろう」。これだけかい。ほかはけっこう辛気くさい(使う気にならない)名言揃いだが、さすがに齋藤先生の解説はウマすぎるわ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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