かんぽ生命が教えてくれた未来を破壊する「マネジメントの欠落」

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ノルマ達成を優先するがために不正が横行し、結果的にこれまでの信頼を失うことになってしまったかんぽ生命。なぜこのようなことが起きてしまったのでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』で、著者の浅井良一さんが詳細に分析しています。

ノルマでは勝てない

いきなりですが「かんぽ生命」に、今何が起こっているのか。これこそが“権力の正統性”が破綻して「価値や制度が存在しないために、社会への参画が不可能になり、無関心となり、しらけ、絶望に至り不正が蔓延っている」、まさに、そのなかにある現象であると言えそうです。本来あってしかるべき簡保保険のエートス(行為様式)は腐りました。

その意味で「トップマネジメントの選任の失敗”」は致命的だったようで、また稲盛和夫さんに活躍してもらわなければと思ってしまうのです。

平成24年に「かんぽ生命」の代表取締役に就任し、平成29年に退任した石井雅実氏はノルマによって職員を不正に追い込んだとされた損保ジャパン日本興亜の出身者」であり、そのこととの関連がゼロとは言えないようです。

※ノルマ問題は、損保ジャパン日本興亜だけでなく業界の体質でもあります。

今回のケースで浮かび上がってくるのは、「マネジメントの欠落」が、どんな結果を生み出すかを如実に示すもので、と言っても、これは中小企業でよく行なわれていることで、大企業においても特にめずらしくなく“やり手”と称される経営者の常套手段でもあります。戦略なき頑張りで一時的に結果は出るものの未来は破壊されます

ここで注目するのは「ノルマ」という「管理手法」のことで、これを金科玉条のように普遍のものだと考えていることの逆効果です。「ノルマ」はマネジメントの不在により起こる手法で、ある意味“組織の無知”を表しており、企業の基本機能である“マーケティング”も“イノベーション”も行われず人材が持つ“アイディア”や“意欲”を失います。

「ノルマ」は、手足に強制という鎖をつけてプールに落とし、目標地点まで泳ぎ切らなければ「あなたは生きて行けないぞ」と脅す手法なので、たしかに人に対して恐怖心と危機感を生じさせ即効性はあるとは言え、過去にあったソ連(ロシア)のように、創造性や生産性を向上させることはできず“成果健全な成長は生まれることなく破産します。

これから考察するのですが、やや息が詰まりそうでもあるのです。その理由は、少なからずいた“真摯で有能な現場の人材”の“知恵”および“意欲”を阻害して、組織の健全な成長機会が頓挫されるからです。必要だったのは、人を腐らせる「陳腐化したプロの戦術手法」ではなく、“危機感希望のなかで活性化させる現場マネジメント」です。

なぜ石井氏はしなかったのか、「組織の革新が基本手法である現場の誠実な中堅・若手人材の“知恵”と“意欲”をもたらすマネジメント」を。それはできなかったので、革新経験がなく陳腐化した「戦術手法」が唯一の方法だと信じていたからで、問題は人選ににあり、ため石井氏が懸命であればあるほど力強ければ強いほど逆噴射を起こしました

これはJR西日本のあの痛ましい「福知山線脱線事故」とも重なります。根は一つで、官僚組織の優秀と称されるトップによって起こされる帰結です。この現象は何も公的企業が民営化した時に起こるものでなく、安定している大企業でも、また中小企業でも強い商品やサービス持ち努力せずいられる時に普段のこととして“弛緩によって起こり得るものです。

「求められている成果が何か」を考え至らず、そのため「使命の共有化」など論外となり、二次的であるはずの業績のみが追求され、それでもって弱みと劣悪さが増幅されて、やがてはいろんなところで破綻を引き起こします。

「管理」では、さらに「ノルマ」では、最高の商品とサービスを提供するための“智恵”や“意欲”が生れることはなく“強み”はつくられません。

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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