野党の激しい追求を受けて2020年の会の開催中止が発表された総理大臣主催の「桜を見る会」ですが、政府の思惑どおりの幕引きとはなりそうもありません。そんな中、麻生政権時代に一度出席した「桜を見る会」の経験を語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、「桜を見る会」が「花より首相や有名人」でしかない実態を目の当たりにし、当時抱いた違和感を記しています。なお、4月中旬の新宿御苑散策は、新緑への移ろいを鑑賞するのが良いようです。
私が見た「桜を見る会」
首相主催の「桜を見る会」に野党の矛先が向けられています。
「国の予算を使って首相が毎年4月に開く『桜を見る会』の是非が、国会審議の焦点に浮上した。野党は安倍政権下で右肩上がりとなっている支出や、運用のあり方を問題視。12日に調査チームを発足させ、後半国会で追及を強める。識者にも会の透明性などを疑問視する声があり、政府の説明責任が問われる」(11月12日付朝日新聞)
野党の追及はともかく、「桜を見る会」がどんな様子なのか、私の乏しい体験をお話ししておきましょう。私のところには、第2次安倍政権の1年目まで「桜を見る会」の招待状が内閣官房から送られてきていました。
場所は新宿御苑、招待状によれば70種類もの桜の花が鑑賞できるというのですから、魅力的ではあります。しかし、開催時期がよくないことが少なくありません。4月中旬にかかるようだと、肝心の桜の花が八重桜などを除いて散ってしまっているのです。
それに、土曜日の午前中ということになると、私のような仕事の人間は予定が入っていることもあり、そう簡単に出席できるわけではありません。
そんなこともあり、たった1回だけ麻生太郎首相の時に出席しただけで、あとは欠席の返事を出し続けていました。私のような「功績」のない者が招待されるのは、歴代の首相や内閣官房と仕事してきたからでしょう。
ぱったり招待状が来なくなったのは、内閣官房の側が「招待状を出しても、かえって迷惑かもしれない」と「忖度」した結果だと思います。
そこで「桜を見る会」ですが、野党が取り上げているとおり、ときの首相や側近政治家の後援会が大挙して押しかけています。そして、首相や芸能人、スポーツ選手などとの集合写真に収まるために、その場所に殺到し、押し合いへし合いの状態が生まれます。とても桜を観賞する雰囲気ではありません。
私の時は、「はるか群衆を離れて」(トーマス・ハーディの小説のタイトルです)の心境で、ひとり新宿御苑内を散策してみましたが、こうすると新緑に移ろいつつある新宿御苑を味わえることがわかりました。
このときは、海上自衛隊の横須賀地方総監・河野克俊海将(のちの統合幕僚長)ご夫妻と会っただけで、ほかには知り合いと出会うことはありませんでした。群衆から「離脱」してよかったと思ったものです。
そんな「桜を見る会」です。安倍首相も、会の趣をもう少し違ったものにできないものかと、考えているに違いありません。(小川和久)
image by: 首相官邸ホームページ [CC BY 4.0], ウィキメディア・コモンズ経由で