信じがたい野次も。新型肺炎から高齢者を守るつもりのない自民党

kawai20200304
 

新型肺炎の専門家会議では議論されなかったと言われる「全国一斉休校」を決めた一方、罹患すれば重症化しやすい高齢者を守る対策を打ち出さない政府に対する批判の声が、各所から上がっています。安倍首相は何を拠り所に新型肺炎の感染拡大防止策を決定しているのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんは今回、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、「絶対感」をキーワードにその分析を試みています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2020年3月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

思考が短絡化した末の「感染拡大防止策」

すったもんだ続きの政府による「新型コロナウィルス拡大防止策」ですが耳を疑うような“野次”が自民党議員からありました。

3月2日に開かれた参議院予算委員会で立憲民主党の蓮舫議員が、「専門家会議の見解には学校の一斉休校の記述はない一方で、高齢者の感染リスクを重視している」と指摘。「高齢者施設などに対して、イベント自粛や学校の一斉休校と同等の対応をしないのはなぜなのか」と質問しました。

これに加藤勝信厚生労働大臣が回答している間に、「高齢者は歩かないから」と、自民党の松川るい議員(大阪府選出)が野次を飛ばしたのです。

松川議員はその後、「舌足らずの表現で誤解を与える表現だったなと思って、それは反省しています。気を悪くされた方がいたら、すみません」と謝罪したということですが、…情けない、実に情けない。

「高齢者は歩かない」などと野次る輩が政治家であることも、そういう人を政治家にしまっているということも、情けないとしか言いようがありません。

WHOの調査報告で明かされているとおり、重症や死亡のリスクが高いのは60歳を超えた人や持病のある人で、逆に子どもの感染例は少なく、症状も軽い。19歳未満の感染者は全体の2.4%です。一方、致死率は高齢になるほど高く、80歳を超えた感染者の致死率は21.9%と5人に1人に上っています(※ WHOが派遣した各国の専門家や中国の保健当局の専門家らによるチームが、中国で感染が確認された5万5,924人のデータについて分析した結果)。

また、北海道の感染状況を調査した専門家は、「症状がでない、あるいは症状が軽い」若い世代から感染が拡大する可能性があると指摘しています。こういったエビデンスに基づけば、高齢者施設などで感染拡大を防ぐことのプライオリティは極めて高いわけです。

ところが高齢者を守る防止策はほぼ皆無です。

介護職員らでつくる労働組合が全国の介護事業所4,043カ所への緊急調査を行ったところ、マスクがすでにないと回答した事業所が約2割に上り、訪問介護に限ると、マスクがすでにない事業所は27.8%を占め、在庫が2週間分以内の事業者は3分の2に達していることがわかりました。

政府がマスクを買い取って北海道に送るのもいいですけど、密閉された空間で高齢者と長時間関わる人たちにこそ、優先的にマスクを配布することも重要です。…っていうか、そんなこと小学生だって理解できる。

言い方は悪いですが、そんな「低レベルの思考力」さえ持ち合わせていない政府と、いち政治家の野次とはいえ「高齢者は歩かないから」などと笑い飛ばす自民党議員。いったいどこまで人を馬鹿にしているのか。専門家を軽視し、頓珍漢な“政治的決断”をする我が国のお偉い方たち…ホントに情けない。

権力で生じる「絶対感」に酔いしれた人が、稚拙で倫理にもとる行動をとり、リスクの高いおバカな決断をすることは、世界中の研究者たちが証明してきましたが、悲しいかな、新型コロナ拡大防止策はまさにこれ。“絶対感に酔いしれる権力者”によって、救うべき人たちが救われないという意味不明が行われているのです。

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