香港の今日は、台湾の明日。この時期に強権発動する習近平の魂胆

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5月28日の全人代で「香港国家安全法」が可決されました。新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、米中の対立が激化するさなかに、西側諸国からの非難が確実な法案を成立させた習近平の狙いはどこにあるのでしょうか。メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の著者、元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんは、中国が西側諸国と決別する意思を示した可能性に言及。コロナ後の国際安全保障体制の混乱を懸念しています。

米中間の覇権争いが生む国際安全保障体制への混乱

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、米中間の衝突が激化しています。トランプ米大統領は「コロナウイルスの感染について中国が情報を隠蔽したから、このように世界に拡大した」と中国の対応を激しく非難し、先週には米中断交の可能性にまで言及しました。

中国はといえば、習近平国家主席の発言ではないですが、「コロナウイルスはCIA・米軍によって撒かれた」という噂に始まり、アメリカ政府高官からの中国批判に対しては、「アメリカがコロナを利用して中国叩きをしている」や「アメリカの大統領選イヤーに、中国をスケープゴートにして政治利用している」とアメリカを批判しています。

新型コロナウイルス感染については、米中ともに“被害者”と言えると思いますが、米中ともに初期対応の遅れと認識の甘さが否めないと、国内外で批判に晒されています。ゆえに、国内での立場が“危うい”との見方もあり、今、互いに非難することで何とか体裁を保とうとしているのだとも考えられます。

その米中対決が、5月28日に全人代で可決された『香港国家安全法』によって過熱し、場合によっては危険水域に近づくリスクに晒されることになりました。日本では報道こそされても、あまり危機感を持ってこの状況を案じている様子はありませんが、追い詰められている2大国のリーダーに委ねられる新世界秩序は、もしかしたら直接的な武力行使に発展しかねない事態ではないかと考えます。

今号では、米中という新冷戦の当事国の対立が仕掛ける【安全保障のNew Normal】についてお話しいたします。

中国とWHOは除外。米国主導の『CORD-19』データベース

まずはアメリカ側から見てみたいと思います。新型コロナウイルス感染拡大の影響はまだまだアメリカ国内で猛威を振るっていますが、アメリカ政府と企業はすでにAfter Coronaにおける国際経済の主導権の確保と、中国(とロシア)の追い落としに動いています。その顕著な一例が「世界中で発表されたコロナ関連の論文や研究成果を『CORD-19』と呼ばれる米研究機関であるアレン人工知能研究所などが設けたCOVID-19に関するデータベースに集約する」という動きです。

すでにG7を中心に18か国にパートナーシップが広げられ、日本も官民揃って積極的に参加しています。ここではCOVID-19のワクチンや治療薬の研究・知見などの情報はもちろん、COVID-19の正体についての情報も共有されています。AIによってそれらの情報が整理されることで、メンバー間での検索や分析を容易にするのみならず、各国の研究をテーマごとに分類して公表し、国際共同研究のベースになるようです。

検査・治療法、ワクチン開発、そして臨床実験についての取り組みが次々と紹介され、データベースに集約され、メンバー間で改善策を議論することで一気にコロナ関連の研究開発の主導権を握るという取り組みです。

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