先の大戦前夜に酷似。米中が加速させる分断と「一触即発」の危機

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先日掲載の「在日米軍司令官『日本を助ける』尖閣支援を明言。中国をけん制」等の記事でもお伝えしているとおり、習近平政権による露骨な海洋進出に対して一歩も引かぬ姿勢を鮮明にするアメリカ。両大国による世界の分断は加速する一方ですが、その先には何が待ち受けているのでしょうか。元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で、「世界は一触即発の危機に近づいてきている」として、そう判断せざるを得ない理由を記しています。

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米中冷戦が加速させる世界の分断

新型コロナウイルス感染拡大が世界に広がるにつれ、世界の分断が明確かつ不可逆的な様相を帯びてきました。

【中国の覇権国としての台頭】、【トランプ政権の誕生による『自国ファースト』の明確化と世界への波及】、【Brexitと欧州の統合の弱まり】、【トルコ・エルドアン大統領による米ロを両天秤にかけた“帝国復活”のためのギャンブル】、【シリア“内戦”を巡る欧米諸国と中東諸国の思惑】、【米・イラン関係の緊張の高まり】、そして【米中貿易“戦争”の激化】など、COVID-19の世界的パンデミックによる影響以前にも、国際秩序の分断とブロック化の兆しはありました。

しかし、COVID-19が猛威を振るい、世界中でモノと人の移動が制限され、それは物理的な分断のみならず、心理的な分断を加速させました。そして地政学的な思考が国際社会に再興し、今、米中を軸としたブロック化を顕在化しています。

そのきっかけは、新型コロナウイルス感染拡大の影響への対応に追われる諸国を尻目に、いち早くコロナ禍から抜け出した中国が仕掛けた欧米による支配への挑戦でしょう。2019年初めから加速させたOne China, One Asia政策はコロナの背後で本格実施され、中国はアジア全域で同時進行的に強硬姿勢の徹底に打って出ます。

その典型例は、【香港国家安全維持法の制定】【南シナ海での領有権主張の名言と南沙諸島海域の軍事化】【尖閣諸島海域への連日の侵入と空母・遼寧を筆頭とした攻撃群投入による日米同盟への威嚇】【欧州諸国の統合への横槍(マスク外交などでの中東欧諸国への支援と南欧諸国への接近)】といった具合にいくつでも並べることが出来ます。

中国がこのような動きに出た当初は、各国ともコロナとの闘いに追われて中国に行動の自由を与えてしまった感がありますが、香港国家安全維持法の制定を巡る騒動を機に徐々に対中包囲網が築かれ、今では程度の強弱はあるのでunified actions against China blockとはなっていませんが、対立が各方面で鮮明化してきています。

特に米中間のやりとりを見ると、もうお互いに振り上げた拳を下げることが出来る状態にはなく、対立と言動のエスカレーションが加速し、それにそれぞれのブロックに付く諸国が振り回されている状況です。日英欧豪NZそして東南アジア諸国は完全にその影響下にあると言えるでしょう。

オセアニアの両国(豪州とニュージーランド)は、香港国家安全維持法の制定を機に、アメリカの対中強硬策に乗っかり、中国批判を強め、自国経済の中国への過度の依存からの脱却を図ろうとしています。「一国二制度」の維持を条件に香港政府に与えていた諸々の特恵待遇を停止し、「香港の中国化」を前に次々と犯罪人引き渡し条約の一方的な停止を宣言しています。特に豪州については、アメリカ政府と歩調を合わせ、南シナ海における中国の領有権主張に対しても「完全な国際法違反」と糾弾し、中国との対決姿勢を強めていますが、中国からの報復措置に直面し、国内世論を分けるような議論の真っ最中です。

中国としては、報道ベースでみれば「批判に対して真っ向から反論」というように一見、受動的に対応しているように見えますが、実際には【意に関せず】という姿勢を見せたいのか、逆に強硬姿勢および報復措置をエスカレートさせています。例えば、報道されていませんが、7月30日、香港国家安全維持法ベースで初の外国籍の逮捕者が出ましたが、まだ情報が錯綜してはいますが、どうも英国人とオーストラリア人だったようで、両国に対する揺さぶりをかけている模様です。

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